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バッドランズ

2023-11-07 16:05:16 | 活弁見聞録

ズレ:「原作モノだけに特殊詐欺の内幕が克明に描かれるストレートなフィルムノワールで、過激なアクションは少なくとも前半のドキュメンタリータッチが伏線となって後半のサスペンスタッチを盛り上げる構成が息をもつかせぬ緊張感を醸してるわな。

 ダークな題材や登場人物の設定がリアルだからこそともすれば陰鬱な気分になりそうなところながら、それを救ってるのがキャスティングの妙味で思い掛けない役者さんが思い掛けないチョイ役的に登場するのがいい塩梅のアソビになってるんじゃねぇか。

 あくまでフィクションとはいえ匿名・流動的なトクリュウ犯罪が蔓延してる昨今は現実の社会でもそのまま展開してそうなストーリーには、暗黒渡世とは縁が無い身の上でもすぐそこに現存してる脅威として慄然とするばかりでぃ」

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グランツーリスモ

2023-10-07 21:13:09 | 活弁見聞録

つれ:「高精度レースシミュレータのゲーマーが実車レーサーになった実話の映画化で日本製のゲームに日本車でのレースだから画面のそこかしこに日本感が溢れるものの、あくまで洋画だから日本語のシーンが何となくぎこちなく感じられるところはゲーム風と言えばゲーム風なご愛嬌かもよ。

 タイトルからしてゲーム部分に比重を置いたストーリーかと思いきや実車レーサーとして活躍するまでの過程をメインに据えた辺りはトップガンに愛と青春の旅立ちをミックスしたレース版の趣で、さらには家族愛の賛歌まで盛り込まれるとゲームやレースに興味がなくても見応えのあるオーソドックスな本格派青春ドラマの一丁上がりだょ。

 ゲームやレースに負けず劣らずの新鋭技術を駆使してるだけにドラマを抜きにしても盛り上がれるほどレースシーンの迫力も特筆ものだから、遠隔操作のドローンで戦争する時代ならゲーマーからレーサーになっても不思議はないとはいえそう一筋縄にはいかないてぇリアルなシビアさがヒシヒシと伝わるんじゃないかぃ」

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バービー

2023-09-06 21:05:31 | 活弁見聞録

ズレ:「アメリカじゃ同時公開作品と抱き合わせたバーベンハイマーてなコピーがウケたところに原爆雲の絵柄があしらわれて物議を醸したのが前宣伝になったかは定かならねど、バービー人形が主人公のお伽噺チックなファンタジーなのに中東じゃ上映禁止になったりと映画の外側での話題でも記憶に残る作品だろうよ。

 そんな背景は抜きにしても映画館まで足を運ぶくらいのコメディ好みなら冒頭の掴みでいきなり深く印象に刻まれるのは間違いなく、バービー世界と人間社会が併存する荒唐無稽な設定だけにユルさが目立つとこもなしとはしないもののそれも含めて屈託なく笑える作品に仕上がってるわな。

 バービーに郷愁のある世代をイジッて笑かそうてぇ姿勢を貫徹しつつもそれがそのまま社会風刺としても成立するところが上映禁止にもなる所以と推察され、バービー人形の普遍性と併せて一見童話風ながら社会思想に裏打ちされてるガリバー旅行記のように末永く歴史に残るかもしれねぇぜ」

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インディ・ジョーンズと運命のダイヤル

2023-08-07 21:46:38 | 活弁見聞録

つれ:「シリーズ最終作と自他共に認めるだけに出演者制作陣こぞって力が入ったらしく、手に汗握るアクションとファン心をくすぐる小ネタをテンコ盛りにした大仕掛けな遺物アドベンチャーてぇ定食メニューがフォーマットはそのままにひときわ豪勢な盛り付けでテーブルに運ばれてきた感じだねぇ。

 主人公を看板にしたシリーズものはその役者さんも等しく時間が経過するから長くなるほど主役周りの動きが渋くなりがちだけど、スタントにCGやらAIを駆使した最新技術を以てすればインディ・ジョーンズはあくまで若々しく第一作から40年余も経ってるって方がフィクションみたいじゃないかぃ。

 同時代性がある単一キャラクターのオリジナルストーリーとなれば本邦にはフーテンの寅さんてぇ長寿の金字塔があるものの洋画じゃインディ・ジョーンズに比肩すべきシリーズが見当たらないだけに、存分に堪能しつつも新作を望めない寂しさは禁じ得ないとこだよねぇ」

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トゥ・レスリー

2023-07-07 21:08:07 | 活弁見聞録

ズレ:「高額クジに当たった小市民が持ち付けない大金で身を持ち崩した後日譚のストーリーはアメリカじゃ単館公開で興収は僅か350万円也だったそうで、それがアカデミー主演女優賞ノミネートまで上り詰めるなんざ映画制作としては立派に一山当てたシンデレラストーリーだぜ。

 当然低予算の作品だったようで舞台のバリエーションは限られてるしタップリ金を掛けましたてぇドヤ顔チックな道具立ても登場しないけれど、だからこそ相対的に主役の落魄感がクッキリと浮かび上がって格別の出来事や目を引くアクションがなくてもジワっと浸みてくる秀逸なロードムービーになってるんじゃねぇか。

