浮遊脳内

思い付きを書いて見ます

チーム0・F・INF 助走9

2015-11-15 00:38:06 | ガンプラバトル系SS チーム0・F・IN

 「あら、いらっしゃい」
 声に俺は少し驚いた。いつもの店じゃあ聞かない、若い女性の声だ。店のサッシの扉を開いてくれたのも、若い女の子だ。
「おはようございます、理恵子さん」
「おはよう、有田君。玉田さんも」
 ういーす、などと言いながら、玉ちゃんは普通に入ってゆく。俺は、ドモデス、とかキョドりながら玉ちゃんの後に続く。
「誰よ、アレ」
 玉ちゃんはわざとらしく、ん~ああ、しらなかったっけ~とか言いやがる。
「理恵子さん。店長の娘さん」
 その理恵子さんは、またサッシの扉を閉じる。そこにはまだ「準備中」の札がかかっている。そう、少し早く店を開けてくれたのだ。時間が遅くなると、ジャリどもが増えてくる。互いにウザいと思いながら、ぶつかるのは面倒じゃないか。店長も、そうだな、と言ってくれて、この朝のバトルとなった。
 相手の池内さんたちも、承諾してくれた。そしてすでに奥の部屋で俺たちを待っていてくれている。ガキ向けの待機席に並んで、何事か話をしている。笑い声も聞こえる。
「やあ、おはよう」
 店長が振り返る。待機席の池内さんたちも立ち上がる。
「おはようございます」
 有田君はいつも通り礼儀正しく一礼する。俺らも慌てて頭をさげる。間に立って店長は俺たち双方にうなずきかける。
「こういうことを、僕が言うのは、どうなのかな、と思っていた時期もあったんだ。でも今は思う。僕がこの商店街で、この地域で店をやっているのは、この地域が好きだからでもある」
 だから、と店長は言う。
「地域の人たち、子供も、大人も、変わりなく、僕はその橋渡しの役目を、もうすこしちゃんと考えるべきだった。君たちが、ここで、普通にガンプラバトルをしてくれるのがうれしい」
 余計なことを言ったかな、と店長は照れたように笑う。
「まず、紹介くらいしようか」
 もっとも、俺以外は互いに、顔くらいは知っているようだった。池内さんは、シナンジュを持ってきていた。シナンジュスタインという白の機体をベースに、右腕にはビームランチャーを折りたたんでいる。左腕は握りしめた巨大な拳のようだ。アームドアームという、巨大なクロウだ。その背には、シールドのようなパーツを背負っている。それもまた別の種類のアームドアームだ。アームドアームマシマシだ。
 俺は、ちょっと胸焼けしそうだ。シナンジュスタインベースにした、バンシィノルンを作ってきている。素のバンシィノルンじゃなくて、シナンジュベースですらなくて、シナンジュスタインをベースにした、バンシィノルン仕様だ。何を言ってるかわからない。俺も判らない。でもすげえ造形なんだ。
 装甲にスリットが入っていて、キラキラしたメタルの内部が見える。サイコフレームだ。どれだけ手間をかけて作ったのか、俺にはもうわからない。
 池内さんのチームの二人目は、敏野さんという、池内さんと同年代の、少し小柄な人だった。彼の機体は、EX-Sガンダムだった。でっかいブースターを背負い、ビームスマートガンという長いランチャーは、機体の前に横に携えている。でかい肩には白く丸いマーキングがある。デカールもバリバリだ。肩の上にはフィンがある。そのフィンには、爆弾のようにミサイルが装着されている。腰の後ろにあるフィンにも同じだ。これまたすげえ手間を掛けて作ってある。
 三人目は、加藤さんという。これまたすごい機体だ。ガンダムの背後から、さらに大型の腕が生えている。サイコガンダムの腕だ。ヘイズル・ギガンティックかよ、と玉ちゃんが呟く。俺にはもはや何が何だかわからない。ベースになってるガンダムもRX-78系じゃない。ヘイズルというタイプだ。さらに色々とユニットが増設され、強化されている。そのトドメがサイコガンダムの腕だ。そこには、サイコガンダム用の馬鹿デカイシールドが両手に装備されている。俺には何が何だかわからない。
 彼らの作りこんだガンプラに比べたら、俺らのは、如何にも急いで作りましたって感じだ。俺のキュリオスなんて、無塗装簡単仕上げに、デカールを貼ってあるだけだ。
「行けます」
 作戦タイムに、有田君は言う。相性のいい組み合わせです、と。
「ギガンティックアームは、パワータイプですけど、バリア系の防御じゃないです。こっちの攻撃は効きます。重要なのは、機動性が低いことです」
「じゃあ、俺が」
「いえ」
 玉ちゃんに、有田君は首を振る。
「EXーSを二人で叩きましょう」
「なぜ?」
 俺は問う。デカ腕を叩く方が良さそうに見える。有田君は言う。
「EXーSと、あのシナンジュが、あっちの主力です。二機の機動力で、相手を挟み撃ちにする気です」
「なるほどね」
「挟み撃ちにさえされなければ、なんとかなります。だから、相馬さん」
「俺はシナンジュの方を押さえればいい、ってことか」
「お願いできますか」
「任せろ。アイハブコントロール」
「池内さん、つええぞ?」
「死ぬ気で押さえる」
 わかった、と玉ちゃんはうなずき返してくる。あちらの作戦会議も終わったらしい。池内さんたちは、俺たちを見る。
「いいかい?」
「はい」
 有田君が応じる。池内さんは一歩踏み出し、手を差し出した。
「僕らも全力を尽くす」
「おねがいします」
 有田君も、池内さんの手を握り返す。強く振る。戦いのための礼儀だ。店長も見届けるようにうなずく。
「今回は、非破壊モードだ。ダメージは仮想反映されるけれど、実機には与えられない。フィールド広さは、ウチのマシンのままだ。フィールドから出れば、それで機体ロストあつかい。負けになる。その他、標準ルールで行く。もう、わかってるね」
 はい、と俺たちはうなずく。
「では、配置に」
 それ自体は、もう慣れきっているはずなのに、今日は妙に緊張する。マシンのこちらサイドの縁に、自分のバトルパネルをセットする。接続正常。データ共有。その上で、自分のガンプラをセットアップポジションへと置く。俺のキュリオスは、高速形態でだ。セットして、スキャンさせる。スキャンに基づくデータと、バトルパネルにプレイヤーが初期設定したデータとが、マシンの中で処理されて、スキャンデータ優先で整合される。だから強すぎる俺設定が機体の性能に反映されるとは限らない。
 俺は、左隣の有田君と、さらに向こうの玉ちゃんを見た。二人とも、少し緊張してるようだった。だから、俺は言った。
「チーム・ゼロフィンフ、スリー。キュリオス、介入行動準備良し」
「チーム・ゼロフィンフ、ツー」
 すぐに玉ちゃんが続ける。やっぱ玉ちゃんは良い奴だ。
「セラヴィー、目標を駆逐する」
「チーム・ゼロフィンフ・・・・・・」
 有田君は、少し迷ったようだった。けれどかぶりを振り、顔を上げる。
「ワン。出撃準備良し。チーム・ゼロフィンフ、準備良し!」


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