新潟久紀ブログ版retrospective

燕市企画財政課22「地方創生交付金を活かせ(その5)」編

●地方創生交付金を活かせ(その5)

 私が汗をかきかき説明する間、地方創生の"伝道師"様は笑顔で黙って聞いてくださっていたが、少し思案する面持ちでもあった。全国に2000もある市町村の中でも、小さな市である我が燕市の申し入れなどを一々聞き入れていては、ただでさえ七面六尾の日常の中で対応しきれないとでもお考えなのであろうか。私はしばし相手の開口を待ち受けた。
 「わかりました。お手伝いしましょう」。私からのたどたどしい説明の内容に質疑も加えずに、伝道師様は即決してくださった。私は安堵したがまだ肩の力を抜くわけにはいかない。アドバイザー費用を決めなくてはならないのだ。快諾のお礼に併せて請負に要する費用について恐る恐る尋ねると、「基本的に実費相当を頂ければ良いですよ。新潟県燕市へはさすがに新幹線を利用して行き来することになると思うので、旅費くらいはお願いしたいですね。その他については市の規程に従いますよ」と言ってくれた。
 伝道師は地域おこしや災害時の官民連携策など多様な取組で全国的にも有名な御方であり、ご指導ご助言を頂くには一回当たり少なくても十万円前後は要するではなどと勝手に思い込んでいた。しかし、後に色々と調べたり見聞きしてみると、相当な部分でボランティア的に取り組まれていることが分かってきた。世の中を良くするために信念を持って取り組んでおられるのだ。頭が下がるばかりだ。
 かくして、地方創生推進交付金を申請する事業計画書においては、その実効性の確保に向けた仕掛けの一つとして、伝道師様のアドバイザリーをフューチャーさせていただくことができた。国による計画書の内容審査は厳格で細かく、大量の質疑事項をメールで受けて回答を繰り返すという日々が年度末までつづいた。中には、質疑といいながら、体よく取り下げを促しているのではないかとうがちたくなるような内容もあり、平成29年度は全国からの交付金要望が嵩んでいて、国は予算枠に収まるように切り捨て調整に腐心しているのかとも推察された。
 それでも、我が燕市としては簡単に交付金要望額が減額させてはなるまい。当初予算案の関連事業において半分相当の財源として国交付金を当て込んでいるのだから、その減額は燕市財源持出の増加を意味する。財政担当課長として譲るわけにはいかない。国担当からの指摘や質疑はかなりしつこく続き、それらに粘り強く応え続けた日々のあげく、ついに交付金内示の日がやってきた。部下の窓口担当者は送達されたメール内容を私に報告してきた。満額内示とはいかなかったが、額面的にはかなりの交付金が認められたようだ。ただ、個別事業ごとに見ていくと、事前の質疑応答では事柄としては全く否定されなかった事業においても交付金が全く内示されなかったものがあった。要は"アシ切り"を喰らったのだ。
 「もしかして…」と思っていたら、その後に内閣府ホームページで公開された全国の都道府県と市町村毎の地方創生推進交付金の内示一覧を見て「やはり」と確信した。地方創生推進交付金の平成29年度の一次配分においては、我が燕市は全国の政令市を除く普通市において、額面として全国5位となる交付金の配分を得ていた。つまり、行政規模から見て比較的多くの交付金に至ってしまったため、事業内容で査定されたというより、総額として配分の"アシ切り"を受けたということのようだった。国の担当官はもちろんアシ切りの理由説明はしてくれないが…。いずれにしても相対的に見て企画財政課長としての役割は果たすことが出来た。私はすぐに、私をその気にさせてくれてここまで導いてくれた"伝道師様"に、メールで交付金の内示状況を報告しつつ、これまでのご指導ご助言への篤い謝意をお伝えした。

(「燕市企画財政課22「地方創生交付金を活かせ(その5)」編」終わり。県職員としては異例の職場となる燕市役所の企画財政課長への出向の回顧録「燕市企画財政課23「次は地方創生のハード整備交付金だ(その1)」編」に続きます。)
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