安倍元総理「台湾への挑発は中国自身の利益を損ねる」と指摘 ~「日本は中国へどう臨むのか」を示唆
自由民主党の安倍元総理大臣は12月14日、台湾のシンクタンクの会合にビデオメッセージを寄せ、軍備増強と海洋進出を進める中国と台湾との間で高まる緊張関係に関し、「中国に対し、隣国を挑発したり、追い詰めたりする行いは控えるべきだと言うべきだ。中国自身の利益を損ねるからだ」と重ねて指摘した。
飯田)日米台のシンクタンクが共催したシンポジウムのなかで、ビデオメッセージを寄せたということです。安倍さんはここ最近、精力的に発言されていらっしゃいますね。
青山)総理でなくなったということを、いい意味で活用されていると思います。中国共産党の独裁主義が、このところ極端になっているでしょう。ウイグル人に対する問題も極端な弾圧ですよね。
飯田)そうですね。
青山)中国が「内政問題だ」と主張することに対して、安倍さんは総理の時代から反論されて来ましたけれど、ここまではっきりとは言えませんでした。今後の新しい年は、ますます「中国に対してどういう姿勢で臨むのか」ということが日本の鍵になるという示唆でもあると思います。
中国に対してどう向かうか ~その分岐点に立つ岸田総理
青山)私も中国に対して厳しい姿勢を取っていますが、それはあくまでも独裁主義に対して取っているのであり、中国の方々に対してではありません。アジアのなかで、いま中国共産党の独裁主義にものを言える国は、実は日本しかいないのです。ナチズムの専制主義に対して、1930年代当時のヨーロッパでものを言うことができたのは、ドーバー海峡を挟んだ英国だけでした。
飯田)そうですね。
青山)でも、その英国も最初はチェンバレン首相が宥和政策を取り、宥めようとして、かえってチェコやポーランドを差し出してしまい、それが大きな戦争につながって行ったわけです。英国はそこで切り替えて、チャーチルが現れたのです。岸田総理は、その分岐点に立っていると思います。チェンバレンになるのか、チャーチルになるのか。
飯田)チェンバレンになるか、チャーチルになるかの。
青山)安倍さんも、安倍さんの意見を自由におっしゃっているようで、岸田総理に対して「対中国に宥和的な姿勢はもう通用しない」とおっしゃりたいのではないかなと思います。
飯田)このメッセージは対中国のみならず、日本国内に向けても、と。
青山)いや、日本国内に向けてがいちばんでしょう。中国共産党に対してメッセージを出すのも大事ですが、言っても方向転換しないではないですか。できないシステムなのです、独裁主義というものは。
いたずらな宥和政策はアジアの平和にとって有害
青山)民主主義のようにいろいろな意見が出て来ないですから、独裁者が失脚するような極端なことがなければ意見を変えられないのが、独裁主義の大きな弊害の1つです。だから、中国共産党をこれで動かそうとしているのではなく、岸田現政権に対して、「いたずらな宥和政策は、アジアの平和にとって有害ですよ」ということを言いたいのではないでしょうか。台湾のことをおっしゃっているけれど、本当の真意はそこだと思います。その意味では、私は安倍さんの発言を支持します。
飯田)岸田政権に向けて。
青山)ただし、台湾国防部からすると、中国は演習に見せかけていきなり攻撃して来る可能性もある。その可能性の恐れを指摘されることは正しいのですが、現実の中国軍にはそんな能力はありません。
中国が東沙諸島に攻撃をしかける可能性も
青山)台湾の南には東沙諸島があります。日本の尖閣諸島と似ているのですが、そこに対して攻撃をしかける可能性はあると思います。そこに拠点を置いたり、また中国は賢いので台湾を破壊することはせず、そこを拠点に台湾の内政を動かし、中国共産党の思い通りにするという懸念の方が強いと思います。
飯田)なるほど。
青山)東沙諸島まで、横須賀からアメリカ海軍の主力である第7艦隊が向かっても、数日かかりますから、そういうときに狙われる可能性があります。台湾海峡から南にかけては異常な緊張状態です。
限定条件が厳しすぎて使えない「集団的自衛権」
飯田)安倍さんは今回のメッセージのなかで、「日米台は海洋や空中、サイバー空間、宇宙においても能力を高め続ける必要がある」と、ここを連携すべきだと強く訴えている。現状として、日本の自衛隊と台湾軍が何かをやろうという動きは、オフィシャルにはできないところがありますよね。
