新潟久紀ブログ版retrospective

新潟暮らし推進課4「UIターンコンシェルジュ・東京駅前での驚き(その2)」編

●UIターンコンシェルジュ・東京駅前での驚き(その2)

 平成30年4月18日の水曜日。東京出張のその日の関東は傘も役に立たないくらいの豪雨で、上京といえば隙間時間に都内を見歩くのが楽しみの一つなのだが、この日は駅舎から一歩も外に出たく無いほどの降り方だ。待ち合わせた担当課員に「小降りになってから合流するわ」とメールすると、「東京駅の地下道伝いに目的地に着けますよ」と返信だ。UIターンコンシェルジュの委託契約を結ぶパソナの本社は、東京駅と直結する立地だったのだ。
 立地の良さだけでなく、ビルに足を踏み入れると、その最新で輝くばかりの施設設備と、一方でリラックスさせるような壁の配色や各種の表示、カフェスペースなどの雰囲気づくりの良さに関心させられる。私の様な田舎者を圧倒するのではなく、フレンドリーに迎え入れようという意識を造作に感じる。日本のオフィスビルといえば無駄なく合理的で冷徹ささえ感じることが多かったが、物騒な事件の多い昨今であっても多様な人の自由な出入りを前提とする企業理念が滲み出ているように感じる。
 事前の予習として、東京のど真ん中のビルでありながら、自然豊かな地方を重視する姿勢からなのか、稲を植えた人口の水田や山羊などの牧畜フロアを設けているなど、驚きをもって見聞きしていたが、実際にそれらを見学させてもらうとやはり都心の最新のビル空間の中での展開に破天荒さを感じる。摂れる乳を使ったスイーツなどを併設のカフェで販売するなど、農業や畜産業の恵みを直に体験させるところもしっかりとしている。私が見学している間にもカップルや子供連れの母親などが往来していて、立派なアミューズメントにもなっている。
 パソナ本社においては新潟県のUIターンコンシェルジュ事業のために一名が、東京在住で新潟への移住のための転職について相談するための窓口担当として配置されていて、その方と面談して業務の状況や移住のための転職相談などの動向などについて詳しくお聴きした。東京圏で数年働いた上での転職におけるネックはやはり給与水準ということで、新潟は給与が低くても物価も割安とデータに基づいて説明しても、実額が落ちることとその程度によっては転職に踏み切れない方が多いという。新潟の住環境を考えると自動車の保有はほぼ必須であり、それが余暇の自由度なども増のだが、保有と維持のコストなどもやはり課題とされているという。転職以降の将来にわたる長期的な経済比較などの分かり易い情報発信の強化が必要そうだ。
 それにしても実質一人で相談窓口というのは大変すぎるのではないか、裏を返せばキャパオーバーの相談ニーズを取り逃しているのではと問うてみる。相談者は日中、中には残業で夜間も、就業している人が多く、転職活動は勤め先に感づかれずに進めたいという人も居て、殆どがメール中心のやりとりになるという。電話と異なり、対応の自由度や効率性が高いのだ。やはり、ニーズにあった新潟での仕事の開拓にこそマンパワーの注力が必要なので、新潟事業所に殆どのコンシェルジュを配置しているのだ。ただ、都内でセミナー開催などとなれば臨機に新潟から応援部隊がやって来て、新潟の企業のリアルをダイレクトに話したりするという。限られた予算と人員体制の中で効率的に対応していることに心証が持てたものだ。
 実はもう数ヶ月後に相談窓口担当の異動があるという。現任者は新潟出身なのであるが、後任は新潟に暮らしたことがなく縁も無い方だという。それで大丈夫なのかと問うて意見交換していく内に、新潟無縁の人だからこそフラットに新潟の善し悪しを評価してクライアントに伝えたり、新潟を熟知するゆえに言わずもがなにしていることがクライアントにとっての重要事項になったりするかも知れないことから、そうした視点や気づきが新潟出身者を含めて都会に暮らす若者から相談者としての信頼を得られるのかもしれないと思えてきた。他部局に勤めていた時にコンシェルジュ事業創設の話を聞いて、なぜ多様な行政分野の経験を通じて新潟を熟知した新潟県の事を新潟愛あふれるようなプロパーの県庁職員に任せずに外部企業に委託なのかといぶかったものだが、地元に浸かりすぎていると良くも悪くもバイアスがかかって障りになるのかもしれない。
 パソナ本社ビルには驚かされたが、出張本来の目的であるコンシェルジュ担当者との面談を通じて、彼らのとにかく真摯な取組姿勢と気の付く対応、そして何よりも移住転職者数を増やす事への腐心ぶりに大いに関心した。コンシェルジュ制度は仕組みとしては悪くない。後はどうこの良さが広く都内の若者に伝わるようにするかだ。良い制度を作れば黙っていても活用される時代ではない。広報戦略に思いを巡らせながら新潟へ帰る新幹線で雨の東京を後にした。

(「新潟暮らし推進課4「UIターンコンシェルジュ・東京駅前での驚き(その2)」編」終わり。県職員として11箇所目の職場となる新潟暮らし推進課の回顧録「新潟暮らし推進課5「人口減少問題対策特別委員会で県議会答弁デビュー」編」に続きます。)
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