新潟久紀ブログ版retrospective

燕市企画財政課23「次は地方創生のハード整備交付金だ(その1)」編

●次は地方創生のハード整備交付金だ(その1)

 地方創生「推進交付金」の獲得に関する取組が盛り上がっている最中、国は補正予算により地方創生「拠点整備交付金」制度を創設し、地方へ情報発信してきた。推進交付金が基本的にソフト事業対象だったのだが、地方創生の取組にあたってはハード整備もあり得るのだからと、地方からの要望を背景にしての予算化だった。
 これまでも地域振興の取組に際してはハード補助制度が仕組まれてきたが、利活用の仕方が目論見通りにいかずに維持管理費の地元負担だけが残される「負の遺産」と成り果てるものも散見されてきた。この度の地方創生の取組においては国も相当にハード補助には慎重であったようだが、過去の轍を踏まぬようにハード運用のソフト部分の審査を相当厳格にするというスキームの下で、地方の要望に応えたのだ。
 さて、そんなハード交付金新設の情報が我が燕市にも舞い込み、企画財政課としてはどう対処するかという話になった。「箱物補助は有り難い」という右肩上がりに人も増えて箱物が次々に必要となる時代はとうに過ぎて、少子高齢化と人口減少、財政難を見据えた平成の市町村大合併というリストラを経て、「箱物は増やさず、むしろ減らす方向に」というのが自治体現場のトレンドになっていた。我が燕市も長期的にしっかりと段取りを踏んで整備すべきいハードのリストはあったが、昨日今日言われて基本的に単年度で整備可能なハードなど見当が付かないのだ。
 県から落下傘のように出向してきて半年あまりの私には、市民生活の臨場感が未だ十分ではなく、部下達から即座にハード補助の対象とできるものがなさそうだという話を取りまとめると、市長へ報告に伺った。費用対効果の見込めないハードは新造しないという方向性は市長も共感するはずなので、ハード向け交付金の話はスルーで決着すると思っていたのだが…。
 「本当にそうなのか。知恵を出す余地は無いのか」。思いがけず市長からは叱咤が飛んできた。この度のハード交付金は補助率が50%だが、その裏負担分については交付税措置のある有利な起債を充当できる。企画財政担当として実質的な市の負担が10%程度となるこの千載一遇の機会を捉える知恵は無いのかと問うてきたのだ。部下からの情報だけで深掘りもせずに市長というラスボスに臨んだ自分の備え不足を恥じ入った。もう一度洗い直してみようと。
 改めて部下や庁内の幹部達と相談していくと、使えるかもしれないが果たして何にという廃校施設が浮かび上がってきた。今、物置程度で使っているのたが、耐震性もあって見た目もそれほど廃れておらず、駐車スペースも十分にとれることなど考えるともったいない。一方で、街中の体育施設が老朽化の上に手狭となっていて、騒音などの問題にもなっているという話がある。廃校施設に一定の手をかければ体育施設の受皿にできそうなのだ。
 ただし、既存施設の老朽化対策としての単なる代替施設整備では地方創生のための交付金を得ることはできないだろう。ここが企画のしどころだ。推進交付金を活用したソフト事業の展開の中でスポーツによる交流人口の拡大を推進しているところであり、その取組により燕市に関心を高めた内外の学生やアスリート達を受け止める施設として機能させるというソフト戦略を整理してみた。こうしたシナリオ構築にあたっては市長直々のアイデアに頼る部分も多くて私は知見不足を痛感させられたのであるが、誰の力であろうと組織としての仕事だ。結果して市のために有意な財源を確保してより成果の上がる事業を進められれば良いのだ。こうして急遽舞い込んだ地方創生のハード交付金についても機を逸せずに活用に結びつけることができたのだ。

(「燕市企画財政課23「次は地方創生のハード整備交付金だ(その1)」編」終わり。県職員としては異例の職場となる燕市役所の企画財政課長への出向の回顧録「燕市企画財政課24「次は地方創生のハード整備交付金だ(その2)」編」に続きます。)
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