「佐渡島の金山」ユネスコ世界文化遺産登録 ~推薦書の提出期限迫る
「佐渡島の金山」(新潟県)を国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に登録するため、推薦書を提出しなくてはならない2月1日の期限が迫っている。
飯田)「佐渡島の金山」ユネスコへの世界文化遺産登録について。文化審議会からは推薦するべきだという声が出ていて、日本政府は「総合的に判断する」と言っています。昨年(2021年)末には、事実上これを見送るという報道もありましたが、現状はどうなっていますか?
青山)岸田総理が国会答弁で、「推薦期限は2月1日で、1月末までにはまだ時間がある」とおっしゃっています。1月末までに岸田総理自身が決断するということです。内部を十分調べていますけれども、「推薦しないと決まった」という事実はありません。【※編集部注:政府は28日、推薦する方向で最終調整に入った】
岸田総理の考え ~「推薦して終わりではなくて、登録させないといけない」
青山)この間、参議院で予算委員会が始まる前に、少し時間があったのです。そのときに岸田総理が与野党議員が見ている前で、私に普通の声で話しかけて来られたのです。
飯田)委員会室で。
青山)「佐渡金山についての夕べの電話だけれど」とおっしゃいました。あとは私が声をひそめたので、ひそひそ話になりましたが。この件を公共の電波でなぜ言うかというと、ただの立ち話だったので私も予想外でしたが、総理動静に出たので一部を明らかにします。
飯田)立ち話であったけれど。
青山)これまで総理に直接交渉して来ていますが、政府の一部である文化庁の審議会が、法に基づいて推薦を決めたのですから、推薦して当たり前なのです。それを政府自らが覆すようでは一貫性がありません。「推薦しない場合、韓国の不合理な主張を認めることになりますよ」「だから推薦してください」ということを国会議員、自由民主党の一員として、総理を含め直接交渉しているわけです。それに対して、おそらく岸田総理の考えは、「推薦して終わりではなく、登録させないといけないから」ということなのです。
飯田)登録まで持って行かないといけない。
日本が焦って推薦することを韓国が手ぐすね引いて待っている ~外務省の努力が足りない
青山)それがまさしく文化庁の審議会が決めたことを貫徹することになるのです。推薦して負けました、ではダメだということです。少なくとも岸田総理の認識は、いまのところ「韓国の工作活動にかなりやられていて、焦って推薦することを韓国が手ぐすね引いて待っている」というものです。
飯田)日本が推薦することを。
青山)これは外務省のいままでの努力が足りないということです。総理はおっしゃっていませんが、国会議員としては言わざるを得ません。同時に、ユネスコに対する韓国の工作活動は、常軌を逸しているわけです。
飯田)常軌を逸している。
青山)日本が決して使わないような手段も含め、工作していると思われます。外務省が怠けていたというわけではないけれども、現実問題として、登録を勝ち取るにはどうしたらいいかという考えが総理のなかにあるのです。
推薦を1年延期しても韓国の工作は止まない
青山)ただ、ここは私とは考えが違っていて、1年延ばして2022年度に推薦を持ちこしても、韓国の工作が止むわけではありません。間違いなく韓国側は両睨みの体勢で、右手では2021年度の推薦を手ぐすね引いて待ち構えているけれども、左手では日本が韓国の浸透ぶりを見て1年延ばした場合の対応も、十分なお金を使ってやっていると思われます。だから、延ばしてもいいことが起こるわけではありません、ということを申し上げています。
期限までに推薦を出さなければ、世界は「日本にとって困る点がある」と判断する
飯田)衆議院の予算委員会で、高市早苗政調会長がまさにその質問をされていましたし、私がインタビューさせていただいたときもおっしゃっていました。来年(2023年)になると、ユネスコの世界遺産登録を審議するメンバーとして、韓国が入る可能性があるということです。来年出すと2024年の審議になるから、韓国も審議のなかに入って当然ながら反対もするし、内部で自由な工作もできるだろうから、今年に出した方がより通りやすいのではないかという指摘をしていました。
青山)高市政調会長が質問なさる前に、私も高市さんと議論していますが、高市さんは熱意を持って取り組まれていて、よく調べていらっしゃいます。かつて外務省が昭和30年代に出した見解なども、中身は紹介されませんでしたが、よく把握していらっしゃいます。
