浮遊脳内

思い付きを書いて見ます

今日の創作お題ったーより その4

2010-06-20 03:07:09 | Weblog
http://shindanmaker.com/24956
こちら様から

mach_09の今日の創作お題は『女性』『金髪』『金茶色の瞳』『ファンタジー世界の使用人』です。

 窓の外を見れば、空は藍色から薄紫へと染め替えられつつあった。
 外は朝の光にやわらかく照らされ、まだ灯明に頼る部屋をかえって暗く見せている。けれどその中でも金色の髪は輝いて見えた。かたち良い頭を、金糸のように包み、額にかかりあるいは首筋あたりで断ち切られている。うつむいた面はうかがぬが、象牙のように滑らかな肌がうかがえた。
 おんなの姿だった。椅子に座り、肘掛にそれぞれの腕を乗せて、背筋をまっすぐに伸ばして、けれどこうべだけはうつむいている。その身を包むのは葡萄色の衣だ。
 その姿を、しげしげと見つめ、男は大きく息をついた。
 男は、椅子の女の向かいに立っていた。小さな男だった。革の帽子をかむる頭は、椅子の女の肩ほどもない。白髪交じりの癖のある髪は背中へととどくほどあり、頬からあごま覆う髭も同じく強い癖にねじれながら胸元まで続いている。男は細工師のつけるような皮の前掛けをつけ、腕にも同じように覆いをつけている。
 その手に包んでいるのは、一つ小箱だった。男はその表を指で撫でる。そこには精緻な細工が刻まれていた。闇の中に沈むそれらは、魔道の文字列だ
 男は、いとおしげ絵に静かに

ここまで書いて別要件離脱

今日の創作お題ったーより その3

2010-06-18 20:54:01 | Weblog
http://shindanmaker.com/24956
こちら様から

mach_09の今日の創作お題は『男性』『緑色の髪』『黒色の瞳』『ファンタジー世界の学生』です。

「先生!」
 彼は部屋へと駆け込みけれど、向けられた鋭い目に口ごもり、足を止めた。
 満ちる魔力が光を放ち、部屋に斑に影を投げかけている。そこは学生風情には立ち入りの許されぬはずのところだった。教授たちは誰一人口を開くことなく、その魔道の源を見上げている。彼も口を閉ざしそれを見上げた。
 弧を描く石壁に囲われた高い天井の下、それは輝く珠のようだった。光と影を斑に放ち、天井と壁と床に光と影の紋様をうごめかせている。彼はただただその珠を見つめ続けていた。目を離すこともできなくなっていた。この場に体を取り残して、魂が吸いつけられているようだ。見えているのも光と影の紋様だけではない。何かが流れてゆく。
 天空を日が巡り、夜と昼とが入れ替わる空を絶え間なく雲が流れ、月が飛ぶように行き過ぎる。大地が緑に変わり生気にざわめきやがて枯れ葉色に落ち着いて白く雪に閉ざされる。命が生まれ命が消えて、それは無数のつぶやきのようにざわめきのように、あるいは泡の群れのように彼に向かって押し寄せてくる。それは叫ぶのだ、思い思いの声を、無念の言葉を、助けを求めて、今際のきわの吐息を、恐れとともに、体を刺し貫かれ、焼かれ、つぶされ、犯されながら。
「!」
 声を上げたのが自分自身だったのかさえ、彼にはわからなくなっていた。
『・・・!』
 誰かが呼ぶ。誰が誰を呼んでいるのかさえもうわからない。
『しっかりしなさい!』
 心の中に声が響く。押し寄せる声の群れにも、強く。
 それは、声の群れを吹き払い、声の響きを遠ざける。
 そうしてもなお、残るものに彼は気づいた。
 彼自身だった。
 身を抱え、石畳にひざをついて、震えている自分自身だった。寒くてたまらない。震える肩に暖かい手が置かれている。彼はのろのろと顔を上げた。
「・・・先生?」
 彼の恩師はいつもの温和な顔を、けれど厳しく引き締めて彼を見つめていた。
「大丈夫だな?」
 彼はかろうじてうなずいた。恩師は言う。
「君にはまだ早かったかもしれない。だが、君にも力を振るってもらわねばならない」
「・・・はい」
 恩師は顔を上げ、あたりを見回した。
「諸君、予言は示された。奴は復活する」
 ざわめきすら起きなかった。誰もがあれを見ていたのだ。恩師は続ける。
「我らも動かざるを得ぬ。学院の掟の封を解かねばならぬ」
 恩師の声を聞きながら、彼は足に力を込める。ここでうずくまっているわけには行かない。彼は、選ばれてここに来たのだ。彼よりずっと学びを重ねた魔道士たちに求められて来たのだ。
 緑の髪は、森族の血を受け継ぐものの印。それは彼の髪の色だ。
 森族の血を受け継ぎながら、人の中に生まれ、育ったものにしかできない役割を果たすために。

