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関心領域

2024-07-07 15:02:12 | 活弁見聞録

ズレ:「アウシュヴィッツ絶滅収容所と塀一つ隔てて優雅な生活が営まれてるのは作劇上のフィクションかと思いきや史実通りだそうで、そうと分かれば勤務公署に施設長の官舎が隣接してるのは格別不思議でもないだけに業務目標を粛々と履行する実務者側からのホロコーストの描写にますます慄然とするばかりでぃ。

 収容所内の出来事は一切登場しないものの冒頭から不安を掻き立てる画作りに瀟洒な邸宅生活シーンにはずっと流れてる収容所側の剣呑な音声がBGMになってて、何が起こったかは先刻承知の観衆にとっちゃ主人公側の満ち足りた日常の破綻が訪れる予感でハラハラするホラー映画の趣も漂ってるぜ。

 事後には明白な理不尽でも渦中にあっては鬼畜の所業だろうと組織立った公務の感覚で実績を挙げつつ何の危機感もなく平穏な市民生活を送れる人間性の闇が事実として浮かび上がってくるだけに、けしてアウシュヴィッツに限った話でなく当時は被害者だったユダヤがイスラエルとなった今は加害者になってるガザの惨禍も同じ構図じゃなかろうかと考えさせられるわな」

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ボブ・マーリー:ONE LOVE

2024-06-07 17:38:00 | 活弁見聞録

つれ:「音楽家の伝記ものも映画の定番ネタながらこの作品はバイオグラフィーとしてのスパンは短く、既にミュージシャンとして名を成したマーリーさんがジャマイカを出てからアルバムが大ヒットしてジャマイカに戻るまでを濃密に描いてるねぇ。

 歌詞の内容を吟味せずBGM的にレゲエを耳にしてた身としちゃ軽快なリズムに明るいメロディてぇ印象だけだったけど、本編で流れる数々の名曲には漏れなく字幕がついてその歌が生まれた背景がストーリーになってるから今更で汗顔の至りながらレゲエの深みを勉強させていただいたよ。

 レコードが普及して頻繁に放送で流れるようになって以降フォークからロックとスタイルは変遷しつつもアーティストの歌が政治状況にも影響したのはおそらくこの頃が最後で、無論今でも楽曲には思想が込められてるとしても圧倒的な商業ベースに呑み込まれて伝わりにくくなってるのかもしれないねぇ」

 

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オッペンハイマー

2024-05-07 21:09:23 | 活弁見聞録

ズレ:「アメリカじゃバーベンハイマーてな抱き合わせ上映だったのを本邦は原爆てぇテーマを慮って同時公開を見合わせた曰く付きの作品も、アカデミー賞に輝いたからには公開しない訳にはいかないってことかようやく日の目を見たのが何よりだわな。

 かねてドキュメンタリーで広く伝わるオッペンハイマー博士の業績行状のうち原爆開発に触れるのは当然ながらストーリーの中心は先端科学を借景にした政治的暗闘に置かれてる趣で、博士の心象風景に沿って時制が行き来する長尺の大作がモノクロの多用で一層重厚な雰囲気になってるんじゃねぇか。

 米国に原爆肯定論があるのは映画にも描かれてるけど否定論一色の本邦の視点とすりゃ原爆・情報漏洩・赤狩りと重苦しい題材ばかりだから、本来がその渋味を中和する甘味がバービーだとすりゃ日本でも抱き合わせ公開してればバービーの興行収入が伸びたかもしれねぇぜ」

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ARGYLLE/アーガイル

2024-04-08 20:10:09 | 活弁見聞録

つれ:「映画館まで足を運んでくるからには勿論キングスマンもお好きでしょてぇ前提で無論それ以上に盛り上がって貰いますとの同一制作陣の意欲がスクリーンに漲ってて、ストーリーとしてはキングスマンとは別物だけどティストはキングスマン調を踏襲してるから肩肘張らずに笑えるスパイアクション好みには心憎いばかりの作品だねぇ。

 と言ってキングスマンシリーズに馴染みのない方には何のことやらだろうけど当然キングスマンを知らなくても全く問題ない展開にアクションやクスグリが満載されてるから、先にこっちを観てこのノリがお気に入りなら後からキングスマンを観ると二度オイシイんじゃないかぃ。

 観る分にはオモロイ限りながらこの手の映画はネタバレが艶消しだからコメントするのは難しいところで、一流スパイは世界を騙すてぇ劇中の台詞どおり一流スパイコメディは観客をはぐらかすてな随所に施されてる細かい仕掛けを白紙の状態でお楽しみいただければ幸いだょ」

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ダム・マネー ウォール街を狙え!

2024-03-10 10:03:06 | 活弁見聞録

ズレ:「2020年に実際に起きた出来事の映画化だからコロナ禍もネタにしときましょうてなクスグリどころも心得てて、事実だからジョークとはいえないけど喜劇というにはシビアな視点も盛り込まれてるブラックコメディてな趣だわな。

 何より現代の世相を如実に反映してるのは株式投資の対象になってる会社がほとんど登場せずに個人小口投資家群と大口ヘッジファンドとの応酬だけでストーリーが成立するところで、生産活動とは遊離した資本の運動を如実に描き出してるんじゃねぇか。

 マルクス先生の頃は富を生み出す生産が資本主義には不可欠で搾取があろうと社会全体としては豊かになってったけど、生産とは関わりなく大資本が小資本を搾取して富を生み出すのが当世資本主義の主流だとすると社会全体の先行きに不安を覚えるばかりでぃ」