青山)法的にできないわけではないですけれどもね。ただ、簡単に言うと、自衛隊は活動範囲がものすごく狭いのです。もちろん憲法9条の制約もあります。安倍政権下で平和安全法制ができて、集団的自衛権を認めたのですが、実はアメリカ軍から聞いた反応として、当時の私は民間人でしたが、むしろ逆に厳しいので使えないと言うのです。
飯田)逆に使えない。
青山)あまりにも限定条件がつきすぎて。第二次世界大戦当時からそうですが、なぜ世界大戦になったのかというと、一国では防衛できないからです。よくも悪くも、いろいろな国と組まなければならないわけです。
飯田)そうですね。
青山)この時代に「自衛隊だけで国防ができる」という考え方を、日本はいつまで続けるのか。存立危機という妙な言葉を使ったり、「〇〇事態」というものがたくさんあって、国民にはわかりにくいと思うのですが、アメリカにとってもわかりにくいのです。台湾にとってもわかりにくい。しかし、中国にとっては、わかりにくいままでいいのです。自衛隊が動けないわけですから。
日本の自衛隊の海での能力は高い ~「平和を守るために、何をすべきなのか」を現実の中国の動きを見て考えるべき
青山)ただ、自衛隊の海での能力、特に潜水艦艇の能力は、世界最高だと私は考えています。原子力潜水艦より、日本の通常艦の方が局地戦で見れば上だと思います。見つからないから。原子力潜水艦は音が大きく、見つかってしまうのです。
飯田)日本の通常の潜水艦の方が。
青山)そうすると、台湾やアメリカから、「平和を守る範囲内において、もう少し活動範囲を広げるべきだ」という議論がずっとあります。安倍さんの発言はそこに対しても問題提起をしているのだと思います。先ほど岸田総理と言いましたが、私たちは民主主義の国です。私たち国会議員の後ろには有権者がいるわけですから、主権者の方も改めて客観的に冷静に、「平和を守るために何をすべきなのか」ということを、現実の中国の動きをよく見て考えて欲しいのです。
中国にとっても利益にならない ~台湾の存在感が増加する理由
青山)しかし、「中国にとっても利益にならない」と、安倍さんは言っているわけです。例えば経済から言うと、中国がものを買ってくれる大きさと、台湾がものを買う大きさは、桁がゼロ3つくらい違うでしょう。それでも、これだけ台湾の存在感が増して来るというのは、あまりにも中国共産党の最近の動きが、習近平国家主席の独裁が極端に強化されているからです。それは自滅につながると思います。
飯田)それに対して、諫言するような人は、あの体制下では生まれ得ない。
青山)もともと少なかったのが、汚職追及の名の下に徹底的に失脚させ、追放し逮捕し、投獄したでしょう。しかし、習近平さんの派閥に属する人たちは一切そういう目に遭わない。習近平さん、あるいは中国共産党自身は独裁主義の方がいいのです。決定も早いし、ブレもないのだとおっしゃっているけれど、弊害も自分で大きくしているのが現状なのです。そうすると、いろいろな諫言は国外からもせざるを得ません。
飯田)国外からも。
青山)さらに台湾、ウイグル、チベット、南モンゴルなどの問題は、内政問題で片付けるわけにはいきません。人間の尊厳、命に関わることですから。
対中国、人権非難決議を本国会で
飯田)まさに人権についての問題。そうすると、立法府での決議に関しても。
青山)来年(2022年)の通常国会まで待たずに、対中国、人権非難決議を本国会で行うべきです。とは言っても、もう時間がなくなってしまったのですが。やるべきだということは前々から言っていますし、提案しているわけですが。
飯田)自由民主党総裁に対して申し入れを文書でやったり、直接対面でやっていらっしゃいます。
青山)安倍さんが総理のときに言ったら、「これは国会マターですよね。俺ではないよね」と言われたと思うのですが、岸田総理はそうおっしゃらずに、「茂木幹事長に伝えます」ということでした。幹事長、国対委員長間での調整を党の方で頑張るしかないです。
武蔵野市で外国籍の住民投票条例案が委員会で可決
東京都武蔵野市議会は12月13日、総務委員会を開き、日本人と外国人を区別せずに投票権を認める同市の住民投票条例案を可決した。これにより、同条例は21日の本会議で採決される。賛成多数で成立すれば、同様の条例は神奈川県逗子市と大阪府豊中市に続き、全国で3例目となる。
