前回の記事の続きとして、
今回はショートプログラムの中でユニークな魅力をふりまいてくれた選手について、
わたくしなりの視点で語ってみたいと存じます。
まず、ショートプログラムの2番目に登場した、アメリカのキミー・マイスナー。「趣味は小銭集めで~す☆」
正直、わたくしこの選手を侮りすぎておりました。
全米選手権で2位という実力を持っているにもかかわらず、彼女が日本選手のライバルになる
ほど力のある選手だとは、認めていなかったのでございます。
原因は・・・・・・・・彼女の恐ろしく地味な顔。
もうね、見ていて気が滅入るほどにお顔立ちが地味すぎて、その存在すら忘れてしまうのです。
「あら・・・?あんた誰だっけ?」
小学校の頃、(中学や高校でもいいけど)、クラスに必ず一人はいた、存在感のない地味な女の子。
それが、キミー・マイスナー。
そんな校舎裏の自縛霊に等しいマイスナーも、スケート靴を履いたら凄かった。
キレのある鮮やかな滑りで、ノーミスの演技。技術点34.20 プログラムコンポーネンツ25.20という
高得点をマーク。結果的にショートプログラムは5位になりました。
限りなく透明に近いキミー。
フリースケーティングでどこまで存在感を出せるかが、彼女の今後の活躍を左右する鍵となるでしょう。
そして次にわたくしの心の琴線に触れたのが、7番滑走のミラ・リャン(カナダ)。「はー、ドッコイ」
解説の佐藤有香も言っていましたが、
ミラリャンは「氷をえぐり取るような力強い滑り」と「豪快なジャンプ」が売りの選手です。
そのパワフルなスケーティングは、恩田美栄を彷彿とさせます。
フィギュアスケーターらしからぬその特異な容貌も、どこか恩田に似ているような・・・・。
ミラリャンはまさに、
実力はありつつもオリンピックや世界選手権に出させてもらえなかった恩田美栄の
怨念が創り出したクリーチャーである!!
・・・・と言うのは、明らかに言いすぎです。ゴメン
だから我々は間違っても、「ああっ!あそこに恩田の怨念がおんねん!!」などとミラリャンを指差して
怯えてはいけません。
浅田真央が得意とする片手ビールマンスパイラルをいとも簡単にマスターしたミラリャンは、まだ16才。
今回のSPでは14位という成績でしたが、おそらく4年後のバンクーバー五輪では、
浅田真央の良きライバルとしてさらに成長していることでしょう。
そしてわたくし的にショッキングだったのが、ロシアのエレーナ・ソコロワの演技。「リンゴ病じゃないの。ちょっとファンデが浮いてるだけよ」
先日の記事にも書きました通り、ソコロワは高得点をあげてくるであろうと、予想していました。
安藤のライバルはソコロワしかいないと、緊張すらしていました。
しかし信じられないようなジャンプミスを連発し、SPは18位。華麗な沈没・・・・。
彼女の異変は、6分間練習の時から始まっていました。
いつもの「妖精スマイル」が顔から消え、やたら厳しいしかめっ面をしていたのです。
ファンデーション(ドーラン?)も浮きまくり、まるで便秘に苦しむマントヒヒのような不健康な顔だった。
ソコロワの身に一体何が起こったのか・・・・・。
本来の力の半分も出せていなかった彼女が、哀れでなりません。
「お母さーーん」
『一週間前、夕食の買い物に出掛けたきり娘が帰ってきません。
この顔に心当たりのある方は下記の番号にご連絡ください。』
・・・・・なんていうキャプションが似合いそうなこの画像の少女は、グルジアの選手。
名前は、エレーネ・ゲデワニシビリ。
一回聞いただけではとても覚えられない名前です。
「ゲデ・・・ゲデ・・何だっけ?ゲテモノシモネッティだっけ?」
――と、お約束のボケをかましそうになるくらい、複雑怪奇な名前をもつこの少女。
名前も凄いが、スケートはもっと凄かった。
彼女の演技を一言で表現すると・・・・・・、発狂したカルメンって感じなのです。
次に滑る安藤美姫がカワイそうになるくらい、ゲテモノシモネッティの演技はエキセントリックに素晴らしい。
「この女は一体何者?!」と、わたくしが唖然としてる間に演技は終了。
57.90点という高得点をマークしたシモネッティは、風のようにキス&クライから去っていきました・・・・。「アタシ結構、いい感じ?」
シモネッティの後に登場したのは、ミキティ。
すでにもう、名前のインパクトで負けてしまっています。
だけど宣言通りに、衣装は金メダル級に凄いと思いました。
ていうか多分これ、デザイン画の状態ではすごくカッコよかったんだと思う。でも実際に仕上がった
ものを着てみたら、日本人体型の美姫ちゃんには似合わなかった。まるで女装した忍者みたい!!