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2024-02-08 17:01:51 | 活弁見聞録

つれ:「スパスパ首が飛ぶてぇ前フリからして本能寺秀吉黒幕説ベースのアウトレージ戦国版ハードボイルドと当て込んでったところが、北野武監督作品というよりはビートたけし監督作品といった方がピッタリくるくらい存外に笑えるツボがテンコ盛りだったよ。

 落語の始祖と言われる曽呂利新左衛門を狂言回しに配したうえで居並ぶ侍口調の配下武将に対して信長は全編尾張言葉しか話さないって設定がお笑いチックだし、見終わってみると北野組とも言うべき達者な役者さんの実年齢に比して監督自身が秀吉役ってとこから既に出オチの大ボケだったかとしてやられて膝を打つようじゃないかぃ。

多分に監督の遊び心が感じられる作品ながら自らも出演した御法度や戦場のメリークリスマスを遺した大島渚監督へのオマージュらしき趣もあり、次回作はどうなるか分からないけど北野武監督ビートたけし主演作としては一つの集大成とも見えてくるねぇ」

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ナポレオン

2024-01-07 21:49:16 | 活弁見聞録

ズレ:「稀代の傑物として数多の映画に描かれてるナポレオンをリドリー・スコット監督がいま取り上げる意図は奈辺に有りやと興味が湧くところで、同監督史劇の傾向からして特定のエピソードを深掘りするのかもと勝手に予想してたから青年将校デビュー以降セントヘレナで没するまでがジョセフィーヌとの愛憎劇を軸にしたオーソドックスな通史に仕上がってたのには意表を衝かれた感じでぃ。

 長尺でもそれだけの期間を描くとなると個々の出来事について由来や因果の説明が少なくなるのは当然ながら歴史的に著名なトピックスはほぼ時系列どおりに網羅されてて、映画を見た後に改めてフランス革命以降の歴史をおさらいしたくなるって点じゃ世界史教育作品とも言えるわな。

 とはいえやはり白眉は黒澤明監督が予算の制約なく設楽原決戦を撮ったらこんな感じになったんじゃなかろうかと感嘆する圧巻のワーテルロー大スペクタクルで、次第に題材の時代が新しくなってる風なスコット史劇の今後の展開が楽しみだぜ」

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SISU/シス 不死身の男

2023-12-08 20:16:08 | 活弁見聞録

つれ:「荒涼とした風景のなか寡黙な主人公が狼藉を重ねる荒くれ者と対決する・・とくればまんまマカロニウェスタンの世界、とは言ってもアメリカやメキシコを舞台にした西部劇ながらイタリア界隈で撮影してたのとは違ってこちらの景色は紛う方無きフィンランドそのもの。

 フィンランドが舞台でナチスドイツとの抗争となると時節柄ウクライナ戦争との暗喩もあるのかと思いきやそんな堅苦しさは微塵もないアクションに徹してて、フィンランド映画ながら台詞はほとんど英語ってとこにも世界市場を意識して娯楽に徹した作品てのが窺えるよねぇ。

 世知辛い世の中だけにウクライナ戦争に続いてガザ紛争も深刻化するなかで戦争娯楽作はいかがなものかてな声が上がるかもしれないけれど、戦車や飛行機はリアルな再現でなく有り物を流用したようなアバウトさも含めてツッコミどころ満載のヒーローもの時代劇として楽しんでいただきたいもんだょ」

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バッドランズ

2023-11-07 16:05:16 | 活弁見聞録

ズレ:「原作モノだけに特殊詐欺の内幕が克明に描かれるストレートなフィルムノワールで、過激なアクションは少なくとも前半のドキュメンタリータッチが伏線となって後半のサスペンスタッチを盛り上げる構成が息をもつかせぬ緊張感を醸してるわな。

 ダークな題材や登場人物の設定がリアルだからこそともすれば陰鬱な気分になりそうなところながら、それを救ってるのがキャスティングの妙味で思い掛けない役者さんが思い掛けないチョイ役的に登場するのがいい塩梅のアソビになってるんじゃねぇか。

 あくまでフィクションとはいえ匿名・流動的なトクリュウ犯罪が蔓延してる昨今は現実の社会でもそのまま展開してそうなストーリーには、暗黒渡世とは縁が無い身の上でもすぐそこに現存してる脅威として慄然とするばかりでぃ」

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グランツーリスモ

2023-10-07 21:13:09 | 活弁見聞録

つれ:「高精度レースシミュレータのゲーマーが実車レーサーになった実話の映画化で日本製のゲームに日本車でのレースだから画面のそこかしこに日本感が溢れるものの、あくまで洋画だから日本語のシーンが何となくぎこちなく感じられるところはゲーム風と言えばゲーム風なご愛嬌かもよ。

 タイトルからしてゲーム部分に比重を置いたストーリーかと思いきや実車レーサーとして活躍するまでの過程をメインに据えた辺りはトップガンに愛と青春の旅立ちをミックスしたレース版の趣で、さらには家族愛の賛歌まで盛り込まれるとゲームやレースに興味がなくても見応えのあるオーソドックスな本格派青春ドラマの一丁上がりだょ。

 ゲームやレースに負けず劣らずの新鋭技術を駆使してるだけにドラマを抜きにしても盛り上がれるほどレースシーンの迫力も特筆ものだから、遠隔操作のドローンで戦争する時代ならゲーマーからレーサーになっても不思議はないとはいえそう一筋縄にはいかないてぇリアルなシビアさがヒシヒシと伝わるんじゃないかぃ」

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