夫婦でシネマ

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ロスト・キング 500年越しの運命

2023年11月13日 | ら行の映画
Story
フィリッパ・ラングレー(サリー・ホーキンス)は職場で上司に理不尽な評価を受けるも、別居中の夫からは生活費の為に仕事を続けるよう促され、苦悩 の日々を過ごしていた。ある日、息子の付き添いでシェイクスピアの「リチャード三世」を観劇したことで、彼女の人生は一変。悪名高き王・リチャード三世も自分と同じように不当な扱いを受けてきたのではないかと疑問を抱いたフィリッパは、彼の真の姿を探し求め、歴史研究に没頭していく――。(Filmarksより)
2022年/イギリス/スティーヴン・フリアーズ監督作品




評価 ★★★★

映画の出だしの家庭や職場でのゴタゴタシーンはよくある話なので、やれやれまたかという感じで観ていたのですが、ひょんなことからフィリッパがリチャード三世に興味を持って彼の遺骨の探索に乗り出してからは、歴史ミステリーの色彩が強くなり、俄然面白くなってきます。

なぜそんなにリチャード三世に執着するのかというと、最初の方で職場で正当に評価されないフィリッパを丹念に描いているので、シェークスピアの戯曲の影響もあって悪者のイメージを植え付けられたリチャード三世に自分の境遇を投影したためだと思わせる説得力があります。

リチャード三世の研究会みたいな連中がパブに集まったりしてるのも英国事情を知れて面白い。その彼らの情報網から得られた断片的な事実をつなぎ合わせて、ついにリチャード三世の墓所を特定するところはよくできたサスペンス映画を見てる感じです。
発掘するためには資金がいるということで、市議会や大学を巻き込んだりしますが、日和見的な彼らとの対立もよく描けていて、ワルに徹しきれない大学教授を演じたマーク・アディや、最後に力になってくれる別居中の夫を演じたスティーブ・クーガンも好演。

演じるサリー・ホーキンスの弱々しいとさえ言えるような押さえた演技と内に秘めた意思の強さが程よいコントラストを出してました。彼女の前にリチャード三世の幻影が現れるところは、これが彼女の神経性の持病のせいなのかと思わせたりもしますが、死地に赴くリチャード三世をフィリッパが見送るところは、儚くも美しいシーンになってます。







評価 ★★★★

詳しいことはwancoが書いているので割愛しますが、この物語が1人の女性のふとした疑問からリチャード三世の名誉回復のために彼の遺骨探しという一大プロジェクトにまで発展した実話だというから本当に驚きです。
リチャード三世はシェークスピアで描かれているような本当に悪人だったのか?史実で伝えられている彼は本当なのか?ふとした疑問をそのままにせず、フィリッパのように(実話の女性も同じ名前)真実にたどりつくまでとことん調べるのはとても大切だと感じました。

ただ、この映画のフィリッパは家事も育児も仕事も全て放り出して、リチャード三世の調査に乗り出してしまうので、彼女の行動は同じ女性として感心できないですが、公私共にうまくいっていない彼女にとって、リチャード三世の名誉を回復することが彼女自身も正当に評価してもらうことに繋がったのかなと思いました。

別居中の旦那さんの立場からすると普通だったらこんな奥さんを理解できないはずなのに、最終的には彼女のやりたいことを見守って、家事も育児も一手に引き受けて応援してくれるところがすごいです。彼のおかげもあったからリチャード三世の遺骨探しという大変なプロジェクトをやってのけることができたんですよね。

とても意外な場所からリチャード三世の遺骨を発見するシーンは、フィリッパの緊張も伝わってものすごく興奮しました。
このニュースは世界中で大きく報道されるんですが、フィリッパが第一発見者ではなく、彼女に協力して資金提供をしていた大学の教授やスタッフたちに手柄を横取りされてしまいます。本当ならとても悔しいはずなのに、自分の名声よりも、リチャード三世の遺骨を通して真実の姿をもう一度検証してもらうことに重きを置いたフィリッパは素晴らしい人だなと感じました。



映画『ロスト・キング 500年越しの運命』公式サイト


(「ロスト・キング 500年越しの運命」2023年 9月 kino cinéma立川髙島屋S.C.館 にて鑑賞。)

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