今日の創作お題ったーより その2

2010-06-18 19:39:10 | Weblog
http://shindanmaker.com/24956
こちら様から 実は昨日のお題。昨日は別のことをしていて書けなかった。


mach_09の今日の創作お題は『男性』『薄茶色の髪』『金茶色の瞳』『現実世界のフリーター』です。

「お疲れ様でしたー」
「おうー、おつかれー」
 答える声に手を上げて応じ、彼は裏口を出た。振り向きながら上げた手で薄茶色の髪を撫でる。
 道路は湿ってすえたにおいがした。彼はスポーツシューズで地を踏み歩き始める。長め髪のかかる安っぽいジャケット、それに安物のジーンズ。ポケットに手を突っ込み、歩きながら彼はため息をついた。メガネを軽く押し上げる。
 やせているというわけではないが、太る生活でもないらしい。背が高いというわけでもなく、低いというわけでもない。どこにでもいる若者で、若者らしく見果てぬ夢を追いかけて止まないふうに見える。夜半を過ぎ、夜明けを窺うころになって、やがて夢は覚めてゆく。わかっていても夢は止まらない。
 夜の街は夢とうつつのはざまにある。星が無ければ明かりを灯し、瞬きを並べて飾りとする。憂さは酒にして流し、ときには反吐とともに吐き捨てて、雲を踏むようにうつつへと帰る。夜が深まるほどに闇は深くなり、夜明けの前に最も暗くなる。そこになにが起きたのか、確かに覚えているものは少ない。
 裏道で彼は足を止めた。眼鏡の奥の瞳を滑らせ、裏道のさらに横道へと目をやる。その目を細め、彼は中指で眼鏡の真ん中を押し上げると、その手を静かに握り締める。唇を引き結び、彼は横道へと踏み込んだ。
 表通りから離れ、看板の明かりも落とされ、そこは闇に沈んでいた。昔ながらもポリのごみバケツにビニール詰めの生ごみが山と詰め込まれている。彼は鼻を軽くこすった。鋭く前を見つめる。その瞳は、常の人とは変わって見えた。夜の中でも虹彩の中に金色の光を帯びている。
「お前、食べているな?」
 彼は言った。
 闇の奥でうごめくものがあった。それは生ごみの異臭とは違うものを放ち、腐れ汁とは違うものを湿った道へと流している。
 それはゆっくりと振り返る。
 彼もまた身構えた。

