新潟久紀ブログ版retrospective

新発田地域振興局長の細々日記「新発田高校生へ挑戦状」(その1)

●校長先生から聞き出す!

 新潟県立新発田高等学校が休日に開催するイベントの来訪者のために、どうせ近くにあるのだからと我が新発田地域振興局の駐車場をお貸ししたら、校長先生自ら律義にもお礼のご挨拶に来られた。
 折角の機会だからとお引止めして、若者の県外への転出による人口減少への対策を臨場感持って考えるために、正に県から出て行くかどうかの分水嶺を控える高校生の進路指導教諭や生徒自身と懇談したいと申し入れたところ、とても前向き姿勢で嬉しくなった。
 聞けば、生徒自身が社会経済のあらゆる事象などから課題テーマを設定して、関連データなどを調べ研究し、対応案を取りまとめて発表するというプログラムを実践しているとのことで、地域振興局としての問題意識などを生徒にプレゼンしてテーマとして取り上げるかどうか考えてもらう機会を設ける可能性までお話くださった。
 令和5年春に地域振興局長に着任して以来、管内の大学生などとは懇談してきたが、カリキュラムや進学準備等で余裕のない高校生については、その実情や思考の把握が人口減少対策を考えるに重要にもかかわらず、殆ど接点をもてずに歯がゆい思いをしてきたのだ。
 忙しい中を割り入って生徒や先生にご迷惑をおかけするということでなく、授業の一環の中で関わらせていただけるならば、渡りに船というかこれほど有難いことはない。
 それには、高校生から研究課題として組するに値すると思ってもらえるような情報によるアプローチが必要。相手は大学合格実績などを拝見しても新潟県内で名だたる進学校の一つで文武両道のモデルのような新発田高等学校だ。子供だましのようなプレゼンでは取り上げてもらえないだろう。
 平成生まれの優秀な子供達に向けて我ら昭和のポンコツ県職員がインテリジェンスを絞り出して「挑戦状」をしたためることになるのだ。
 先ずは「相手」を良く知らねばなるまい。リアル高校生と対峙するなどというのはもう数十年以来の話になる。ガチンコでプレゼンという前に、周辺環境から探りたいものだ。この辺が役人らしい姑息さなのだが…。
 新発田地域振興局から徒歩5分でくだんの新発田高校に到着する。事前にアポを取ったところ、校長、副校長、教頭、進路指導、探求部の先生がたに勢揃いして頂き恐縮至極。校長室にて先ずは新発田高校の教育情勢や進路動向等の概況を教えて頂く。
 くだんの生徒自身による課題探求型の実践に繋がっている文科省によるSSH(スーパーサイエンスハイスクール)の指定を平成25年度から一期5年で3期連続で受けているという。全国約4800ある高校の中で指定校は数パーセントであり、連続指定は稀であるとのこと。
 具体的な進め方としては、教諭が課題設定を誘導するのではなく、市役所など地域の関係者から地域課題などの情報や研究要請を受けるなどしつつ、それに囚われずに全ての生徒が1年生の初期の段階で各々で自発的に考える課題を提出し、その後に同様の課題認識を持つも同士などでグループになって課題を収斂してテーマ設定するのだという。
 近年ではとてもハイレベルな国公の大学でも、入試で探求心や問題解決力を重視する動きが強まっているのだと校長先生が補足してくださった。生徒自らが課題を抽出してデータを調べ、考えをとりまとめて英語でプレゼンまでする取組を地域内外に広くアピールして当校への進学者と注目度の向上に力添えしたいと思ったものだ。
 研究成果の発表は、市のホールにて全校生徒800人超の前でグループごとに代表者が英語で10分弱のスピーチにより行い、質疑応答も全て英語でというのだから世界を見据えていて恐れ入る。
 そんな話を聴くと、新潟県の一出先機関の地味な取組みからテーマに取り上げてもらえるようなアカデミックな情報提供ができるのだろうかと腰が引ける思いになる。
 それでも、生徒の自主性に委ねたテーマ設定は多様で、極めて科学的か学際的なものもあれば、とても身近で生活感のにじむものもあるという。最寄りのパン屋さんの売り上げ向上に関するテーマ設定などもあったと聞くと少し安堵して胸をなでおろす。
 教育の概況をお聞きしたあと、校舎内を案内していただいた。15年前に竣工したというが建物の造形は遊び心も見せつつ人間工学を考えた先進性と快適性を感じさせるもので、バブル期に建てられたような公の施設に見られる陳腐さなどが無い。まさにインテリジェンスとヒューマニズムを感じさせるそれは、私が通った高校の味もそっけもないスクエアな建物を思い返すと、羨ましさしか感じられない。
 40人教室で授業中の姿も拝見すると、ここに通う生徒達の真摯で豊かな気質をオーラのように感じる。
 長年のキャリアをもつ我ら年輩県職員といえども彼ら彼女らに向き合う場面で半端な行いはヤケドするだろう。新発田高校を後にした帰路でそう肝に銘じながら、テーマとして取り上げてもらうに値する「地域振興局の悩みごと」について思いを巡らし始めたのだ。

(「新発田地域振興局長の細々日記「新発田高校生へ挑戦状」(その1)」」終わり。「へたれ県職員の回顧録」の「仕事遍歴」シリーズで現在進行形の日記形式「新発田地域振興局長の細々日記「新発田高校生へ挑戦状」(その2)」続きます。)
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「活かすぜ羽越本線100年」をスピンオフ(?)で連載始めました。

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