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子宮頸がんワクチンについて

2013年06月17日 | インポート
子宮頚がんワクチン(HPV)の勧奨が一時中止になりました。
私が尊敬する日本赤十字社医療センター小児科顧問の薗部先生の文章の二次使用の許可が出ていますので貼り付けます。私も、子宮頚がんワクチン(HPV)の有害事象に関しては、自然発生率と変わらず、確かに接種後に起こっていますが、ワクチンとの因果関係の可能性は少ないと考えています。

ただし、子宮頚がんワクチンという呼び方は以前より違和感を感じています。ヒト パピローマ ウイルス(HPV)ワクチンと呼ぶべきです。
ヒト パピローマ ウイルス感染により、子宮頸部細胞の異形成を促すことは間違いありません。その異形成が子宮癌になる可能性もあるでしょう。しかし、接種が始まってから、髄膜炎などが劇的に減ったHibワクチンや肺炎球菌ワクチンのような事実は、まだHPVワクチンには証明されていません。当然の話です。効果が実証されるまで20年かかります。

余談ですが、肝癌を明らかに予防する効果が実証されているB型肝炎ワクチンより先に定期接種化されたことは、医学的妥当性を欠くと思っております。
また、成人の風しんワクチンの公費補助も予算がないからとの理由でなおざりにされています。今そこにある危機が妊婦さんの風しん感染です。HPVワクチンを定期接種するお金があるなら、風しんワクチンに回すべきだと思います。

今回の積極的勧奨中止で見合わすのも一法です。また、有害事象は紛れ込みであり、パピローマ ウイルス感染を予防しようとお考えになれば接種するのも一法です。
当院では仰臥位になってもらい、きちっと筋注しており、接種した子たちは「痛くない」と言っています。


以下薗部先生の文章です******************
今回のことを理解するための基本は、日本の厚労省の副作用報告書に記載された例は、世界では有害事象例と呼ばれるもので、ワクチンとの因果関係のある真の副作用例と紛れ込み事故(ニセの副作用)例の両者が含まれております。因果関係の最終判定は専門家が行いますが、世界の常識として、有害事象報告例のほとんどは、重篤な症状を呈する例も含めて紛れ込み事故です。稀な副作用を見つけるために行われる調査ですが、このHPVワクチンは日本を除く国で、約1億5千万回使用されたもので膨大なデータが集積されております。その結果は、ほかのワクチンと同様に、ゼロリスクではあり得ませんが、この調査で安全性の高さが証明されております。多くのマスコミでは上記のことが報道されませんので、保護者の方が危険に思うのも無理からぬことです。報道は下記のことも含めて保護者が判断するのに必要な情報を総て記載すべきですが、残念ながらそうではないことが多いのです。

まず、原因は何であれ、接種後に起こった子どものCRPS(複合性局所疼痛症候群)などの病気にお悩みのご本人及びご家族に深くご同情申し上げます。突然症状が出れば、どなたでもびっくりして、受診します。また、ご両親がHPVワクチンのために起こったと思うことも大変自然なことです。しかし、小生も慢性疼痛のことはある程度は知っておりましたが、特に子どものCRPSに関しては、この問題が起こるまで全く知りませんでした。患者さんが受診された医療施設でも戸惑ったのではないかと思われます。

最終的に、大きな問題点はこの子どものCRPSが知られてないことと、専門医が少ないことになります。今後この点に関して小生は、先日の委員会に出席された成人の慢性疼痛の専門家に、是非子どものCRPSの専門家の先生を研究班などに加えて頂き、研究、治療体制の拡充をお願いしております。これは当然厚労省にお願いしていることにもなります。また、VPDの会としましても何かお手伝いできることはないかと模索しております。

さて、HPVワクチン接種後の血管迷走神経反射による失神と子どものCRPSに関して、ご両親に説明するための客観的な情報を記します。

失神も、子どものCRPSも、これはHPVワクチンだけで起こるものではなく、他のワクチンでも、献血や採血でも、その他の学校や家庭の生活上のことでも起こるものです。失神に関しては、HPVワクチンが痛いという噂が大変広まっており、そのために緊張します。時には、接種前に失神した例も報告されております。しかし、多くは接種が終わってほっとして緊張がとれた時に起こります。失神は女性に多く見られ、接種年齢が好発年齢と重なることも関係すると思います。ですので、これは基本的にワクチンの内容成分のためではなく、針を刺すという接種行為によって起こるものです。

