かにのマルタツ(北海道函館市)――SEO導入、ネットから客呼ぶ

2006年12月13日 | WEB/検索エンジン/SEO/SEM
 十月から年末にかけてインターネットのトラフィック(通信量)が急増する。カニ目当ての通販サイト閲覧者が増えるためで、通信事業者は「カニトラフィック」と呼ぶ。北海道函館市のカニ卸売業者「かにのマルタツ」もその恩恵にあずかる一社だ。販売の大半が業務用だが、SEO(検索エンジン最適化)効果で消費者向けも伸びている。
 マルタツは有名な函館朝市にほど近い場所に店舗を構える。大型トラックが横付けされた店頭には小型の船をそのまま転用した水槽にカニがどっさり。店内にもマルタツの最大の特徴である海洋深層水を使った大型いけすが所狭しと並ぶ。
 十二月はかき入れ時だ。火曜日にロシア産のタラバガニを二トン半。水曜日にはズワイガニ一トン。木曜日にはまたタラバを二トン半。札幌をはじめ、紋別、稚内、小樽と長浜達也社長が大型トラックを寝ずに走らせて仕入れる。
 もともと朝市で観光客相手の小売店で七年ほど働いていたが二〇〇一年に独立。その際に事業を卸売り中心に据え、朝市から離れた。今はその朝市向けにカニなどを卸している。
 ネット通販を始めたのは〇二年の冬。ゼロからのスタートながら友人の助言を受けて自社名を冠したドメイン名を取得するなど積極的に取り組んだ。
 ただ、順風満帆とは行かず、自社サイトへのアクセスは思うように増えなかった。「人通りの多いところ」(長浜達也社長)を求め〇四年からはヤフーにも出店。今や一日のアクセス数は四百―一千件。売上高に占めるネット通販の割合は三割に伸びた。
 ヤフー出店以降、消費者向けも徐々に増えてきた。売れ筋は足が折れているなど「訳あり」のカニを詰め合わせたセット(三キロで八千百九十円など)だ。卸売りならではの低価格が人気で十二月は電話でも一日四―五件の問い合わせがきている。
 ネット通販の一割の業務用も伸びてきた。ホテルやペンション向けが多い。カニの食べ放題を売りにする関西の大手ホテルにはこの三カ月で約五トン卸した。九州のホテルも北海道フェアをしたいと相談がきている。いずれもネットで取引先を探す会社だ。
 ネットで重視しているのはいかに検索に引っかかるようにするか。そのSEO対策は「お金をかけずにできることは自分でやる」(長浜社長)方針。具体的には商品画像にカーソルを合わせると説明が出てくるなど「地味なことの積み重ね」(同)だ。
 配送には二年前から海洋深層水を使い同業他社と差異化している。深層水は日本海側にある熊石の供給施設まで函館から二時間、水槽車を走らせて取りに行く。水深三百四十三メートルの地点から取水する深層水は夏でも温度が一・五度以下と低く安定しており、雑菌も発生しないため配送に適している。
 マルタツのカニの総取扱量は昨年二百トンを超えた。今後の課題は顧客数の拡大だ。「特効薬はない」という長浜社長は、メールマガジン更新頻度も上げたり、懸賞を出したりするなど地味な顧客開拓作業を積み重ねていく。
(柳迫勇人)