浮遊脳内

思い付きを書いて見ます

カナン ラフ2-19稿 おしまい

2010-10-10 17:11:09 | ラフ 虎の学士 カナン
 けだものの体に突き立った槍をそのままに、俺は手を放し、それに背を向けた。
 歩き始めるとき、さむらいどもがざわめいた。
「どこへ行く」
 犬の男が問う。俺は歩きながらこたえる。
「帰るに決まっているだろう」
「待て、許さんぞ。勝手をするな」
 犬はやはり犬なのだ。それは変えられない。
「好きにさせておけ」
 女さむらいが言う。やつも虎の性根だ。かかわりを感じなくなったものは、もはやどうでもいいのだ。
「その男を押えようとしてもどうにもならん。学士どのも言っていた。その男には神が憑いた」
 さむらいどもがこわごわと道を開くのが判る。
 俺は歩いた。気が動いている。朝が訪れようとしている。東の空が夜明けの前触れの色に染められてゆく。何もかもが変わり、また変わらぬ。
 だが、と女の気配が俺へと向く。
「水浴びくらいしてゆけ。血まみれで歩き回るな」
 声に詰まった俺に、女はさらに言う。
「なんだ?」
「いや、水浴びはあんまり好きじゃない」
「そいつを捕まえろ」
 不意に女が言った。はあ?と振り向く俺と同じように、さむらいたちも声を上げる。
「こ、こいつをですかい?」
 犬の男が言う。女がにんまり笑う気配がする。俺は思わず退いた。虎が目の前にうっそりあらわれて、そうしたら誰だって逃げようとするだろう。
「案ずるな。槍はここにある」
 さむらいどもがいっせいに首をめぐらせてそちらを見る。それからまた俺を見る気配がする。
「ま、待て!」
「かかれ」
 さむらいどもがわっとおしよせる。あらがういとまもなく、おさえつけられ、縄をかけられ、さらに担ぎ上げられる。
「なにをしやがる!おれは野豚じゃねえ!」
「豚はきれい好きだぞ」
 犬の男が声を上げて笑う。
「そいつを小川に放り込め。草でごしごしこすってきれいにしてやれ」
 おう!とさむらいどもが声をあわせてこたえる。縛り上げた俺を抱え上げて、駆け出してゆく。
「やめろおおおおお!」
 もちろん、抗う俺にこたえるものなどいない。
 いつもそうだ。なにもかもそうだ。先にそれを思い知らされたばかりだ。
 そうだ。それがこの地だ。


----
というわけで、こんな話だったのさ。
途中でアイデアが浮かんで、ラフがラフどころではなくなってしまったが、まあいいじゃないかw

というわけで、カナン語に入れ替えたところが良いのは判っていたけれど、そこが不如意でやっぱりラフのままw

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。