おかだ小児科医院公式ブログ

けが火傷のなつい式湿潤療法、江部流糖質制限食、渡辺派MEC食、おかゆから始めない離乳食、ボディソープを使わないスキンケア

こどもの予防接種について

2016年06月09日 | 健康
こどもの予防接種をされないという方を時々お見かけいたします。
固い信念を持って、おられる方もおられますが、なんとなく怖いという方もおられます。
一小児科医として私の考えをまとめておきます。

麻しん風しん混合ワクチンは、1歳になれば直ちに接種するるべきワクチンであると考えています。

 麻しんという病気が昔ワクチンのない時代は「はしかの命定め」と言われたように生命の危機がある病気であること、更に亜急性麻しん脳炎ということが、麻しん罹患後十数年後に起こることがあり、重い神経症状を引き起こすことがあるのがその理由です。
 また非常に感染力が強く、同じ部屋に居るだけで感染します。ワクチンがまだ接種できない1歳未満の乳幼児や免疫不全の方にかかると大変なことになります。
 多くの小児科医は麻しんワクチン未接種の方には医院の待合室に入ってきてほしくないと考えています。(診療拒否ではありません。最初から隔離させていただきます)

 予防接種反対派の毛利子来先生でさえ、麻しんワクチンは接種すべきとおっしゃっています。

 風しんはご存知のように妊娠中にかかると、先天性風しん症候群という生まれつきの病気を持った赤ちゃんが生まれる可能性があります。
これを防ぐためには風しんワクチンの接種率を高め、流行がない社会にするしかありません。

 この2つの病気は自己防衛だけでなく、他人へ危害を加えないために接種するワクチンだと考えています。
ワクチンを接種されない自由もありますが、この2つのワクチンを接種されない方はアメリカのアーミッシュのようにその方だけのコミュニティを作ってください。これがほんとうの自由です。

 もし、混合ワクチンがお嫌なら、麻しん単抗原、風しん単抗原ワクチンもあり、4週間開けて別々に接種できます。どちらも1歳代、就学前一年間は公費で接種できます。

ヒブワクチン小児肺炎球菌ワクチンは、生後2ヶ月になればすぐに同時接種しています。
 このワクチンが日本で認可される前は年間50-100人の乳幼児が細菌性髄膜炎で亡くなり、1000人くらいの乳幼児が重い後遺症になっていました。(余談ですが、日本は正確な疾病統計がないので、正確な数字はわかりません。疾病統計に金を出さないのが日本の厚生行政の欠陥だと思っています。)

 具体的に言いますと、生後4ヶ月の子が高い熱が出て、病院を救急受診した場合、ヒブ・小児肺炎球菌ワクチンの2回以上の接種歴が母子手帳から確認できれば、状態が悪くないかぎり、おそらく解熱剤だけ処方され、翌日かかりつけを受診するようにと言われます。
もし、未接種なら、直ちに脊髄穿刺(ルンバール)を行うと思います。私が小児科に入局した20数年前は、採血の次に覚える手技でした。「発熱の乳幼児を見たらルンバールをためらうな」と教えられました。
 
 市中病院に努めている時、今でも忘れることができない出来事がありました、風邪が長引いている幼児が入院となり、病棟に上がってこられ、比較的元気でしたが、当然のごとくルンバールを研修医の私が行いました。すると、なかなか髄液が出てきません。やっと出てきたら、なんと無色透明のさらさらしているはずの髄液がまるでカルピスのように白くてドロドロでした。顕微鏡で見るまでもなく、細菌性髄膜炎です。直ちに抗生剤の点滴をしましたが、その夜にお亡くなりになりました。原因菌は肺炎球菌でした。

 余談ですが小児科の研修を十分受けた医師とそうではなくて小児科を標榜している医師との違いの一つがこのような悲しい体験をしているかどうかだと私は思っています。

 話は戻りますが、ヒブワクチン・小児肺炎球菌ワクチンは麻しん風しんのように接種しなかったからといって、他人に害を与えることはまずありません。(子どもが肺炎球菌ワクチンをすると年寄りが肺炎になりにくいという事実はあります)
自己防衛ワクチンです。このワクチンのない時代に戻りたくありません。この2つのワクチンは欧米より10数年遅れましたが、お子さんが細菌性髄膜炎に罹患された保護者の方の会のご尽力により日本に導入されたという経緯があります。

DPT-IPV 四種混合ワクチン は生後3ヶ月で接種しています。
ジフテリア、百日咳、破傷風ワクチンに不活化ポリオワクチンを混合したものです。

 ジフテリアはこのワクチンのおかげかで、日本では見られなくなりました。戦後すぐにはクループで呼吸停止した人たちが多くおられたそうです。

百日咳は日本では青年期にワクチンをしていないので、中高生や大人が罹患した場合、本人たちは大したことがないのに、乳児にうつすと命の危険も伴う呼吸困難症状を呈することもあり、今でも恐ろしい病気です。