 土地柄や時代背景のディティールは全く異なるものの市井の人々が織りなすごく普通の日常に家族愛や隣人愛を盛り込む作風は古き良き邦画の家族物語を見るようでもあり、本邦の興収がどうなるものかは定かならねど日本じゃ存外にオールドファンの琴線を揺らしそうだわな」

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TAR/ター

2023-06-09 11:37:26 | 活弁見聞録

つれ:「ケイト・ブランシェット丈当て書きのオリジナル脚本だから事前の情報は公式サイトレベルの梗概だけで、そこから察するにオーケストラ版白い巨塔じゃなかろうかと見当をつけていったのが映画には珍しく冒頭に延々とタイトルロールが流れるスタイルでいきなり意表を突かれちまったよ。

 逆に予め大筋を吞み込んでないと何のネタ振りか分からないほど中盤に至るまでは衒学的な音議論の応酬が表面に出てくるから、原語で筋を追える方やバッハから現在の流行先端に至る音楽産業の推移に造詣の深い方は主人公のセリフ回しにはシビれるとこが多いのかもしれないねぇ。

 LGBTや各種ハラスメントの今日的な要素をふんだんに盛り込みながらも全般的に因果関係に踏み込むシーンや状況ごとの説明台詞は少なく、さながら行間の余白にイマジネーションを働かせる散文詩のような展開がいかにも芸術を背景にした映画らしいんじゃないかぃ」

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AIR/エア

2023-05-08 21:25:46 | 活弁見聞録

ズレ:「エア・ジョーダンの爆発的ヒットからの業界ジャイアントキリングでナイキさんが大躍進を遂げたてぇ結果は誰もが承知してるだけに、成功までの苦心譚が安心して見ていられるエンターテインメントに仕上がってるわな。

 マジックはタネや仕掛けが分からないからこそ純粋にハラハラドキドキが楽しめてそれを知っていればいたで今度はいかに上手くやり仰せるかを別の視点から冷静に観察できるってもんで、予め犯人を明示して展開する倒叙ものミステリーとも一脈通じるようでぃ。

 登場するのは実在の人物で今でも御活躍となればエピソードもほとんど実話なんだろうけど、生き馬の目を抜くアメリカンスポーツビジネスも決め手は存外に浪花節調だとすると構造改革とやらで義理人情のジャパニーズビジネススタイルを放棄したのはいささか早まったかもしれねぇぜ」

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フェイブルマンズ

2023-04-07 21:51:22 | 活弁見聞録

つれ:「巨匠自らメガホンを取った自伝的作品てぇと映画小僧版アメリカン・グラフィティみたいな感じに仕上がってるんじゃなかろうかと思ったら、家族の軋轢やユダヤ差別を正面から取り上げた骨太なファミリーヒストリーの趣だねぇ。
 いわゆる事実に着想を得たフィクションなんだろうから事の真偽は別として、父親の合理性と母親の感性を受け継いだところにアメリカ社会での人種的ハンデや映像産業が成長する時代背景が加わると独創的な映画監督が誕生するのかもよ。
 スピルバーグ監督が映画を職業とするまでの話だから一連の名作舞台裏が覗ける訳じゃないけれど、栴檀は双葉より芳しで幼少の砌から映画にどっぷりハマり込んだ様子は軽妙に描かれてて好きこそものの上手ってのがほのぼのと伝わってくるよねぇ」

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バビロン

2023-03-10 21:13:20 | 活弁見聞録

ズレ:「名は体を表すの格言通り冒頭の不道徳な享楽と頽廃が渦巻く群像シーンはソドムとゴモラのように不穏な空気が充満する乱痴気騒ぎで、フィクションの大袈裟なスモークとしても火種となるくらいにはサイレント時代の映画界は斯くも乱れてたのかもと驚かされらぁな。
 その後も役者や撮影のハチャメチャな舞台裏やトーキーに遷り変わる時代の悲喜交々がエキセントリックに描かれる中に今より苛烈だったであろうハラスメント批判も盛り込み、更にはフィルムノワール風なサスペンスまで加わって3時間を超す長尺を飽きさせない工夫がテンコ盛りだぜ。
 最後はオールドシネマパラダイスみたいなノスタルジーと実写フィルムのインサートで締め括る辺りには制作陣の映画愛が溢れ出してる感じが漂い、映画の歴史とコンテンツをギッシリ詰め込んだオールザッツムービー的な意欲作なんじゃねぇか」

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モリコーネ 映画が恋した音楽家

2023-02-07 16:59:20 | 活弁見聞録

つれ:「インタビュースタイルのドキュメンタリータッチ映画なら市民ケーンが思い浮かぶところをこの作品はタッチじゃなくドキュメンタリーそのものだから、それで3時間近い長尺てなぁいささかシンドイかもと思いきや案に反して存外あっという間にエンドロールを迎えちまったよ。
 思うに登場人物はいつも観客を意識してる音楽や映画のプロフェッショナルばかりだから俳優さんでなくとも自ずとコメントが劇的な構成になってるうえにほとんどがイタリア語で語られる抑揚自体が映画音楽のように心地よく、そこに絶妙なタイミングでモリコーネ作曲映画のシーンが挟まるのが時間を短く感じさせる所以かもねぇ。
 劇映画と違ってほとんど映像だけで推移する時間はなく台詞の積み重ねで展開する舞台劇のような塩梅だから字幕を追うのに忙しかったって面もありそうだけど、音楽理論やイタリア語に明るい方ならゆったりと一層奥深く楽しめる作品なんじゃないかぃ」

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