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気分はいつも、私次第

その翌日の朝食

           『おぞましい二人』(エドワード・ゴーリー)


ゴーリー作品、最大の問題作?とも言われている物語。
編集者は難色を示し、書店は「ウチの店には置けない」と返品する。
そして読者は反感し・・・と当初は全くいい話のない本だったとか。


Wiki 『おぞましい二人』


↑ こちらに出版当時のアレコレ、本作のあらすじが書かれています。
御参考になさって下さい(ペコリ)

日本でも出版どうする?という話になっていたそうですね。

実際の殺人事件をベースにしています。
これが、難色を示された理由であります。
これを(一応)児童書として・・・は???ですね。
でもゴーリーは、多分子供向けとして描いているとは・・・私は思わないが。

英国マンチェスターで起きた事件。
ムーアズ殺人事件をベースにしています。


Wiki ムーアズ殺人事件


Wiki情報を貼っていきましたが
検索すれば、もっと詳しく書かれているサイトが複数ありますから。
宜しかったら、探してくださいね。

私は、ベースがムーアズ殺人事件だと知ってから・・・
あぁあの事件ねって(笑)
イアン・ブレイディの写真はうろ覚えだったが
マイラ・ヒンドリーの写真・・・顔が記憶にあったので(なんで?)
『世界犯罪百科全書』(オリヴァー・サイリャックス)で読んだので。

『おぞましい二人』には描かれいませんが(描く必要もないし)
マイラがイアンに惚れて・・・という図式なので。
イアンは、幼い頃から「いつかヤルだろう」てな感じの子供で。
保護観察処分、少年院・・・・
その後勤務した化学薬品工場にマイラも勤務していた。
そこで出会って、ですね。
イアンは、頭は良い。本も読む・・・危ない系だが(私もか??笑)
ナチス思想にも傾倒していたようで・・・・
私が覚えていたマイラの写真は、モノクロなんですがね。
ナチの収容所の女性看守を気取って・・・みたいな風だそうで。
完全にイアンの影響。イアンに好かれたいってことで。

2人とも、恵まれた子供時代とはいえない。
イアンは、その不満を犯罪にぶつける。
マイラは、その不安をイアンで埋めようとする。

『おぞましい二人』では、
ハロルド・スネドリーとモナ・グリッチの2人が主人公です。

いつも通り、淡々としたゴーリーの語りと絵。
特にモナは、孤独感をイメージした語りになっています。

ハロルドとモナは、出会う。
自己啓発協会主催の、十進法の害悪をめぐる講演会、で。

・・・・・・って、なんなんだ??
というか、こういう講演会が実際にあったとしても
この2人がなぜ、行くの?

・・・・・・・・・ここに食い付く私(笑)
理解を超えたって感じにしたいのか?
誰か説明して欲しい、と思う私・・・・

っと!!本筋に関係ないって!

2人は付き合い始め、家を借りて一緒に住む。
しかし・・・・ココで!2人の性的関係の絵が出てきます。


***********

「愛しあおうとして長時間懸命に頑張っても、成果はなかった」

              
           『おぞましい二人』(エドワード・ゴーリー)

***********

物語で、性的描写はココだけ、ですね。
実際のイアンとマイラは、性的興奮なども目的としていたとか。
犠牲になった子供たちの中には、性的虐待の痕跡もあったので。
子供にも・・・自分たちの興奮にも・・・・でしょうかね?

さて、物語では、2人は“自分たちの一生の仕事”の準備を始めます。

モナが、女の子を言葉巧みにおびき寄せ・・・・


**********

「一晩の大半を、
 二人はさまざまなやり方で、子供を殺すことに費やした」

           『おぞましい二人』(エドワード・ゴーリー)

**********


その後片付けも、翌日の夜明けには済んでしまいます。
そして・・・・・


**********

「二人は食卓について、
 コーンフレークと糖蜜、カブのサンドイッチ、
 合成グレープソーダの朝食をとった」

           『おぞましい二人』(エドワード・ゴーリー)

***********

絵は、淡々と食事をする2人が描かれています。
この朝食のメニュー、ゴーリーが何度も何度も考えたメニューだそうです。

解説の柴田元幸さんは
「その薄ら寒いメニューをとことん考え抜くことで 
 二人が生きた世界の空気を、
 何とかリアルに捉えようとしたのではないだろうか」
と書かれています。

私は・・・・普通ですよね。
豪華でもないし、まぁトコトン貧しいともいえない。

ゴーリーの絵の影響もあるでしょうが・・・・見た印象ですがね。
淡々としている・・・・

私は、この普通さ、淡々としている様子
これをゴーリーは描きたかったのかな、と思っています。

あぁ・・・・ちょっと失礼。
実際、イアンは、このムーアズ殺人事件以前に
人を殺している・・・と言っていたそうですが。

物語のハロルドは、物語中では、そんなことは書いてありません。
まぁ、初めての殺人と考えて・・・・

表現が不適切かも?ですが
「俺たちも、子供を殺したんだ!」
と言うような、一種の興奮状態でもなく・・・
それに関連して、達成感や充実感も無く・・・・
反対に、後悔や恐怖という心情でもなく・・・

普通に。淡々と。


殺人が日常化しているのか?ではなく
感情が欠如しているのか?普通の感覚が麻痺しているのか?
・・・・・・・本当に人間なのか?

そういうことを、問うているのではないか?と思いました。

普通の人々と同じ社会に暮らす2人。
特段目を引くタイプでもないし。人込みの中の2人に過ぎない。
しかし、子どもを殺しても、何も感じないのだ・・・・
恐ろしい・・・・

何の感情も表さず。これがこの朝食もメニューかと。
達成感や充実感から、乾杯!することも無く。
後悔や恐れから、食事をすることができないってことも無く。

う~ん、この部分、とことん考えられそうだわ。
って、作者いないから、どうしようもないが(笑)

モナは、犯行の様子を写真に撮ります。
あまりうまく写っていないが・・・アルバムにいれます。
その後も、さらに3人の子供を殺し・・・
しかし、ある時、ハロルドのポケットから写真がこぼれ落ちます。
これが発端で、2人は逮捕され、事件が明るみに出る。
そして裁判に

**********

「二人とも無関心に沈んだまま、裁判はえんえんと続いた」

           『おぞましい二人』(エドワード・ゴーリー)

***********

ゴーリー御馴染みの無表情。2人は大人しく座っています。

判決は有罪。精神異常と下され、別々の病院へ。
ハロルドは、43歳の時に、肺炎で死亡します。

モナは・・・・

**********

「モナは著しく衰え、生涯の大半
 ひたすら壁の染みを嘗(な)めて過ごした」

「八十二歳、あるいは八十四歳でモナは死んだ」

           『おぞましい二人』(エドワード・ゴーリー)

**********

ひたすら壁の染みを嘗めるモナ・・・・精神異常だから、といえばそうでしょう。
でも、私は
モナは、得られなかった何かを埋めようと
壁の染みを嘗め続けたように思いました。

その何かは、ハロルドの愛情かもしれないし
もっと幼い頃の、親からの愛情かもしれない。

きっとモナ自身も分かっていないのでしょう。
でも、何かが自分には足らなかった、ことは知っていたのでしょう。
だから・・・・・と、私は思いました。

この作品を読んで・・・・何か・・・ある・・・?
と思う方もいるかもしれません。

ゴーリーの他の作品と同様に。
読んだ人が、自由に感じ考え・・・それで良いのでしょうね。

というか、読書に良し悪しなんかないのだから。
そうだよね?

自分はこう感じた。それで充分ではないでしょうかネェ。
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