浮遊脳内

思い付きを書いて見ます

チーム0・F・INF 助走11

2015-11-17 18:08:53 | ガンプラバトル系SS チーム0・F・IN

 だが、モニターは死んでない。
 俺のキュリオスは、まだ生きてる。ぐるんぐるん廻っている。ホロモニターの機体状況パネルが瞬いている。右足が、膝から無くなっている。
「この!」
 ライトボールをしゃにむに圧して、何とか安定を取る。機体が安定しない。すぐ目の前を、白のシナンジュカスタムが飛び去ってゆく。牙のように開いた左腕のアームドアームが、俺のキュリオスの右足を握りしめ、文字通り粉々に砕く。
 そんなもん、見送っている暇なんか無かった。はじめてアリオスに乗った時のように、機体が安定しない。キュリオスの膝の羽根は、GN粒子を制御する機能がある。それが失われれば、高機動時の安定性が落ちる。そんな設定まで、反映してなくてもいいじゃねえか。その俺へと、シナンジュカスタムはゆっくりと振り向く。
 俺は、ビームビームガンをぶっ放す。連射は、奴の右や左や斜め上を飛び去るばかりだ。
「この!」
 俺はミサイルを発射した。ビームガンが駄目なら、自分で当りに行くミサイルだ。尾を引いて伸び行き、シナンジュカスタムへと絞り込まれてゆく。しかし、ミサイルが奴へと届く前に、奴の機体が輝く。赤く。
「うそだろ・・・・・・」
 でも、俺は気付いていた。シナンジュの登場するガンダムUCに登場する、サイコフレームによる機体強化システム。NT-Dだ。
 機体をサイコフレームの赤い光につつみ、シナンジュカスタムは、あの牙を開いたような左腕を振るった。次々と爆発が起きる。ミサイルは、奴の機体に触れることもなく、破砕され、自ら吹き飛んでゆく。爆炎を振り払い、シナンジュは、右腕を、ブレード型のビームランチャーを向けてくる。
 光が走る。咄嗟に、俺はライトボールに力を込める。応えてキュリオスは大きく身を揺るがせる。間近を、光が薙ぎ払う。奴のビームだ。避けられたのはまぐれだ。
 避けたからって、奴のビームは止まらない。鞭のように振るわれる。
「くそ!」
 俺は避けるので手一杯だ。機体は思ったように動かない。勝手にふらついたり廻ったりする。その間近を、ビームが薙ぎ払う。避けられたことに、俺の方が驚いていた。というか、奴の方も驚いているらしい。
 いや、今がチャンスだ。
 俺はライトボールの使っていなかったアイコンをタップする。ホロスクリーンにSpecial functionの文字が浮かび上がる。特殊機能だ。奴の、NT-Dと同じ。
「TRANS-AM!」
 意味は無くても、そう叫ぶ。だって、トランザムの決まりだ。
 キュリオスは加速した。備蓄しているプラフスキー粒子を一気に開放して、パワーを高めるシステム。もちろん、ゴリゴリと粒子が減ってゆく。ホロスクリーンの色も、みるみる黄ばんでゆく。やがて橙色へと変わるだろう。さらに赤になり、赤黒くなり、粒子を使い尽くせば、ホロスクリーンは暗転して、機体も機能を止める。それまでに、奴を倒せばいい。奴のNT-Dだって似たようなものだ。俺は両手のビームガンを捨てた。役に立たないビームガンは、捨てるのがガンダムの流儀だ。代わりにビームサーベルを抜く。二刀流で、突っ込む。どうせ、思うように機体制御なんかできない。突っ込むしかないんだ。
 奴の姿が大きく迫る。牙の腕を、奴も振るう。俺もビームサーベルを叩きつける。すれ違いざまに、粒子が散った。キュリオスには、損傷はない。すれ違い、すり抜けて、旋回する。もう一撃、ぶち込むために。
 奴は、身を翻す。俺の相手など、している暇はないというように、逃れるように加速する。
「行かせるか!」
 俺の役目は、奴を抑え込むことだ。有田君と玉ちゃんの背を突かせるわけには行かない。逃げる奴を、追いつめる手が無い。ビームガンを捨てたら、キュリオスにはもう火器が残っていない。あるのは両腕のシールドとビームサーベルだけだ。シールドには、ニードルがあるが、サーベルよりも短い。奴の飛ぶ先、有田君と玉ちゃんとが、相手チームと戦っている。
