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厚木市議会議員「奈良なおし」の思うことをそのままに

消費税率引き上げに伴う住宅新税制の導入を

2017-10-19 17:57:22 | 政治
今回の衆院総選挙の争点のひとつに「消費税」があります。
消費税率の引き上げは2011年11月、民主党政権時の野田佳彦首相がG20首脳会議で「2010年代半ばまでに段階的に消費税率を10%に引き上げる」と明言し、日本の財政再建の道筋を明確化して行われた経緯があります。

安倍首相はこの財政再建に充てる部分を”幼児教育の無償化に充てる”という公約を、希望の党と日本維新の会は”引き上げ凍結”、共産党は”引き上げ中止”。立憲民主と日本のこころは”当面引き上げ停止”という、それぞれの公約を掲げています。それぞれの考え方については今回の記事では控えますが、じっさいのところ「国際公約」という大前提に立つ以上、どの政党が政権を担っても「最終的には引き上げせざるを得ない」という結論になるんだと思います。

この場合、消費税率引き上げに伴う景気悪化が懸念されるわけですが、消費税導入後、税率の引き上げは1997年(3→5%)、2014年(5→8%)の2回行われ、引き上げ後には景気が悪化しました。なかなか景気が上向かない原因の一つにこれがあると思います。引き上げ時には国会等で政府・財務省は「海外の例からみても、消費税率を引き上げても景気後退は無い」という景気予測に基づき発言をするのですが、結果的にこの予測は失敗に終わります。

これは誰もがそうであると思いますが、消費税率が引き上げられることによって消費者は消費量の工夫をすると思います。少なくとも食費であったり、衣料品などは消費量で増税分を調整しているのではないでしょうか?例えを書くまでもないことですが、1カ月20万円に支出をしている人は税率8%の現在、税抜きで18.5万円の消費ができるわけですが、10%になると税抜きで18.2万円の消費。つまり3千円消費量は減ります。この部分が増税分です。

私は建築士なので「建築」という視点で述べさせていただきますが、景気の下支えのひとつには「建築」があげられると思います。建築は消費の中でも大型ですし、そのぶん消費税だって大きくなる。従って、消費税率が引き上げられて一番消費が控えられるのは住宅なのだと思います。
じっさい、建築の世界では消費税率引き上げ前には建築ラッシュが起き、税率引き上げ後はまったく無くなる。どのみちラッシュと買い控えが発生するのだから、こうしたものに影響されない仕組みづくりが経済政策を考える上で重要なのではないかと思うのです。

ここから先は居住用住宅建築でお話ししたいと思うのですが、不動産売買では土地と、中古住宅に消費税はかかりませんが新築住宅に対しては消費税がかかります。
この際、次回の消費税率引き上げ時に住宅新築時における消費税の廃止とそれに代わる新たな税制が必要ではないかと考えています。

一般に、住宅購入時に大多数の方がローンを組まれると思いますが、その際、一定の自己資金がないとローンは組めません。不動産の広告等で「頭金ゼロのフルローン」などの表示はありますが、実際は消費税や手数料関係では現金が必要になります。従って、ここの仮定では、ローンの借り入れを起こすためには、ローン借入額の30%の自己資金が必要であるという基準で考えます。

自分の土地に600万円の自己資金で注文建築を新築する場合、単純に「自己資金30%」で考えると2,000万円の借り入れを起こすことが可能になりますが、2,000万円の注文住宅に対する消費税(引き上げ後の10%で考えます)は182万円。消費(注文住宅)に使えるお金は1,818万円になります。一般に税金部分は担保価値がないため、この部分を借り入れることは無理なので、この場合自己資金から支払いを行わなければなりません。

そうなると自己資金の600万円は消費税分の182万円を支払うと418万に減少。この場合の借入可能額は1,393万円に減少してしまいます。単純計算で600万円の自己資金で頭金も消費税も賄おうとすると、借入可能額は約1,580万円までとなります。
本来、借り入れができるはずなのに、消費税があるだけで住宅取得時に大きなイニシャルコストが発生するために望ましい住環境を削って対応するしか無くなってしまうのです。事実、建売住宅の計画では買い手側の予算の最大公約数で規模などを決めてますから、買い手側の予算が減る分小さな建築になっていきますし、それは住環境においても大きな差が生じていることになります。

住宅建築の消費税率引き上げは他の物品と比較して大きな消費抑制効果があるように思います。ドイツやイギリス、スェーデンでは居住用住宅に対して消費税(付加価値税)がかからず、イタリアやスペイン、カナダでは消費税(付加価値税)の対象になっても軽減税率が適用されているようなケースもあります。わが国でも平成31年から軽減税率が導入されますが、住宅は含まれておりません。

税収は喉から手が出るほど欲しいと思うので、簡単に安くはならないのでしょうが、こうした問題を回避していくためにはこの際、居住用住宅に対する消費税の転嫁をやめ、消費税分を固定資産税の建物部分に毎年課税していくような方向に改めてみてはどうか?と思うのです。そうすれば消費是非税率引き上げ時の建築界の混乱回避や景気低迷はこれまでの方法よりは和らげられるはずです。

アベノミクスが継続するか否かは総選挙の行方次第ですが、経済成長を継続する前提で考えていくならば、こうした工夫はあってもよいですし、もう少し具体性ある公約を公党のみなさまにはお願いしたいです。