風邪引いちゃったついでにサボっちゃった。
てへへ。
本当の締め切りは9月いっぱい。
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ざわ、とやつの剛毛が逆立った。
夜の中に、何かが広がる。獣臭のような何かが押し寄せる。
「!」
俺は槍を構える。やつの目が再び輝く。
身を撓め、やつは地を蹴った。まっすぐに飛び込んでくる。俺は退かず、槍を突き放った。
だが、空を切った。
手ごたえ無く、夜気が渦巻いて槍にまといつく。やつの影は、横合いへ飛びのいていた。夜に立つ木々の中に飛びのき、その一つをやつは蹴った。再び、飛ぶように夜を駆ける。だから俺もきびすを返し地を蹴った。
わかっていた。やつの狙いは、俺を追って山に踏み込んできたさむらいどもだ。やつの姿は夜の木々の間を見え隠れしながら、跳ね駆ける。ひととびで二カイ丈や三カイ丈を飛びぬける。俺もやつを追って駆けた。取り逃がすおそれなど一つも考えていなかった。俺の脚でも、やつに追いつく。俺の脚でも風に乗ったように駆けることができる。木々の影が、音を立てて行過ぎてゆく。
やつの背が見える。後ろ髪から背にかけて、たてがみのような剛毛がひらめく。やつは脚で地を蹴り、手で地を突き、さらに進む。
その先に、人のざわめきが見えた。さむらいたちだ。俺を追って山に入ったのだ。やつは駆ける。けものともひとともつかぬ姿が勢いを増す。間に合わない。俺が追いつくより先に、やつがさむらいどもに踊りこむ。
「!」
俺は槍を投げた。放つとともに、地に転がるほどの力を込めて。
夜気を巻いて。槍は飛んだ。駆けるやつを追い、迫り、刺さる。土くれが飛ぶ。やつは大きく跳ねた。地に突き立ち震える槍を置き去りにして、夜の中を大きく跳ぶ。
月より振る金色のひかりのなかで、やつは振りかぶり、その爪をきらめかせる。
さむらいどものざわめきが見えた。
「にげろ!」
俺には、叫び、駆けた。
てへへ。
本当の締め切りは9月いっぱい。
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ざわ、とやつの剛毛が逆立った。
夜の中に、何かが広がる。獣臭のような何かが押し寄せる。
「!」
俺は槍を構える。やつの目が再び輝く。
身を撓め、やつは地を蹴った。まっすぐに飛び込んでくる。俺は退かず、槍を突き放った。
だが、空を切った。
手ごたえ無く、夜気が渦巻いて槍にまといつく。やつの影は、横合いへ飛びのいていた。夜に立つ木々の中に飛びのき、その一つをやつは蹴った。再び、飛ぶように夜を駆ける。だから俺もきびすを返し地を蹴った。
わかっていた。やつの狙いは、俺を追って山に踏み込んできたさむらいどもだ。やつの姿は夜の木々の間を見え隠れしながら、跳ね駆ける。ひととびで二カイ丈や三カイ丈を飛びぬける。俺もやつを追って駆けた。取り逃がすおそれなど一つも考えていなかった。俺の脚でも、やつに追いつく。俺の脚でも風に乗ったように駆けることができる。木々の影が、音を立てて行過ぎてゆく。
やつの背が見える。後ろ髪から背にかけて、たてがみのような剛毛がひらめく。やつは脚で地を蹴り、手で地を突き、さらに進む。
その先に、人のざわめきが見えた。さむらいたちだ。俺を追って山に入ったのだ。やつは駆ける。けものともひとともつかぬ姿が勢いを増す。間に合わない。俺が追いつくより先に、やつがさむらいどもに踊りこむ。
「!」
俺は槍を投げた。放つとともに、地に転がるほどの力を込めて。
夜気を巻いて。槍は飛んだ。駆けるやつを追い、迫り、刺さる。土くれが飛ぶ。やつは大きく跳ねた。地に突き立ち震える槍を置き去りにして、夜の中を大きく跳ぶ。
月より振る金色のひかりのなかで、やつは振りかぶり、その爪をきらめかせる。
さむらいどものざわめきが見えた。
「にげろ!」
俺には、叫び、駆けた。