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ブログ版ネクストテクストです。

浅草の思い出

2005-01-14 12:13:48 | いつも雑念ばかり
学生時代は4年間ずっと東京の浅草に住んでいた。正確にいうと台東区の今戸というところで、地下鉄銀座線の浅草駅から歩いて15分くらいのところだ。私の母親の学生時代の同級生の友人(←長い)の方がそこに住んでらっしゃって、その方の家には"離れ"があって、その二階のひと部屋がちょうど空いていたのである。

歳が若く、馬鹿だった私は、初めての一人暮らし、しかも初めての東京暮らし、「ワンルームマンションに住んでみたい」という今思うとまことにくだらない憧れがあって、だから最初はそういう下宿住まいみたいなのにものすごく抵抗があり、しかもこれまたくだらないことに何となく東京の西側(下北とか吉祥寺とか三茶とかね)に住んでみたいとか思って、浅草なんてヤだとか言ってた。とまあ当時を思い出すと自分に相当嫌気がさす。馬鹿だなあ。

ともあれ、最初はヤだったそんな浅草での下宿住まいも、住み始めてすぐに離れられなくなった。居心地がいいのである。確かに大学までは近いわけではない。銀座線に乗って、端から端まで移動して渋谷に出て、さらに井の頭線に乗り換えるので1時間くらいかかる。けれどもWINS浅草は自転車で行けるし(←当時は競馬にハマっていた)、雷門で有名な浅草寺とかも自転車ですぐ近くだったし、六区あたりはちょうど大阪の天王寺みたいな感じで、私には慣れ親しんだ街の香りがする。夏になると有名な隅田川の花火大会があるのだが、その会場が下宿の間近にあって、みんなでベランダ(というか、洗濯物を干すための場所。単語を忘れてしまった)に出て、ほぼ真上に上がる花火を見物することができた。

そして何よりも人が良かった。街行く人も、下宿の大家さん一家も、いい人ばかりだった。東京に初めて住んで一番抵抗があったのが言葉の違いだが、でも浅草近辺で聞く東京弁は、渋谷や新宿なんかでティーンエージャーが話す東京弁とは全然違って、聞いていて全く違和感がなかった。シャキッとしていてとても心地良く耳に響く。落語家の語り口みたいな感じだ。

下宿の大家さんは皮革製品の加工を家業にしてらっしゃって、私が住む離れの1階は、大家さんの息子さん(といっても私より年上で、兄さんのような存在であった)の仕事場になっていた。この兄さんがまたカッコいい人なんである。いかにも職人さんというような風貌(ちょっと泉谷しげるに似てる、と言ったら怒られるかもしれんが)で、シャイで、男らしい(←つくづく私と正反対)。意外なことに調理師の免許を持ってらっしゃって、私が風邪をひいて寝込んでるときには夕食を差し入れてくれたりした。ちょうど私が卒業するのと前後して結婚されたのだが、そのときに奥さんとなる人にプレゼントしたのが、自分で作った三面鏡の鏡台。これにはシビレました。自分がもし女性で、そんなプレゼントされた日にゃあ卒倒しますね。つくづく「手に職を持ってる人って何てかっこいいのか」と思ったものである。

そんなこんなで、下宿を始めた当初は、引越しすることばかり考えていたのが、結局4年間この今戸の下宿でお世話になり続けた。卒業して以来なかなか浅草を訪れる機会はないのだが、私が東京で一番好きな街である。

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2 コメント

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Re: 浅草の思い出 (元シアトルっ子)
2005-01-20 13:58:41
あの大家さんはお母様のご学友のご友人だったのですか。今の今まで知りませんでした。



確かに六区と新世界の雰囲気はソックリですね。ゴチャゴチャと通りが交差している街並みとか、怪しげな龍の刺繍入りジャンパーなんかを売ってる露天とか(客はいるのか?)、昼間から酔いどれで満杯の飲み屋とか。近くに遊郭が控えているところまで同じ。何か理由でもあるんですかね?



久々に例の店で皿うどん食べたいですね、キンキンに冷えたビールをククっとやりつつ。。。あと、蕎麦も美味しかったよね。お互い帰国したら何か企画しましょうか。



ちなみにこっちは大統領就任式だというのに寒波&雪でめちゃくちゃですわ。
懐かしい (fujikata)
2005-01-24 15:08:34
あの皿うどん、懐かしい・・・。たしかに食べたい。このコメントいただくまで「皿うどん」という食べ物があることを忘れてました。



蕎麦ね。神田あたりでぜひ食べたいですなあ。