新潟久紀ブログ版retrospective

活かすぜ羽越本線100年14「新発田駅以北編・中条駅」

■JR羽越本線100年を機に新発田地域の振興を考えます。
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◆新発田駅以北編・中条駅

 私が業務で所管する新発田地域を縦貫するローカル鉄道の羽越本線が100周年を迎えるにあたり、鉄路利用増を沿線地域の活性化と絡めて考えられないかとの思いで、そのヒント探しのために始めた各駅周辺を巡り歩く視察は、「金塚駅」を出て再び国道7号での北上の途に着いた。
 新発田駅から北隣となる「加治駅」より次の「金塚駅」を出て1kmほどまでは羽越本線の鉄路と国道が4kmほど正に並走している状態だったのだが、次の「中条駅」手前1kmくらいからは、鉄路が更に直線でありつつも国道の方は、これも並行して続いてきた櫛形山脈の山裾がすぼむのに沿うように東側に逸れ始めた。だが、鉄路が見えなくなってそれほど間もない頃合いで、目に見えて大きな化学工場に沿う形で左に分岐する道があり、それが中条駅に通じるので、”取り舵”を切った。
 国道を外れると、住宅と昔ながらの商店などが居並ぶ通りになり、数分も掛からずに目指す中条駅が目の前に”開けて来た”。
 ”開けて来た”と言うのは正にそうした印象だったからで、これまで見て来た朽ちそうな無人駅たちとは全く異なり、駅前周辺が都会の街路の様に美しく現代風に整備されており、真新しくて立派な公共施設のようにも見える駅舎を奥に配して、さながら出来よく仕立てられた公園のようなエリアが古びた街中に急遽現れたのだ。
 ネットで調べると、平成の市町村合併で胎内市が新設されるにあたり、都市計画マスタープランとして中条駅周辺整備が計画され、なんと鉄路をまたぐ橋上駅舎が2018年に新設されたばかりということだった。
 この事業は国土交通省関連団体主宰の「まちづくり情報交流大賞」で部門賞の「まちづくりシナリオ賞」を受賞しているというのだから出来の良さが伺い知れるというものだ。
 駅前の停車場が空いていたので車を停め、駅舎の中へと向かう。東口正面の「中条駅観光交流室」と表示された玄関から入ると地元の野菜や菓子など商品が陳列されていて、飲料や雑貨などもあってキヨスクのようになっていた。
 ふと見ると鎌倉時代初期前後に活躍したとされて全国的にも知られている地元の女性武将「板額御前」に因んだ「合格祈願袋」が無料で置いてあったので記念に頂く。地元有志による伝承の会の取組の一環らしい。そういえば、駅舎が見えると直ぐに勇ましい鎧姿で弓を背にして遠くを見やる女性武将の銅像が目に入ってきて「板額御前」の地元であったと思い返していたところ。
 平安から鎌倉時代に名を馳せた地元出身の女性武将「板額御前」の一発必中の弓の腕にちなんだ「合格祈願袋」を”持ち帰り自由”で置くというのは何とも粋な取組みだと思う。もちろん無料なのだから中身は豪華なものではないのだが、こうしたアイデアとそれを実践している人達そのものが有難くて嬉しく思われる。
 それにしても板額御前は、少し調べてみると、なかなか魅力的で数奇な人生をたどられたようだ。ストロングで堂々たる生涯だったこの女性を”大河主役”とまでは言わないが、例えばTVドラマで現代劇に置き換える等して、注目度を上げてくれまいかと切に思う。
 観光交流室を後にして、橋上の駅改札に向けて階段を上り始めると、壁面に描かれたカラフルで大きなデザイン画が次々と目に入ってきて楽しい。各々がこの地域の四季を彩る花々や雪景色などをモチーフにしたもので、クオリティの高さからプロに委託したものと思いきや、それぞれの右下には小さく地元小学校の名称が貼られているので児童たちの作品かと思うと驚く。駅利用者を和ませ温かい気持ちにさせ、地域の特長を瞬間的に印象付ける見事なアイデアだと思う。玄関口として望ましいあり方に相当知恵を出し合ったのだろうと推察する。
 そして、駅改札のあるフロアに登り詰めると、西口へとつながる通路がかなり広くてゆとりあるホールのような空間になっていて、窓際には木製のベンチや机まで幾つか配され、いわゆる”街角ピアノ”のようにアップライトビアノまでが置かれているし、リモート仕事や自習もできそうな仕切り付き机まである。歓談やちょっとした講演会でもできそうなのだ。このホールそのものがどんな内容でどの程度の利用があるのか、羽越本線の利用増につなげる企画に絡められないか、調べたり考えたりし甲斐のある空間を目にすることができて大変に良かったと思う。
 小洒落て小綺麗な空間に慣れた都会人たちを鉄路での旅の果てに降車させる地方の駅としては、それなりの質が必要だとおもうのだが、中条駅は今回探索する羽越本線の各駅の中において、いわば”ウエルカムゲート”として相応しい駅舎と空間がある。地域の活性化に向けて都市部暮らしの若者などを呼び込むにあたっては、この駅を活かさない手は無いなとの思いを強めながら、駅舎を出て車に乗り込んだ。

(「活かすぜ羽越本線100年14「新発田駅以北編・中条駅」」終わります。「活かすぜ羽越本線100年15「新発田駅以北編・平木田駅」」に続きます。)
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