飯田)そうですね。
青山)もともと韓国の主張については不合理な点があるということを、かつてはもっとはっきりと言っていたわけです。押しに押されてこういう奇妙なことになっている。したがって、来年度に出した方が不利になるという高市政調会長の認識は、決して偏った強硬論ではなく現実論なのです。現実論をきちんとおっしゃったわけです。
飯田)来年度に出すと。
青山)それに対して岸田総理と林外務大臣、特に岸田総理は「中傷」という言葉を用いて、そういう主張には屈しないということを言われています。
飯田)総理は。
青山)私自身の水面下の交渉の一部を、いまあえてお話ししたわけですけれども、それを通じて考えているのは、高市さんがおっしゃったこともあります。それと同時に、今年(2022年)の2月1日までに推薦しなかった場合、当然、ユネスコを含めた世界の世論は、韓国の言っていることに一定の理があって、日本としては準備し直さざるを得ないとか、推薦そのものを見直すかも知れないと取るはずです。韓国の言っていることがすべて正しいとは思わなくても、「かなり日本にとって困る点があるのだ」と判断します。これは推論ではなく、国際社会に私の人脈を通じて当たった結果として、公平に世界が見た場合そうなる、ということです。
飯田)今年推薦しなかった場合。
青山)総理はその現実を認識されて、1月中に推薦に踏み切られると理解しています。ただ、岸田総理から私の方にそのような答えがあったわけではありません。まだ1月27日ですから。岸田総理は総理になられる前後で、だいぶ雰囲気が変わったところがあります。あまり慌てない人ですよね。
飯田)そうですね。
青山)総理大臣でよく慌てるような人はあまりいないかも知れないけれど、「まだ時間がある」というお考えではないでしょうか。しかし、「ギリギリになること自体が、韓国の言うことに理があるので日本が一生懸命言い訳を考えているとか、迷っているという見方をされます」と申し上げているわけです。
世界記憶遺産と世界文化遺産はルールが違う
飯田)「難しいのではないか」と言う人のなかには、「世界記憶遺産」と同じように考えている人もいます。関係国が1ヵ国でも反対した場合は登録が難しいので、いま出すのは得策ではないというような話がありますが。
青山)行政官の一部には、水面下でそういうエクスキューズをする人もいるのですが、それは話が違います。
飯田)今回の話は文化遺産であるから、まったく別のルールであると。
青山)そうです。
佐渡金山の採掘のピークは江戸時代ではない ~そこを指摘すると揚げ足を取られる可能性も
飯田)韓国の主張は、いわゆる徴用工の話も出て来ていますけれども、「これは江戸時代の話だから違うでしょう」という指摘もありますが、いかがですか?
青山)佐渡金山は江戸時代も採掘していて、明治維新後も採掘しています。採掘のピークは江戸時代ではありません。しかし、そこだけを言うとまた揚げ足を取られると思います。
飯田)全体として佐渡金山とはこういうものであったのだ、というところから。
青山)私たちは何も恥じるところはないし、何も傷はないのです。例えば「韓国が江戸時代のことを言っている」と笑うと、一瞬、話がそこで見えるような気がするけれども、必ず揚げ足を取られます。
飯田)揚げ足を。
青山)佐渡金山というものは私たちの誇りある歴史なので、真正面から事実をそのまま出せばいいのです。明治以降も採掘をしていますから。
「徴用工」という呼称は間違い
青山)いま飯田アナウンサーがおっしゃった「徴用工」という言葉自体にも、前から反対しています。昭和30年代に外務省が出した公式見解でも、「強制的に徴用されたという認識自体が間違いであって、基本的に当時の朝鮮半島の皆さんの自由意志に基づくものが、少なくとも圧倒的に多かった」ということを歴史に基づいて言っているのです。
飯田)ほとんどが自由意志に基づくものであった。
青山)メディアも外務省も「徴用工」とずっと言っているから、1人の議員として強く抗議し、「旧朝鮮半島出身労働者」に変わったわけです。ただ、この言葉も日本語としておかしいですよね。朝鮮半島の上に「旧」が付いているでしょう。朝鮮半島はいまも朝鮮半島ですよね。
飯田)旧ではないですよね。
青山)だから「主として応募工」と日本政府は言うべきだということです。そこを曖昧にしているから、今回もまた日本は食いつきやすい相手としてなめられていて、また不合理な主張をしているのです。