「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」
2014年 アメリカ
監督 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
出演 マイケル・キートン エドワード・ノートン
映画館(字幕) T13H7
めらめら度★★★★☆
それほど興味なかったが、かのアカデミー作品賞を受賞して話題になっていたので、一応、押さえておくことにした。監督は、トリッキーな演出と、鬱陶しい喪失感と、長い名前でお馴染みのアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ。主演は、名前を知っているのに出演作を観た覚えがないベテラン俳優のマイケル・キートン。初代コウモリ男として有名だけど、「バットマン」シリーズを1つも観てないんだよねェ。
ヒーロー映画の主役、バードマンとして活躍した俳優の物語。年を取り、すっかり落ちぶれてしまったリーガンは、舞台に進出して起死回生を図る。しかし、ハリウッドの落ち武者にブロードウェイは冷たかった。追い詰められて心を病み、自分の中にバードマンという別人格が生まれ…。元バードマンを元バットマンが演じるなんて、随分と露骨なキャスティングだ。メリケン映画界への風刺が強烈である。
マイケル・キートンがリーガン役を演じ、リーガンが舞台で自殺者を演じ、妄想から生まれたバードマンがリーガンを苛める。現実と映画と劇中劇と妄想がメタっぽく重なって、なんとも不思議な感覚の映画だった。実在のハリウッド俳優の名前もチラホラと出てきて、更に虚々実々。そして、その不思議さを際立させているのが長回しのワンカット映像だ。CGを駆使し、ほぼ全編、カットなしで展開する。
予備知識を殆ど持たずに鑑賞したので、長回し演出に気が付いてからは、そのことにばかり意識が行ってしまった。勿論、CGでシーンを繋いでいるんだけど、それにしても凄い構成と計算だ。扉を通り抜けると時空を飛んで物語が展開し、今日から明日へ、劇場から自宅へと切り替わる。この長回しのワンカット映像が、より物語を混沌とさせている。この監督は、とことんトリッキーな演出が好きらしい。
「21グラム」は、時間軸をバラバラにして、物語を複雑に交差させた演出だった。結構、面白かったけど、面棟Lい映画という印象が強い。「バベル」は、時間軸に加えて登場人物と国までバラバラ。日本人が出演して話題になっていたけど、正直、退屈な映画だった。今回の長回し演出も、最初は、ちょっと煩わしかったなァ。しかし、徐々に不思議な感覚が高まって、ガンガンに引き込まれてしまった。
なにより素晴らしいのは、この映画がコメディであることだ。役に心を浸食されていく展開は、なんとなく「ブラック・スワン」に似ているんだけど、本質が全く違うんだよねェ。虚々実々のメタ構造も、長回しのワンカット映像も、全てはシュールなギャグの前フリのようだ。声をあげて笑う映画ではないが、他人の夢を覗き見しているような面白さがあった。オスカー像の導きってヤツは、伊達じゃないらしい。
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