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乳幼児の貧血

2017年04月24日 | 貧血
近畿外来小児科研究会で発表してきました





世界保健機構(WHO)やネルソン小児科学で貧血とされているHb(ヘモグロビン)11g/dl以下が24.2%であった。
ちなみに米国では9%ほど、スクリーニングとして実施された沖縄での1才児では25%-30%貧血であった。



次に貯蔵鉄の指標となるフェリチンをみたころ、ネルソン小児科学で鉄欠乏とされる12ng/ml以下が28%であった。



Hbとフェリチンの分布を見たところ、Hbが11g/dl 以上であるのに フェリチンが12ng/ml以下である子どもは15.2%もいた。
この子達は潜在性鉄欠乏状態であると考えられ、鉄の補給が必要である。

フェリチンは通常健康保険で通る検査であるが、一律に施行することに対して、躊躇する場合もあり、フェリチンを検査しないでも低フェリチン(潜在性鉄欠乏状態)がわからないか、赤血球恒数とフェリチンを検討してみた。





MCV(平均赤血球容積)とフェリチンでは緩やかな正の相関があるが、基準値内にあっても低フェリチン(潜在性鉄欠乏状態)の子どもは多い。




MCH(平均ヘモグロビン濃度)とフェリチンでは緩やかな正の相関があるが、基準値内にあっても低フェリチン(潜在性鉄欠乏状態)の子どもは多い。MCHが29pg以上あれば、低フェリチンの可能性は低いと思われる。




MCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度)は全く相関していない。



日本外来小児科学会子どもの健康リーフレットNo.18 2002.8より
Hbは財布の中のお金に例えられており、フェリチンは定期預金に例えられている。
財布の中にお金があっても定期預金が減少している状態を【潜在性鉄欠乏症】定期預金が枯渇している状態を【鉄欠乏症】としている。
財布の中にお金があっても定期預金が十分回復するまで、鉄剤が必要である。
15年前にすでにリーフレットとしてつまり当たり前の医学知識として書かれていることに今更ながら驚いた。




小児科の教科書としてゴールドスタンダードであるネルソン小児科学ででも「鉄欠乏は知的機能と運動機能に障害が起こり、貧血が発症前、鉄欠乏の早期に起こる」と明確な記述がある。
潜在性鉄欠乏症の段階で介入が必要であると考えられる。






日本でも1995年に発表された「離乳食の基本」には鉄が精神運動発達に必要であると明確に書かれている。





1989年のPediatricsにはHb10.5以下の状態が3ヶ月以上続くと優位に精神運動発達のスコアが低下すると述べられている。






このように貧血が子どもの発達に悪影響をおよぼすことが明らかであるので、WHOでも対策がされている。
貧血が30%を占めると言われる発展途上国にむけたINACGという機関があり、貧血の危険性、鉄の重要性、治療法など発展途上国に対し啓発活動を行っている。
残念ながら日本は発展途上国ではないと認識され、欧米と同じく貧血に対し対策がなされていると考えらていると思われる。




欧州の離乳食指導でも鉄の重要性はしっかりと述べられている。



日本の子どもたちが欧米に比べ貧血の割合が多い原因の一つとして、鉄摂取量の減少があるかもしれない。
私たちはレバーを食べろと言われてきたが、今の子どもたちは言われていないことが多い。
鉄分の多い鯨肉もよく食べられていた。
鍋や釜、包丁なども鉄製品であり、そこから出た鉄が、食品の濃度を高めていた。
種々の原因により、鉄摂取量が減少している。




さらに最近の離乳食指導では鉄の重要性をしっかり説明していない。
昔は普通に買うことが出来た離乳用のレバーペーストだけの製品は見当たらない。








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