中国不滞在記 in 神戸

行って見て聞いて考えた中国のこと

登封から洛陽へ

2013年01月24日 | 旅行
中原のただなかにそびえる少室山の偉観。
少室山は中国の五岳の一、中原の嵩山を形成する山の一つ。山容が素晴らしい。
まるで映画の「The Lords of the Rings」に出てくる恐山のようだ。
映画ではホビットの一行は山の地下道を抜ける途中でおそろしい化け物に遭遇するのだが。

今日も朝から登封の世界遺産を散策。

雲一つない快晴で、気温はそれほど低くはないが風はやはり冷たい。
学生からもらったマフラーとカナダのウイスラーで買った手袋は必需品。

朝からお目当ての少室闕(shǎo shì quē)へ向かう。
123年、後漢のころに、建てられた廟の石柱だ。
中国で最も古い石柱だそうなので是非見てみたかった。

少林寺に向かうバスの途中で降ろしてもらい、
矢印の方角にどんどん歩くが、全然見つからない。


まるでアメリカ西部のような光景。
少室山は中原の大地から地下の骨格が地殻を破って盛り上がったような山だ。
此の山が古くから神が宿るとされたのはよく分かる。昨日は此の山の中腹の桟道を歩いた。

途中、農民らしいオッチャンがバイクで通りかかったので
道を聞くと元来た方角を指さしてあそこだよ、という。
戻ってみると、バスを降りた場所からほんの少し入った場所にあった。
だが、柵が閉まっていて入れない。
文化財保護研究室があったので聞いてみると、でかいおじさんが出てきて
にこやかにいろいろ説明してくれる。堂堂とした押し出しで毛沢東みたいな人である。
やり取りをしているうちに、冬季だから5月にならないと見られないと言っていることが
分かった。ほんとにがっかりである。

次に町はずれの嵩陽書院に行く。
ここは宋代に設立された学校で、司馬光、范仲淹、朱熹(朱子学の創立者)が教えたそうである。
中国の四大書院の一つ。だが建物は古いのか新しいのか・・・
中国の歴史的な建築物は実はイミテーションか、手を加えすぎのものが多いので
どこまでがオリジナルなのか信用しにくい。
だが本物もある。

唐代744年に建てられた顕彰碑。貴重なものだ。

書院の一角が展示室になっていて、そこに1世紀前の登封の歴史遺産の写真が飾ってある。
これを撮影したのは何と日本人で、彼が初めてこの地域の歴史遺産を調査し、保護に力を尽くした
そうである。彼の功績を記念した展示室だった。
嬉しいことである。


20世紀の初めに、関野貞という日本人学者がこの地を12年にわたって調査されたそうだ。
彼が撮影したモノクロの写真も素晴らしい。打ち捨てられて崩壊寸前だった歴史遺産の様子がよく分かる。

日本では知られていない学者だが、このように顕彰してくれているのは、
やはり中国人の度量の大きさであろうか。
よいものはよいと認める姿勢は、日中間が難しい現在でも変わらないと思う。
お隣の国だったらきっと日本人だというだけで抹消されることだろう。
日本のよいことはすべて否定され、悪いことばかりを世界中で宣伝しているさまを
見せられるのは本当に悲しい。

できるだけタクシーを使わず、バスと歩きでカバーするつもりが、
途中から白タクにつかまり、ふらふらと話にのって80元(1100円ほど)で
半日あちこち回ることになってしまった。



元代の天文学者、郭守敬の建てた天文台。元代の暦に劣らない精密な暦を作ったことで有名。



中岳廟。嵩山を祭る河南最大の道観。故宮に似た作りだ。

廟を守る鉄人8体。宋代の鋳造でオリジナルだそうである。錆びがほとんどない。
インドのアショカ王が紀元前3世紀に建立した鉄柱も錆びていないそうだが、
どんな技術的な工夫があるのだろうか。

運転手の兄ちゃんは子供が二人いて、上の子は中学校の寮で生活しているそうだ。
中国の親も子供も大変だなあ。
この料金も彼の息子の学資に回ると思うと惜しくなくなった。

この兄ちゃんととぎれとぎれに話をしていると、やっぱり魚釣島(尖閣諸島)の話が出てきた。
福州とは違ってこの辺りは随分政治的だ。田舎で日本のことをよく分からないからかもしれない。
国家関係は悪くても人民は関係ない、ということで一致。
もちろん客相手だから話を合わせているんだろう。
シーズンオフだから何処へ行っても観光客はほとんどいない。
だから商売は厳しく、今日の客は私一人だろうと思う。

最後はバスターミナルまで送ってもらって握手して別れた。
登封から洛陽まで、ミニバスで2時間。
ほとんど寝ていた。

洛陽のバスターミナルに着くともう6時半。
洛陽駅の場所を聞いて歩いて行く。幸い5分ほどの所に駅があり、
駅のお目当てのホテルの場所がわからず、駅近の中州快捷酒店という経済型ホテルに入る。
一泊135元(1900円ほど)部屋は小さいが大きなベッドと必要最小限なものはそろっている。
日本のビジネスホテルより質はいい。

中国のフロントサービスは仏頂面なのでいやになることがあるが、
ここはフロントがにこやかで愛想がよい。部屋までついて来てくれたのはこのホテルが初めてである。
それに照明が明るい。中国のホテルは照明が暗いところが多く陰鬱な気分になる。

ところが・・・部屋の電気ポットのスイッチを入れた途端、停電。
復旧を頼んで結局ポットの不良だということが分かるまで30分かかった。

物事はそうはうまく運ばないものである。




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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
嵩陽書院とは、さすがですね。 (藤谷)
2013-01-25 09:36:05
 僕にはそんな知識もバイタリティーもないので桂林、貴州、雲南あたりでのんびりしてきます。
 こちらの学生は中学生ぐらいから親と離れて暮らしている人が多いですよね。
いい天気 (武漢オナガ)
2013-01-25 17:34:35
 意欲的に歩き回ってますね。しっかり読ませてもらいました。そして、雲一つない青空をバックにした写真の数々も堪能しました。
晴れ男 (kamome)
2013-01-25 21:19:01
好天に恵まれて本当にラッキーです。
つい先日まで悪天候で雪が降っていたそうです。
後、旅行の残り10日、天気が崩れないでいてほしいものです。

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