斬り捨て御免塾!!

☆エンタメ毒舌レビュー集☆

昭和歌謡曲の奇跡②

2005年12月12日 | 音楽

混迷と混乱の時代、平成……。
時代の袋小路を迷走する我々ホモサピエンスの行く末を考えてみようという、奇特かつ気の毒な精神から
生まれた連続企画、それが『昭和歌謡曲の奇跡』でございます。

つまりは、 「平成」を知るにはまず「昭和」から!!というわけね。
チャラい小娘と性犯罪者が幅を利かせる狂ったこの時代に生きる我々は、昭和時代の変なレコードを徹底的に
研究分析し、古き良き「昭和」の時代精神を学ばなくてはならないのです!!!





というわけでまず最初に研究分析しなければならないレコードは、これです。タイトルは、『公害ブルース』
「公害」と「ブルース」をジョイントするシュールなセンスはまさに、昭和時代ならではありませんか。
呆れるのを通り越してアッパレとしか言いようがありません。

ブルース [blues<blue(憂うつな)]
楽曲の1形式.米国の黒人がやるせない生活を自ら慰めるために歌っていたものから生まれたもの.
4/4拍子で速度はゆったりとして哀調を帯びている。多くは黒人霊歌,牧歌,民謡などから流れ込んだ
もので,ジャズの源といわれる.
                                                      ※大辞林より

なによりビックリなのは、
「公害」という社会的で深刻なテーマを切ないブルースに乗せて歌う覚悟を全く感じられない、軽薄なジャケット写真。
歌い手の服のセンスとそのメイクも、どう見ても吉本興業所属の女漫才師にしか見えません。
レコードのB面タイトルが「公害」とは無関係な「歩行者天国」というのも、この歌い手の志の低さを証明しています。

急激な工業化による「公害問題」と、都市部の人口増加によって生まれた「歩行者天国」。
「昭和」を語る上で外せないにこの二大キーワードを元に、ノリだけで作ってしまったのが一目瞭然な「公害ブルース」。
今の時代に『耐震強度偽装ブルース』をレコード会社から発売するに等しい不謹慎極まりないレコードなのです。

ブルースとは名ばかりの、聴いてる方が肺病を患いそうなこのレコードにわたくしは、
どんな事件もシャレにしてレコードにしてしまう昭和という時代の寛容さを見たような気がいたします。






次のレコードはこれ。タイトルは、『裏窓のブルース』。またまた衝撃的なレコードでございます。
ブルースというものを根本から誤解しまくった、大変危険なレコードでもあります。

黒人がやるせない自らの生活を慰めるために歌った
ことから生まれたブルースが、昭和の日本では、
人妻がやるせない自らの肉体を慰めるために歌うものへと変化してしまったのです。
正しいのは「やるせない」部分だけ。

いえいえ、やるせない気持ちが昂じてSMの女王様のような扮装することがそもそも、ブルースの精神に反します。
やるせない黒人がこのレコードの存在を知ったら発狂すること間違いなしの、ただのエロソングだわ。

外国の崇高な精神世界から生まれた音楽を、日常の下世話なレベルにまで落としてレコード化する
昭和という時代のバイタリティー。強く生きるとはこういうことなのだと、このレコードが教えてくれているような
気がいたします。







そしてこれ。タイトルは、 『資本論のブルース』
資本論とブルースに何の因果関係があるというのか。もはやブルースという言葉には何の意味もない、
とっても怪しいレコードです。ブルースを愛する黒人に宣戦布告しているとしか思えません!!

ジャケットに写っている、成金を絵に描いたような髭オヤジは何者なのか。
そして一体、どんなメロディーの歌なのか。
ただひとつわかることは、とにかくこのレコードは存在自体が不愉快極まりないということである。




不愉快極まりないといえば・・・・・・・・


これこそ不愉快の極みのような存在。
ご存知、ヒューザーの小嶋進氏がかつて「嶋進太郎」なる芸名で出した演歌のカセット。
「歌うパイロット」ならぬ「歌う守銭奴」小嶋進はきっと、青春時代に『資本論のブルース』を聴きまくっていたのでは
ないだろうか。「温海慕情」はド演歌ではあるが、小嶋進自身はインチキブルースの塊のような存在であるのは間違いない。

昭和という時代を席巻したヘンテコなブルースが、多くの大人の根性を捻じ曲がらせ、平成という時代に毒をもたらして
しまったのではないかと、わたくしは疑惑を抱いている。

昭和歌謡曲にはまだまだ、多くの秘密が隠されているに違いない。
わたくしは今後も引き続き、「昭和歌謡曲の謎」を解き明かすために、「昭和の変なレコード」
研究分析を続けていかなければならないと確信している今日この頃である。