今日の創作お題ったーより その1

2010-06-16 20:10:07 | Weblog
http://shindanmaker.com/24956
こちら様から

mach_09の今日の創作お題は『女性』『ピンク色の髪』『栗色の瞳』『現実世界の探偵』です

 世間で探偵ってものにまだ幻想を持っているやつがいるってのが信じられない。
 大手さんは、電車から見えるようにでかでかと広告を打ち、ローカルCMなんか流していたりするが、あたしはそんなものじゃない。大手さんから仕事を回してもらって、細々生きている下請けだ。調査対象の一日を調べ上げるってのは楽なことじゃない。車で移動してくれる相手ならまだ楽だが、電車移動となると面倒でたまらない。だからと言っていつでも複数を貼り付けることも出来ない。何しろ金がかかって仕方が無い。
 そういうわけで、あたしら下請けの探偵の出番ってのがまわってくる。大手の正社員さんだと採算が割れることを引き受ける。あたしの場合は、調査対象関係人ってやつだ。電車にのってちんまりとロングシートに座って、鼻歌交じりでニコニコしているようなお嬢さんだ。顔立ちは悪くない。服だって悪くない。というより、良いものを着ている。初夏にあわせた白いジャケットと、桜色のワンピースだ。そこだけ見ていると、いいところのお嬢さんという風情だが、髪がいけない。電車の窓から差し込む光が、明るく照らしているのはピンク色の髪だ。アニメキャラじゃないんだ。
 流石に、アニメアニメしたショッキングピンクとかではなくて、沈んだ色の淡いピンクだ。良くあんな色を探し出してきたものだと思う。遠目に見れば気づかないが、近くに見れば、そうロングシートの端の扉の脇に立って見れば、やはり気づく。赤毛というわけじゃない。あれは狙って染めたピンクだ。
 あたしは、誰がどんな格好をしようと気にしない。むかしむかしに流行ったヤマンバに比べたら、センスが良いとすら思った。大学生というには幼いが、高校生にも見えない。家事手伝いかな、と思いながら、あたしはあの正体の知れないピンク女を横目でうかがっていた。
 まったく、得体の知れない女だった。もともとの依頼は、彼女についてではなかった。
 ある母親が、息子の素行がおかしいと相談に来たらしい。要するに連絡が取れない。会社にも出ていない。マンションにも帰らない。だが携帯は生きているらしい。たまにつながり、そのときには「うるさい」だの「もうかまわないでくれ」だのと返事が来る。そこから先はお決まりの調査だった。
 まずは本人所在だ。在宅しているらしい。深夜になると部屋があかるくなる。数日監視すると夜に外出しているらしい。コンビニへではなかった。
 追いかけた時に撮影された画像を見た。少し驚いた。その画像と、親から渡された写真とでは、まるで別人のようだった。青白く、やせこけて、頬さえそげて、そのくせ目ばかりギラギラして、汚いTシャツにジーンズ姿の画像だった。髪の毛は乱れて伸び放題で、まるで生活というものから関心を失ったようだった。元受の調査員は「オタクじみた格好」といった。あたしはそのとおりだと思った。汚いからオタクというのではない。生活そのものから関心を失うほど、別のものに入れ込んだ姿がオタクだった。
 元受の調査員は彼を追いかけた。彼と同じ電車に乗り、彼と同じ駅で降りた。彼は家って知ったる、けれどあたりにはまるで関心の無い様子である店に入った。喫茶店だったという。
 そこの、このピンク女がいたのだ。
 ピンク女は明るい笑みを見せて、彼に手を振り、自分の席へ招きよせた。ピンク女と男はしばらく世話話をし、連れ立って店を出た。そこから先は予想通りだった。二人してラブホテルへしけ込み、翌日の昼近くになって姿を見せた。
 男はますます生気を失い、女は冷たくホテルの前で別れたという。
 ピンク女の行方は知れない。
 そこまで聞かされて、あたしは少し首を捻った。
 調査対象の関係人を見つけたら、そちらを追いかけるのが定石だ。なにしろ、対象は関係人との関係を目的に行動している。その後を追跡し続けるより、関係人を追跡するべきだ。
 元受さんは困ったように笑みを浮かべ、そして言ったのだ。
「うちの職員とも連絡がとれない」
 と。
 電車が揺れる。あたしは揺れにあわせて身じろぎをし、それから携帯を出した。メールチェックするような顔をして、携帯GPSを作動にする。
 嫌な予感がする。黒猫が前を横切った気分に似ている。しかもあたしの顔を見て、脱兎のごとく逃げ去ったときみたいな感じだ。嫌な事がお前に起こる。お前には関わりたくないと言われたような。
 ピンク女と調査対象は昼までホテルにしけ込み、そのあと何事も無かったように街へ出た。女は電車に乗り、あたしはそのあとを追いかけた。都心から遠ざかる路線に乗り、そのまま揺られ離れてゆく。
 どこに住んでいるのだろう。おそらく何もしていないだろうことは、雰囲気から判った。職にも就かず昼まで男と過ごすことを許すような家庭なのだろう。どんな対応を打つにしても、相手のことを知らなければ話にならない。
 平日、郊外へ向かう電車からは、、駅に停まるたびに人が消えてゆく。あたしは頃合を見計らって、対面のロングシートの端へ席を占めた。ここなら自然に観察できる。今の世の中楽なものだ。携帯を見ていれば誰も注意を向けない。
 あたしは駅を過ぎるたびに新しくメールを打った。おかしいと思った。
 離れすぎている。
 この女は、どこにでもいるようなあの男を目当てに、どこからやってくるのだろう。あたしはピンク女をうかがった。女は誰に向けているとも判らない笑みを浮かべている。バレたのだろうか。だとして、ピンク女はどうするつもりだろう。
 やがてまた次の駅を告げるアナウンスが流れる。雑音にざらついたその言葉のあとに、ピンク女はようやく立ち上がった。あたしはほんの少しほっとして、携帯に駅名を打ち込む。また少しおかしいと思った。予想していたような高級住宅街ではない。どこにでもある郊外住宅地の一つだ。
 ピンク女は扉の前に立ち、電車が停まるのを待っていた。あたしのすぐ脇だ。わたしは知らん振りをして、携帯を操作して折りたたむ。自分の予定がそこであったような顔をしながら立ち上がり、彼女からすこし離れて立つ。


ここまで書いて力尽きたw