破傷風は牧草地などでけがをした場合ワクチンをしていないと破傷風免疫グロブリンという血液製剤が使用されます。ワクチンより血液製剤注射を避けたいので私自身、数年に一度DT(破傷風ジフテリア)ワクチンを接種しています。

ポリオですが、私達昭和30年前後生まれの者の母親にとって「小児麻痺」といって大変恐れられた病気です。
当時国交がなかったソ連からポリオ生ワクチンを超法規的に緊急輸入して、流行が収まったことは知る人ぞ知る出来事です。
流行は収まりましたが、皮肉なことにこの時から数年前使用されていたポリオ生ワクチンによるポリオワクチン関連麻痺を発症された方がおられます。そのような副作用がなく世界の先進国で前から使用されていた不活化ポリオワクチンがやっと日本で使用することが出来、数年前から三種混合との混合ワクチンになっています。この不活化ポリオ導入に関してはポリオの会の方がご尽力されています。

 なお不活化ポリオ単独ワクチンはありますが、三種混合(DPT)は入手困難です。

水痘ワクチンですが一昨年定期接種になりました。2回接種するとまずかかりません。
痕が残ることが多く、骨髄移植をしたあとなど免疫不全状態の方にかかると命に関わりますので、一歳になってすぐとその3-6ヶ月後に接種しています。


おたふくかぜワクチンは定期接種ではなく自費でお金のかかるワクチンです。しかし、おたふくかぜにかかると難聴になることがあり、多くの小児科医が接種を勧めています。


B型肝炎ワクチンは平成28年4月1日生まれの赤ちゃんから定期接種(接種は10月から)になりました。涙でもうつるということがわかったからです。それ以前に生まれた方はうつらないというわけではありません。すべての年齢の人が生涯には一度(3回)接種したほうがいいと考えています。特に乳幼児ではB型肝炎にかかると慢性肝炎から肝癌になる率が高いです。
 秋葉原の殺傷事件でけがをした方を助けた方にB型肝炎がうつったという事例がありました。
ワクチンをしていればうつりませんので、個人防衛ワクチンだと考えています。

日本脳炎ワクチン は平成21年6月から乾燥細胞培養ワクチンに変わって効果安全性とも高くなっていると考えています。当地の豚の抗体保有率がそこそこ高いですので、リスクの高い地域と考え、3歳を待たずに接種しています。

 ヒトヒト感染はないので個人防衛ワクチンです。


ロタワクチンは希望があれば接種しています。初回接種が14週6日を超えての接種はしておりません。接種(飲むワクチンです)するならヒブ・小児肺炎球菌ワクチンと同時か、その一週後までにしてください。


インフルエンザは希望があれば接種しています。

チメロサールについて
チメロサール(有機エチル水銀)が自閉症の原因となるとは考えていませんが、入っていないものがあればそれを使用すべきと考え、インフルエンザ以外はチメロサールフリーワクチンを使用しています。

同時接種について
乳児突然死症候群で年間150人の赤ちゃんがなくなっています。
つまり平均すると毎週3人日本全国何処かで赤ちゃんがなくなっていることになります。

ワクチンのない時代なら、ワクチン接種後に死亡した赤ちゃんは0ですよね。
しかし、現在のように2ヶ月からワクチンを開始するようになると、その150人のうち何人かは亡くなる一週間以内にワクチンをしているでしょう。
ワクチン定期接種開始によって乳児突然死症候群の数が増えたなら、ワクチンのせいと言えるかもしれませんが、乳児突然死症候群の数は年々減っています。
どの子も等しくある確率でワクチンと関係なくワクチン接種後一週間以内に突然死することがあるのです。
ヒブ、肺炎球菌、四種混合、B型肝炎を同時接種すれば、その心配は月に一回ですが、個別に接種すると毎週です。

付け加えると定期接種と任意接種を同時に接種し重篤な有害事象が起こった場合、明らかに任意接種が原因でない限り(上に書いたようにまずわかりません)より高額な定期接種の金額で補償されます。

もちろん同時接種をおすすめするのは、できるだけ早く抗体をつけるためです。
待っている間に次に接種しようとしていた方の髄膜炎に罹った例もあります。
その上で私は個別接種は乳児を車に乗せたりして頻回に医療機関を受診しなければならず、交通事故に合うリスクも高くなると考えています。

副反応について

すべてのワクチンに副反応が起こる可能性はあります。
発熱、局所の腫れ、などは全く問題ではありません。
 ショックが起こることはどのワクチンにもありますので、小児救命処置ができる小児科での接種をおすすめします。
 死亡や後遺症が残る有害事象がワクチン接種後に起こる可能性はありますが、ワクチンとの前後関係はあっても因果関係はほぼ無いと考えています。

接種するにしろしないにしろ、そのメリットデメリットをよく考えて接種してください。
ワクチンのことだけ考えていられないのは、わかりますが、なんとなく怖いとか、無料だから接種するというのはいかがかと思います。