飯田)武蔵野市で外国籍の住民投票条例案が委員会で可決されたということです。青山さんは「日本の尊厳と国益を護る会」の代表を務めていらっしゃいますが、この問題についても、メディアに対して会見を行っています。ご自身も武蔵野市に入り、住民の皆さんに向けて問題提起もされていらっしゃいました。
青山)民主主義ですから、市議会の動きに影響はしています。「委員会で可決」ということが大きく報道されていますが、ここまでは予想通りというか、こうならざるを得ない。ただ、本会議がこのあと待っています。本会議では可決の可能性もありますが、否決の可能性もあります。
骨子案、素案の際、意見交換会に出席した市民は合わせて13人 ~13人で市民の意見を聞いたことになるのか
飯田)武蔵野市の松下市長が現在、開会中の市議会に提出した今回の条例案ですが、投票資格は「3ヵ月以上、市内に住所がある18歳以上」ということです。外国籍の住民も3ヵ月以上、武蔵野市に住んでいれば、あるいは住民票がそこにあれば、日本国籍の住民と同じ条件で参加できるということになっている。
青山)いろいろな意味で奇妙なのですが、手続きと内容、それぞれに問題と課題があるのです。手続きで言うと、武蔵野市は14万8000人の人口がいるのですが、最初に骨子案が出て来て、市民に意見を聞く会を開いたときに、お見えになった市民の方は3人です。
飯田)たったの3人。
青山)14万8000人の市で3人。なぜかと言うと、私はあえて武漢熱と呼んでいますが、新型コロナの感染拡大が酷いときで、多くの方がお出になれなかったのです。そのあと素案が出て来て、骨子が素案になったのですが、そのとき出て来られた市民の方は、意見交換会で10人。先ほどの人数と合わせて13人です。それで「15万人近い人口の市民からきちんと意見を聞いた」とはとても言えないでしょう。
飯田)言えませんね。
青山)市民の意見を聞かずに住民投票のあり方を決めてしまうというのは、奇怪な話だし、武蔵野市や市長をはじめ、強調なさっているのが、「市民にアンケート調査を実施したのだ」ということです。
3月に実施したアンケートの回答者は509人 ~7割以上が賛成だが
青山)そこで「7割以上が賛成した」とおっしゃっているけれど、このアンケートも対象が2000人なのです。回答なさった方は509人ですから、回答率としても低いし、町の大きさから比べてあまりにも小さい、少数の意見で決めようとする。しかも、今年(2021年)3月ですから、そのころに住民投票の中身をしっかり理解していた人がどのくらいいるかということです。
飯田)回答したのは509人。
青山)手続きとして、そこで「差し戻す」ということは極端な話ではなく、じっくり市民と話し合うべきですよね。これは地方自治なので、国政にある私たちが過剰に介入するようなことは謹んでいるのですけれど、同時に、これは国政にも影響します。それが内容の部分です。
常設型での住民投票 ~安全保障など、何でもテーマにできる
青山)通常の住民投票は、例えば「ゴミ処理場をつくります」、または「大きなプールをつくります」というテーマごとに住民投票をやるのですが、この場合、武蔵野市が用意しているのは「常設型」なのです。ずっと住民投票できる。何でもテーマになる。安全保障など、まさしく国政の問題についても住民投票できるのです。
3ヵ月住んでいる外国人に同等の権利があるということは不自然 ~国民国家の否定につながる
青山)国政に関する住民投票は、実は1つしかありません。憲法改正しかないですよね。それを補う意味もあって、地方自治では、住民投票が自治体の考えでできるようになっているのです。ということは、行政に影響するということですね。
飯田)影響します。
青山)さらに国政に影響するということは、普通の日本国民と、たった3ヵ月お住まいになっている外国人が同等となれば、事実上、国民国家の否定につながって行きます。この問題を皆さんと一緒に考えたいのです。
3ヵ月でいいということは旅行者でもいいということ
青山)国民国家というのは、外国人の方の人権も保障して、人間として等しく扱うというのはもちろんのことです。ただし、あくまで主権者である国民によって成り立つのが国民国家ですから、それが3ヵ月いればいいというのは、旅行者でもいいということです。
飯田)そうなります。
