夫婦でシネマ

夫婦で見た映画と、個別に見た映画について感想をかいてます。全て映画館で見た映画で、ミニシアター系の映画をたくさん紹介!

ミス・ポター

2007年11月22日 | ま行の映画
Story
ヴィクトリア朝の封建的な空気が残る1902年のロンドン。上流階級の家庭に育ったビアトリクス(レニー・ゼルウィガー)は、子供の頃からの夢であった絵本を出版しようとしていていた。主人公は、青い上着を着た愛らしいうさぎ、ピーター。新人編集者、ノーマン(ユアン・マクレガー)はビアトリクスの絵に魅了され、二人で制作した絵本はたちまちイギリス中に知られるようになった。いつしか愛し合うようになる二人だったが、ビアトリクスの両親は身分違いの結婚を許さなかった。(goo映画より)
2006年/アメリカ/クリス・ヌーナン監督作品





評価 ★★★★★

『ベイブ』のクリス・ヌーナン監督が描く、温かな優しい気持ちになる映画。

この映画は上映時間が90分と短いですが、無駄なシーンが一切なく、ストーリーの運び方も見事で、とても見応えのある素晴らしい作品でした。それぞれの役柄を演じる役者たちの雰囲気もぴったりで、特にポターを演じたレニー・ゼルウィガーは、彼女以外のキャスティングは考えられないくらい、ポターそのものといった感じで好演していました。彼女の持つ優しい雰囲気が、ピーターラビットのほのぼのとした世界観とマッチしていて、絵本作家という職業にぴったりなんですよね。当初は、ポター役にケイト・ブランシェットを起用するという話もあったそうですが、レニー・ゼルウィガーで正解だったと思います。

ピーターラビットの絵本はとても有名ですが、その作者のポターという女性がどんな人物なのか、この映画を観るまで私はまったく知りませんでした。
この時代のイギリスはまだ封建的な空気が漂っていて、女性が職業を持つなんて考えられなかった時代に、ポターは、絵本という自分の好きな世界で身を立てて行こうと考えた人なんですよね。しかも上流階級の家庭で育った女性なので、普通だったら結婚という選択肢しかありえなかったのに、結婚に妥協せず、また、絵本という自分の夢も諦めなかったところにとても好感が持てました。彼女と同じ上流階級の人と結婚してほしいという両親からの度重なる圧力にも屈せずに、自分の本当にやりたいことを自分の力で貫き通したポターは、今の時代にも通じるとても格好いいヒロインだなと思います。

私が印象に残ったシーンは、クリスマスのパーティの夜、ポターが編集者のノーマンからプロポーズされるのですが、自室でオルゴールを聴きながら、思いもかけない幸せにポターが嬉しくてうっとりするシーンです。おそらく、このパーティでの夜がポターにとって人生でいちばん幸せな夜で、この後迎える哀しい結末が、幸せに浸るポターをより一層盛り上げる効果を引き出します。絵本の仕事も順調で、やっと、女性としての幸せも手に入れたはずだったのに、つかの間の幸せに浸るポターがなんだか余計に物悲しく思えて、強く心に残ったシーンでした。

また、最初の絵本を出版するにあたって、ノーマンがポターを印刷所へ案内したシーンもとても印象に残っています。普通なら作者本人を印刷所へ連れて行くなんて、あの時代では考えられないことなのに、実際に印刷された絵本の色味を、作者自身に確認してほしいというノーマンのアイデアは素晴らしいなと思いました。絵本の色味が濃いか薄いかによって、その絵本の雰囲気が全然違ってきますよね。作者の持つイメージを尊重しようとしたノーマンは、新人編集者とは思えない、素晴らしい編集者だったんだな、と窺わせるようなシーンでした。こういう編集者だったからこそ、ポターがノーマンを好きになった理由が分かるような気がしますね。

私も小さい頃からピーターラビットが大好きで、絵本やグッズなど色々持っていますが、彼女の半生を知った後は、以前よりずっと愛着を感じるようになりました。





評価 ★★★★★

ビアトリクス・ポターの半生を手堅くまとめた一編です。

ポターとノーマンが互いに恋心を抱いて行く過程がごく自然に描かれていて、とても好感が持てました。
あの時代の汽車と馬車がドラマを盛り上げる上で効果的に使われていて、駅から発とうとする汽車のホームでのラブシーンなど、情感溢れる場面になっていました。

ポターの父親が画家を志望して果たせなかったこともあって、ポターの絵の才能を認めてサポートしたことも大きな支えになっていたのですが、一方で、身分違いの結婚には反対してしまいます。話の分かりそうな人でも、その時代の壁というか、理解できる限界があるんだなと思いました。結局、婚約は公表せずに一定期間を湖水地方で過ごした後に心変わりしていなければ結婚を許す、ということで折り合いがつけられたのですが、結局これが彼女にとても辛い結末をもたらします。

