新潟久紀ブログ版retrospective

病院局総務課2「旧病院跡地の処分で対立(その1)」編

●旧病院跡地の処分で対立

 県立病院の経営管理の舵を取る病院局総務課の経営グループのリーダーになったからといって、即座に黒字経営に向けた対処ができるものではない。県立病院は当時15施設(当時)もあり、構成も高度救命救急を担う基幹的総合病院から、地域での中程度医療からプライマリケアに対応する地域医療病院、がんや精神などの専門病院まで、規模も500床から50床程度までの大中小と揃う多様さで、全体で700億円規模の商いである。職員も3500人以上。とにかくガタイがでかい。そのくせ、経営収支は自然人の個人単位に施される医療行為一つ一つの膨大な量の積上げである。このマクロとミクロの両面を操舵するのは並大抵でないことは私も重々承知していた。強かな戦略と緻密な実践が必要だ。それには水面下での準備に時間を掛けなくてはならない。
 なので、私の頭と心の中では黒字化に向けた戦略や方策を練る日々が暫くは続くことになるが、その間に表向きの取組を何もしないわけにはいかない。経営改善に向けた姿勢と実践を部下や同僚にシンボリックに見せる具体のケースが必要だと思った。そんな時に、移転新築した大病院の旧施設の跡地処理という懸案が待ったなしの状況であることを部下から説明を受けた。
 2万平米に及ぶその土地は、既に地元自治体が購入の意向を示していて、県の固定資産管理の決まりでも市町村など公的団体からの譲渡要望に優先的に応えることを規定していたので、随意で契約できるのだから、基本的に相手方で揉めるようなことはない。後はその売却価格の決着が課題として残されていた。
 経営難の県立病院会計なのだから、出来るだけ高値で売ればよいではないかと話すと、部下は「過去の経緯で売価の考え方がほぼ合意されている。関連する諸条件を加味した減額の視点が盛り込まれているのだが、合意時から年月を経て一部適用できない視点が出てきた。減免できる視点がないものかが悩みどころだ」という。
 驚いた。過去の一時期に議論した売価の水準感にとらわれて、それが適うにはどうすれば良いかと悩んできたというのだ。過去の議論は正式な契約ではない。情勢は変わったのだから、現時点で我々ができるだけ有利になるように、つまり、より高い価格で売れるように考えるのが、少なくも赤字経営に悩む企業経営者の姿ではないのか。どのように安価にしてやるかと腐心しては、県という行政機関が設置した県立病院とはいえ、地方公営企業法の適用を受けた企業会計である意味が無いではないか。

(「病院局総務課2「旧病院跡地の処分で対立(その1)」編」終わり。「病院局総務課3「旧病院跡地の処分で対立(その2)」編」に続きます。)
☆ツイッターで平日ほぼ毎日の昼休みにつぶやき続けてます。
https://twitter.com/rinosahibea
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「回顧録」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事