青山)「日本の尊厳と国益を護る会」は衆参両院議員が71人いるのですが、山本左近さんという、元F1ドライバーの方が当選して新たに入って来られました。彼が護る会の総会で、「自分はF1ドライバーのときに、3ヵ月くらいは普通に外国にいました」と。スキーのワールドカップなどもそうですが、「それで住民と同じ扱いというのは、世界中の誰が考えてもおかしいのではないでしょうか」と言っていました。
国の主人公は誰なのか
青山)要するに、留学や旅行の範疇ですよね。実際に武蔵野市ですと、「留学生もOK」ということになっていますから、簡単に言うと何でもありで、「いったい国の主人公は誰なのか」ということです。これは非常に根深い問題を含んでいて、敗戦後の日本の歩みが、76年かけて「国民国家はいらない」とか、「国民国家はない方がいい」という方向に流れているのではないかという気配も感じます。
成立すれば全国に影響が出る
青山)私も国会議員になる前は世界を歩いて来ました。議員になってからも、感染症が始まるまでは世界に行っていましたけれど、海外では逆に、国民国家の熱が上がっているのです。ボーダレスになり、通信交通の発達で国境がなくなって来て、「私はいったい何者なのか。最後に自分を守ってくれるのは何か」ということを考えるようになっています。だから国民国家の意味がとてもはっきりして、世界のどこへ行っても、みんなかつてより国民国家を大事にしているわけです。
飯田)かつてより。
青山)そのなかで、日本だけが逆を行っている。外国の方々の人権を大事にするから、世界と合わせているということではなく、逆に日本だけ違う方向に行っているということも感じます。これが成立すれば、東京の武蔵野市だけではなく、全国に必ず影響して来ると思います。
飯田)しかも常設型のものです。自治体によっては、住民投票に関する条例を別途つくり、住民投票をやるというところもありますが、「手を挙げれば何でも住民投票」ということになってしまうのですか?
青山)外国の方々の考えによっては、十分可能です。ハードルが極端に低いわけです。もう一度言いますが、日本国民ではなく、3ヵ月いたら外国人でも日本の自治や国政を左右できるというのは、誰が考えてもおかしいでしょう。
多くの市民の意見を聞いて決めるべき
飯田)一連のプロセスも不透明であるし。
青山)手続きと内容、両方に問題があります。いったん市民のなかに戻し、感染症が改善したあとで、多くの方の意見も聞かなければいけない。また、来られない人のためにアンケートを取るならば、もっと範囲を広げて、人数を増やさないと意味がありません。「少数で決めない」というのが民主主義の「いろは」の「い」ですから。多様性を主張する方々が少数で決めるというのが不思議です。最後の砦が市議会であって、そこではきちんと少数意見も汲みながら、最終的には本会議で対応するということになります。
飯田)多様性に関する議論は、どこか結論ありきのような、反対派をどんどん糾弾して行く傾向があります。アメリカでは「キャンセル・カルチャー」と呼ばれますが、世界中の自由な民主主義のある国で、宿痾のような形になってしまっているのでしょうか?
青山)多様性を追求するために、議論を封じる問題が出て来ているでしょう。
飯田)日本でもその兆候がある。
青山)ものを言ったら唇寒しで、多様性と言われたら「はい、わかりました」と言わなければいけない。
飯田)「すばらしい」と言わなければいけない。
青山)私が例えばアメリカの街に3ヵ月仕事でいて、「住民投票に参加してください」と言われたら、「それは奇妙な話ではないですか」と言います。もしここで私がアメリカの政治に参画したいのであれば、アメリカの国籍を得て、文化や人々を理解しなければいけないと答えるでしょう。どこから見ても「そうですか。わかりました。いい条例ですね」とは言えないので、ぜひもう一度議論をやり直していただきたいです。
補正予算案 ~自民・公明などの賛成多数で衆議院可決へ
与野党は12月14日の衆議院議員運営委員会理事会で、2021年度の補正予算案について、15日の衆院本会議で採決することで合意した。予算案は自民・公明両党などの賛成多数で可決され、15日中に参議院に送付される見通しだ。
飯田)参議院の予算委員会、基本的な質疑は16日と17日に行われる見通しとなっております。10万円の話もありましたが、その辺りが議論のメインのようになっています。青山さんはどうご覧になりましたか?