奥山先生のスライドにもありましたように、同じことが子どものCRPSについても言えます。すなわち、これもHPVワクチンだけで起こるものでは無く、他のワクチンでも、献血や採血でも、その他の学校や日常の生活上のことでも起こるものです。日本の献血での健康被害報告にもCRPSの記載はあります。これらの点がマスコミ報道ではでていないことが多いので、是非保護者の方に伝えていただきたいことです。

 次に、接種中止にするかどうかなどの判断のことです。
幸いなことに、接種中止にはなりませんでした。国際的な中止する条件とは、世界で知られていない未知の重篤な副作用や有害事象が多発した場合です。接種後のCRPSに関しては世界中で報告されており、英国では接種後に6例でているとのことです。しかし、自然発生のCRPSと比べて、発生頻度に差がないとのことので、接種中止にはなっていません.米国では、多分同じ症状の人を、CRPSでは無く、RSD(reflex sympathetic dystrophy)と分類しており、7例報告が有り、その他の国でも起こっております。

ですので、今回も接種を中止したり、制限する条件には当たらないと小生は主張しました。しかし最終採決は3:2で、結果は上記の通りになりました。

制限した理由の一つに、未回復の方がおられることが問題とされました。基本的に慢性疼痛の一種ですので、お気の毒ですが、回復に時間のかかることが多いと思います。ですが、奥山先生のスライドにありましたように、時間はかかりますが最終的な予後は悪いものでは無いことが有り難い点です。ただしこれは、あくまでも専門家がしっかりと治療した場合ですので、その体制作りが大切になります。

いずれにしましてもこの積極的勧奨接種の中止がワクチン全体の信頼性に影響を及ぼして、他のワクチンの接種率が下がることが懸念されます。

HPVワクチンの安全性について
 米国では、接種後の被害救済制度であるVICP(Vaccine Injury Compensation Program)の、補償基準の一覧表には、HPVワクチンでは対象になる副作用はないと記載されております。しかし、実際には接種行為により失神などが起こった際も拡大適応されているようです。

日本での副作用問題の続きとしまして、アデムとギラン・バレー症候群が重大な副作用として、時期はずれましたが、両ワクチンの添付文書に記載された件です。米国の中立的医学団体であるIOM(Institute Of Medicine of American Academy) が副作用問題に関して幅広く詳細に調査をしております。厚い報告書の本もありますが、インターネットで要約だけを見ることも簡単にできます。
ここでは、ワクチンとこの両疾患に関して、確実に関係するとは記載されておりません。また、今年の医事新報の3月30日号のワクチン特集号の中に、岡田賢司先生がワクチンの安全性に関して記していますが、「この両疾患とワクチンとの関係に関しては、必ずしも明らかでない」と記載されております。

すなわちアデムで言えば、どのワクチン接種後に見られております。しかしワクチンの内容は総て違い、共通成分は水分だけです。また接種後の発生頻度は、小生の知る限り、自然発生頻度とほぼ同じで、少なくとも有意に超えるものではありません。2005年の日本脳炎ワクチン接種後のアデムに関して、WHOの専門家委員会から、「日本政府の言う旧型日本脳炎ワクチン接種とアデムの発生の関係に関して、エビデンスは無い。」との声明文が出されましたが、政府は方針を長い間変えなかった事実があります。ギラン・バレー症候群も多くの種類のワクチン接種後に見られ ます。ただし、、これも知る限りは、自然発生頻度を超えるものでは無いので、「関係は必ずしも明らかでない」になるのです。すなわち、紛れ込み事故の可能性が極めて高いものです。

これらの点をご理解いただき、日本の子どもを予防可能の子宮頸がんから守るためにご尽力いただければ有り難いです。また希望者への接種時には、子宮頸がん検診の大切さも合わせてご指導下さい。また、失神による障害の防止にもご注意下さい。

なお、接種を開始した方が、今回のことで次の接種の時期が遅れる場合の対処法です。菅谷明則先生がこのMLに回答しております。遅れた場合はなるべく早く追加接種を行いますが、回数はすでに接種した分を含めて合計3回です。2回目と3回目の間隔はブースター効果で抗体価を高めるために、原則として各ワクチンの規定間隔通りにします。(文責:薗部友良)