・・・・・ということでは?
例えばブッテルスカヤとかカタリーナ・ビットなんかが着たらすごく映えるデザインだと思うのです。
(※古い人の例えでわかりにくいかもしれないけど)
でも着てしまったものは仕方ありません。ミキティには精一杯頑張ってもらうしかない。
わたくしも力の限り、声援を送るしかないのです。
世間ではミキティを嫌ってる人が多いけど、わたくしは嫌いではありません。
ミキティは高橋大輔と同じで、潜在的なスケートテクニックは世界のトップレベルでありながら、
自身の精神力をうまくコントロールできずに自滅するタイプ。そんな不器用な生き方しかできない
ミキティや高橋大輔を見ていると、わたくしの母性本能は激しく刺激されてしまうのです。
「この子はやれば出来る子なんです!
ただちょっぴりプレッシャーに弱いだけなんです!」
と、母親のような気持ちになってミキティや大輔っちを庇いたくなってしまうんです。
だからもう、うちの子を苛めないでっ。
・・・・・というわけで、ハラハラしながら見守っていた安藤の演技。
しっとりとした「戦場のメリークリスマス」のメロディーに乗ってレイバックスピンを決めるミキティに、
届けとばかりに大きな拍手。
「ガンバレ、ミキティ! ガンバレ、安藤!」
そしていよいよ、トリプルルッツ―トリプルループのコンビネーションジャンプ。
「お願い、コケないでぇぇ!!!」
ほとんど絶叫に近い、わたくしのエール。心拍数は多分、50000くらいに上昇していたと思う。
だが必死の願いも空しく、ミキティ失敗。
セカンドジャンプは回転不足で、ダブルループに。しかもあと一歩で転倒という、危ういバランス。
メダルへの夢は、このジャンプミスで潰えた・・・・・
でも、いいんです。
安藤美姫にとってこのオリンピックは、「勝負」の場ではない。「告別」の場なのです!
もともとメダルを期待されていたわけではありませんでした。マスコミや世間が期待しているのは
「4回転ジャンプ」だけ。
アーティストとしてではなく、曲芸師としてしか見られていない屈辱は、いかばかりだったでしょうか。
おそらく安藤は、抱えきれないほどの寂寥感の中で、いつも孤独だった。
あの孤独の女王、村主章枝よりも!!※孤高の女王すぐりん。(写真後方)
だからこそ安藤は、フリーでは意地でも4回転を飛ぶ。
それは自分を曲芸師としてしか見ないマスコミと世間の人々への、別れの儀式。
同時に、自分との別れの儀式でもある。
4回転ジャンプを飛んだ瞬間、たとえそれが成功しようと失敗しようと、安藤はすべてのしがらみから解き放たれる。
夜空に咲かせる大輪の花火のように、氷上で4回転の大輪を咲かせ、そして静かに散ってゆく。
空中に残るのは、散り落ちる花火の軌跡だけ。花開いたジャンプの記憶だけ・・・・・。
そして安藤は、我々の前から姿を消す。
そのときになって初めて、我々は知ることになる。夏の夜空に一度だけしか咲かないからこそ、
花火は人から愛されるのだと・・・・・。
さようなら、安藤。
もう二度と、君が私達の前に姿を現わすことはないだろう。
わたくしにはなぜか、それがよくわかる
・・・・・・わけがないだろがっ!!!
コラ、ミキティ。
メダルを獲れるまで引退することは、まかりなら―――――――ん!!
※フィギュアスケート女子SP★個性美眩しい戦士たち part②に続く