青山)10万円の問題で政府・与党が混乱したのは事実で、総理もお詫びをされていますが、補正予算はもちろん、それだけの話ではありません。補正予算というものの意味がすっかり変わってしまっていることを主権者、国民に改めて理解していただきたいのです。
補正予算の意味が変わって来た ~当初予算は基本給で補正予算はボーナスのようなもの
青山)いま国会で、私も含めて何をやっているかというと、予算委員会だけではなく、補正予算と来年度の当初予算を同時進行でやっているのです。つまり、補正は普通に考えると、今年度。「今年度の予算で足りない部分があるから補正します」と、「継ぎ足します」と言うはずでしょう。これが既に違うのです。
飯田)違う。
青山)新年度の予算にあらかじめ乗せるのです。意味が変わっていて、当初予算という普通の予算が、いわばずっとやる恒久的なものというか、給料で言うと基本給のようなものです。補正予算の方は、「そのときどきのタイムリーなものをやる」というように、意味が変わっているのです。10万円給付も含めて、補正予算は当然、新しい令和4年度の感染症を含め、「日本経済はどうなるか」ということを予想して、いま乗せて行く。そのための審議です。だから納税者、主権者もそのように、よかれ悪しかれ考え方が変わってしまっているということに気を付けた方がいいと思います。
飯田)なるほど。
青山)野党からは、「当初予算でやるべきではないか」と批判が強く、国会でもよく質問が出るのですが、私はけっこう使いやすいなと思っています。基本になるものを当初予算でやるけれども、例えば防衛省の装備でも、極超音速というとんでもないミサイルが出て来ました。14日も防衛省で議論したのですが、自衛隊は本気であれを撃ち落とせると思っているのです。
飯田)極超音速ミサイルを。
青山)世界ではむしろ、撃ち落とせないのが常識なのですが、自衛隊は「やりますよ」と。その撃ち落とすための装備を補正でやりたい。そうすると財務省も、会社の経営者と同じで、基本給を上げるのは非常に抵抗があるけれど、ボーナスだったら出すではないですか。
飯田)ボーナスであれば。
青山)私も小さなシンクタンクの社長をやっていましたが、ボーナスでみんなの努力に応えたい。その方が会社経営としては安定します。財務省も同じで、補正で「とりあえずこれをやりましょう」という提案は受けやすいのです。だから、見かけより実際は使い勝手がいいのではないかと思っています。
消費減税も考えるべき ~日本だけデフレが終わらず取り残される可能性も
青山)アメリカは極端ですが、世界はインフレに向かっています。しかし、日本だけが取り残されてデフレが終わらない恐れがあるのです。これは消費増税の影響が非常に大きい。例えば、アメリカ人が消費税にあたるものを引き上げられた場合と、日本の場合では、日本人は真面目に受け取るから、消費を控えるのです。
飯田)日本の場合は。
青山)その影響で世界がインフレになって行く、つまりデフレが終わるのに、日本だけ終わらないという心配があるので、私は消費減税も考えるべきだと思います。補正予算の審議であれ、来年(2022年)の通常国会がすぐ始まって、本予算の審議になった際には、消費減税の問題も与野党問わず議論するべきです。
日本に足りないのは財政出動 ~消費減税だけではなく
飯田)そこで、いまおっしゃった補正予算の使い勝手のよさがあると、コロナ禍の影響が出ているため、時限的でもやろうとして持って行くことも可能になるわけですか?
青山)どの問題でも、いい面と悪い面の両方があります。何でも補正でやればいいから、当初予算は抑えたかのように見せて、本当はものすごく膨らむということもあるわけです。
飯田)抑えたかのように見せて。
青山)ただし、予算が膨らむのが悪いことだと財務省は常に匂わせていますし、メディアもそうです。でも本当は財政出動をしないから、日本はそれが足りずにデフレが終わらないのです。消費減税だけをやればいいというわけではなく、すべて合わせて財政出動が必要です。日本にはそれが足りません。