 奴は、シナンジュカスタムはひたすらに駆ける。そここそが戦いの場である、というように、俺など、ただの邪魔者に過ぎない、というように。シナンジュが、右手のビームランチャーを構える。
「有田君!」
 俺はホロモニタの通信ウィンドウへ叫んだ。
『大丈夫です』
 彼は応じ、彼方のケルディムは俺たちを見上げる。何が大丈夫なものか、シナンジュはビームランチャーを構える。足を振り出し、宙を踏みしめるようにして、狙いを着ける。けれど、有田君は動かず、代わりにコールした。
『TRANS-AM』
 ケルディムが赤くGN粒子の渦の中に包まれる。同時に、その渦に舞い上げられるように、ケルディムガンダムの肩にあった、シールドビットが飛び立つ。その姿へ、シナンジュの奴は、ビームを放つ。
 強力なビームが、虚空を貫いて、まっすぐにまっすぐに伸びてゆく。動かず赤く輝く、有田君のケルディムへと向かって。
 だが、届かなかった。ケルディムの、ほんのわずか前で、ビームは阻まれ、水しぶきが飛び散るように、粒子を飛び散らせる。
 シールドビットだ。トランザムによって、強化されたシールドビットが、シナンジュのビームを阻んでいた。
「うぉりゃあああああ!」
 俺は叫んだ。今なら、届く。俺は加速し、ビームサーベルを振りかぶる。狙撃体制のシナンジュに打ち付ける。奴は、それでも左腕の、牙のように開いたアームドアーマーを振り向けてくる。サイコフレーム共振か何かで、何もかも粉砕する無茶設定のアームだ。
 激しく粒子が散った。信じられない。ビームサーベルの粒子すら飛び散らせて、奴の機体に届かない。俺は、奴の前をすり抜ける。飛び行き過ぎながら、俺は機体を翻す。これ以上撃たせるものか。
 奴も、俺へと振り向く。牙を開いたようなあのアームドアーマーを、再び俺へと向ける。あれを潰さなければ、手が出せない。トランザムで、俺のキュリオスの粒子は減り続けている。ホロモニターの色は、黄色を過ぎて、橙色に変わりつつある。あまり長いこともたない。しかも片足だ。機体の制御も悪い。
 俺は宙を蹴るようにして、奴へと迫る。奴のアームドアーマーの牙の真正面へだ。突きを放つ。粒子が散った。ビームの刀身すら、砕かれて撒き散らされてゆく。でも、俺にはまだシールドがある。キュリオスのシールドの閉じた切っ先を、押し込む。
 トランザムのGN粒子に守られたシールドのエッジならば、奴のアームドアーマーを押し切れるかもしれない。
 だが、共振フィールドは、容赦なくシールドを苛む。そして、荒目のヤスリでも掛けられたように斬り削られてゆく。シールドだけでなく、ビームサーベルの刀身も、それを持つキュリオスのハンドパーツも。
 まだだ!まだ終わりじゃない!俺はライトボールをタップした。半ばまで削られたシールドが開く。シールドに仕込まれたGNニードルだ。それが飛び出す。まっすぐにアームドアーマーの真ん中に突き刺さる。
 爆発が起きた。俺のシールドが吹き飛ぶ。奴のアームドアーマーの爪が引きちぎられて飛んでゆく。俺たちも、爆発に引きはがされて離れる。キュリオスの右腕はまだ残っている。でもマニュピレーターはもう動かない。ホロモニターの色はほとんど赤だ。粒子の残りも少ない。俺はビームサーベルを振りかぶる。奴へと叩きつける。
 奴は、もう一方の腕、右腕で身をかばう。その腕に装着された、アームドアーマーに、俺のサーベルが食い込む。俺はさらに斬り下げる。ふたたびの爆発が起きる。奴の右腕の先が飛ぶ。ようやく互角、いやまだ奴には両足が残っている。奴は退く。退き、けれど両脚のバーニアを吹かして、踏みとどまる。奴の右腕の先は無い。左腕は残っている。それが、ビームサーベルを引き抜く。
 奴は俺を目指して、突っ込んでくる。俺も、ビームサーベルを振りかぶる。豚角ブレードが打ち合って、粒子が激しく散った。


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