夫婦でシネマ

夫婦で見た映画と、個別に見た映画について感想をかいてます。全て映画館で見た映画で、ミニシアター系の映画をたくさん紹介!

マルタのやさしい刺繍

2009年04月04日 | ま行の映画
Story
スイスの小さな村に住む80歳のマルタ(シュテファニー・グラーザー)は、9ヶ月前に夫に先立たれて以来鬱々とした日々を送り、自分も早く夫のもとへ行きたいと願うようになっていた。ある日、昔得意だった裁縫仕事を依頼され、眠っていた創作意欲に火がつくまでは。若い頃、マルタは手刺繍のランジェリーの店を開くことを夢見ていたのだ。早速、親友リジー( ハイジ=マリア・グレスナー)の手を借りて開店準備を進めるが、村人はハレンチな下着の店に眉をひそめるのだった。(goo映画より)
2006年/スイス/ベティナ・オベルリ監督作品





評価 ★★★★★

2007年度 アカデミー外国語映画賞 スイス代表作品!

下着のお店をオープンしたいという昔の夢を、80歳になって実現させたというのがすごい。マルタを演じたシュテファニー・グラーザーは、撮影当時86歳だったとは思えないくらい、姿勢が良くて若々しい魅力的な女性でした。この映画を観た女性は、誰もが年をとったらこんな素敵なお婆ちゃんになりたいと思うでしょうね。
この映画に登場する4人の女性の生き方が、4人4様で面白かったです。女性は彼女たちのそれぞれの生き方を見て、自分たちの老後を考えさせられるのではないか、なんて考えたりしました。

その反対に、彼女たちの息子や旦那さん・男性陣がこの映画ではとても情けないこと!保守的な村のなかで、進歩的な生き方をしようとする女性たちと比べて、男性たちはいつまでも古い価値観に縛られて、新しいものを受けつけられないでいるように思えました。進歩的なものと保守的なものの対立って、どこの国でも同じような悩みがあるのですね。

この映画を観て、86歳まで一人暮らしをしていた母方の祖母を思い出したのですが、やはり、自分のことは自分で出来る、人に頼らず生きることのできる人って、本当に格好いいですね。友達にも恵まれ、自分のやりたいことを持っていた祖母は、実に活き活きとしていたのを思い出します。

最初、この映画はテレビドラマ用に制作されたそうですが、映画として拡大公開されたのが頷けるくらい、とてもクオリティの高い作品でした。
女性監督らしい細やかな演出も楽しめるし、また、スイスのこの地方の文化、刺繍が盛んなこと、美味しそうな肉料理やアップル・パイなども数々登場するので、その辺りも合わせて楽しめる素敵な作品です。





評価 ★★★★

刺繍するならハンカチやスカーフにすれば良いのに、なぜわざわざ下着の設定にしたのか?
それは、下着は心に秘めた物事の象徴で、それゆえに、あからさまにされると、人は様々な反応を示すためだと思います。これは一種の心のリトマス試験紙ですね。
確かに、保守的な村では多くの人がマルタのランジェリーショップに嫌悪感を露にします。唯一親友のリージだけは理解を示します。それは、彼女が過去の出来事を悔いてなくてむしろ誇りにしているから。しかし、そんな彼女の過去にも実は隠された秘密があったということが明らかにされるのですが。そのリージは物語の途中で急死してしまうわけですが、それが却って彼女のレガシーが引き継がれたような後半の展開を盛り上げるアクセントになっています。

マルタの息子で牧師のヴァルターは、職業柄というよりも浮気している自分への後ろめたさで、マルタにつらく当たっているように窺えます。そんな彼がついに、既に気持ちが離れてしまっている本当の気持ちを妻に告げます。ヴァルターがマルタが作ったフリルだらけの合唱団の旗を掲げる所は彼の心境の変化を現す象徴的なシーンとなっています。(とは言え、牧師が浮気というのは褒められた行為じゃないですけどね。)

マルタを取り巻く人々のサイドストーリーも良く描かれていて、自分の気持ちに素直に生きよう、というメッセージが伝わってくる爽やかな感動を残す秀作に仕上がっています。


映画『マルタのやさしい刺繍』公式サイト


(「マルタのやさしい刺繍」2009年2月 塩尻東座にて鑑賞)

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