印象的だったのは、ポターが亡くなったノーマンの家を訪れるシーン。ここで、彼女とノーマンが婚約した事実を知っているのはノーマンの姉のミリーだけで、ノーマンの兄弟達は彼女にとっての単なる一編集者が亡くなっただけと思っているわけですね。事務的に今後のフォローについて語るだけの兄弟。本当の哀しみを誰も分かってくれないというポターの孤独感が迫ってきました。’秘密の婚約’というプロットが活かされた秀逸な場面だと思います。ノーマンが好青年として描かれているだけに、フッと消えてしまった儚さがよりいっそう喪失感を強めていました。

終幕では、湖水地方に暮らすポターが農地を守るために奮闘する姿が描かれています。彼女の自然への愛情が愛すべきキャラクター達を生み出す原動力になっていたんですね。


映画『ミス・ポター』公式サイト


(「ミス・ポター」2007年9月 長野にて鑑賞)

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6 コメント

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こんばんは! (kira)
2007-11-23 20:15:19
優しくて、ロマンティックで、
期待していなかった分とっても得した気分になりました~☆
ユアンの歌で二人が踊るシーン、微笑ましかったです
この二人を引き合わせ、ポターを絵本作家として成功させ、
湖水地方を護らせる。。。
ある意味、ポターは神に選ばれし女性だったのだという気がしました。
いい作品でしたね~
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そうそう! (miyu)
2007-11-24 21:30:03
プロポーズのシーンも良かったんですよね!
あたしはあの後のポターが「YES」だけ
言いに行くところも好きでした♪
地味だけど良質なイギリス映画って感じで
良かったですね~♪
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Unknown (ケント)
2007-11-25 10:23:12
nyancoさんこんにちは
コメントありがとう
レニー・ゼルウィガーは今年もアカデミー候補になりそうですね。
決して美人じゃないけれど、演技力は素晴らしいですね。
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こんにちは (Any)
2007-11-25 10:49:47
wancoさん、nyancoさん、こんにちは♪
わぁ~ 五つ★ですね!!

私も彼女の半生を知ったことで、ますますピーターラビットに愛着を感じています。
柔らかな余韻とともに強さも感じ取れる素敵な作品でしたね。
そしてこの映画、ファーストシーンもかなり好きです!
使い込まれたパレットにのせる青い絵の具や、
絵筆を洗うシーンで、既に心は奪われました。
何せ影響されやすい質なので、鑑賞後は
“大人の塗り絵/ピーターラビットシリーズ”を購入(笑)
DVDにはどんな特典映像が入るのかなぁ~
楽しみに待ちたいと思います。
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こんばんは! (アイマック)
2007-11-28 23:55:33
お二人とも五つ星ですね!
私もこの映画には癒されたし、見応えありました。
ポター役のレニー・ゼルウィガーがよかったですねえ。

エンディングの歌は、二人のダンスシーンと重なって涙、涙。。
ノーマンがポターを印刷所まで連れていったのはびっくり!
彼が彼女をアーティストとして、尊敬、信頼してた証ですね。
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コメントどうも! (nyanco)
2007-12-06 19:04:21
遅くなりましたが、コメントどうもありがとうございました♪

>kiraさんへ
私もユアンの歌で二人が踊るシーンは、なんだかジーンとして良かったです~。
本当に、絵本作家になって、そして湖水地方の農地を護ったポターは、運命的なもので導かれていたのかもしれませんね。

>miyuさんへ
ノーマンのプロポーズを感じ取って、ポターが「YES」とだけ言うシーンはとても素敵でしたね♪
期待していなかったせいか、思った以上に良い作品でした!

>ケントさんへ
こちらこそ、コメントありがとうございます!
この映画のレニー・ゼルウィガーも良かったですね。
アカデミー候補になりそうな素晴らしい演技でした。


>Anyさんへ
そうなんです!二人で☆5つというのは珍しいんですが、それだけ気に入った作品なんですね~。
本当にあのファースト・シーンは優しい雰囲気でとても良かったです!
これから始まる映画の全体像が伝わった感じで、最後まで映画に釘付けになりました♪
“大人の塗り絵/ピーターラビットシリーズ”はどうでした?
こういう映画を観ると、なんとなく色を塗ったり、絵が描きたくなる気持ち分かりますよー。^^
DVDの特典映像も楽しみですね。

>アイマックさんへ
私もこの映画には癒されました~。
この映画は優しさと強さが同居している感じで、やっぱり、ポター役のレニー・ゼルウィガーがとても良かったです!
私も以前、DTPをやっていたせいか、印刷所のシーンはとても共感してしまいましたね。^^;
やっぱり、クリエイターにとって、印刷の色味はとても重要だよなぁ、と改めて考えさせられてしまいました。
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