blueglassの向こう側

厚木市議会議員「奈良なおし」の思うことをそのままに

豊洲市場がオープン

2018-10-11 13:14:10 | 政治
豊洲市場がオープンしました。
何やら初日から接触事故と、ターレが燃えるという話も報道されていますが、それが全ての評価というとそんなことはありません。

そもそも人が生きていくためには「食」があり、「食」をめぐる問題は人の生存にとって一丁目一番地に位置していると思います。

我が国においては、戦後、高度成長期におけるイタイイタイ病(工場の金属廃液が原因)、水俣病(工場の廃液が原因)など公害の問題から始まり、1990年代では雪印集団食中毒事件や、O157による食中毒、BSE問題、偽装牛肉問題などを経て、消費者の食に関する関心は高まりを見せ、食品の安全性の確保について基本理念を規定した食品安全基本法が2003年に制定されました。

ここで例示した流れでもなんとなく見えることですが、食生活の状況も戦後と今では大きく異なります。
かつては生鮮野菜や食肉、鮮魚を買って自ら調理してきたものでしたが、加工食品を購入してそれを食べる時代に変わってきていますよね。それは、我々が口にする食品が原材料段階から消費者の口に届くまでの工程数が増えている事を意味しています。

そうなりますと食品の安全性を確保することは戦後のそれと、今では大きく意味が変わってきているのです。

なにも食に関する関心はなにも日本に限った話ではなく、米国においても1990年代に入ってから、それまで宇宙食の衛生基準としてきた規格を準用して適用範囲を拡大し、HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)対応が実践されるようになっています。

ちなみにHACCPとは、「食品にかかる危害要因を特定し、製造における重要な工程を決め、科学的根拠に基づいた基準を満たしているか継続的に監視することによって、すべての製品の安全性を出荷前に保証しようとする衛生管理法」をいいます。

細かな部分についてはネットで検索いただければと思いますが、一応、建築士の観点から「施設」に絞って申し上げると、

1)施設内における設備・付帯設備の位置、食材・資材の位置、作業員・空気の動きを平面的にプロットし、
2)施設内の各区域を汚染レベルにしたがって、洗浄区域と非洗浄区域に区分けし、
3)そのことで病原菌や毒性化学物質の危害要因がどこにあるか?、どの作業工程で汚染の可能性があるのか?を検証する

そのことで、必要に応じて施設の改善(模様替え、改造、増改築、或いは新築)を重ねつつ、食品の事前リスクを回避していくことが求められている…と書けば伝わるでしょうか。リスク管理を行う必要性は国際的な共通認識ともいえることなのです。

従って、対応ができていない全国各地の市場では建て替えが進んでおり、つい先日は神奈川県内でも「三浦市低温卸売市場」がオープンしたばかりです。

前置きが長くなってしまいましたが、つまり時代の流れは衛生管理であって、もちろん、豊洲も有害物質の懸念でオープンがずれましたが、この件は今後もしっかりモニタリングと情報公開を進めてほしいと思います。また、その上で、築地市場は、誰でも入れる開放型(どこから何が飛んでくるかわからない)で、移転に伴いネズミの大量発生が懸念される報道がありますが、このことは豊洲の安全性なんて消し飛ぶくらいの不衛生さを示す話であることは忘れちゃいけない事実なのだと思います。

ブロッキングについて思うこと

2018-10-10 18:42:16 | 政治
今年の春ごろまで「漫画村」というサイトがありまして、ここでは市販の漫画をスキャンしてデータベース化。誰がどう考えても著作権法違反という状況があって、政府が緊急対策として民間通信事業者へ自主判断を促し、結果として一般の方から当該サイトへの通信を遮断(=ブロッキング)し、当該サイトは閉鎖となりました。

このように「ブロッキング」は通信事業者が特定のサイトへの接続を遮断して「誰からも見られないようにする」というもので、漫画村は著作権法違反がベースであり、このほかの適用例としては児童ポルノ関係のサイトでも実施されているものです。

一応大義名分はあるんですが、問題がないわけではありません。
まずは憲法問題

日本国憲法第21条
  集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。


21条は表現の自由、言論の自由の根拠条文であり、集会の自由、結社の自由は表現の自由に類するものとして保障されています。更に2項では行政機関による検閲の禁止、そして通信の自由を定める現代日本の骨格ともいえるべき部分でもあります。

インターネットについては電気通信事業法が所管となりますが、この電気通信事業法の179条では「通信事業者の取扱中にかかる通信の秘密を侵すことを禁止」しています。

こういう背景があるので政府の見解としては「法制度整備までの臨時的かつ緊急的な措置」という立場をとっており、政府もどこかグレーなことをしていることの自覚はあるようです。

あまり自慢になりませんが、私のネット歴はかれこれ25年ぐらいあります。パソコン通信当時からネット上には良くも悪くも「既存メディアにない独特の自由」があり、色んな声が飛び交って参りました。実際、こうした「自由」は憲法、或いは電気通信事業法によって支えられている部分があり、本来であれば政府主導によるブロッキングに対して、もっと政治に関わる方が声を上げるべきですが、大義名分がそれなりにあったり、或いは政局に持ち込めないなどの理由で、議論は行政府と法学者などを中心に行われているようです。

よくよく考えなければいけない部分は「政府の判断で民間通信事業者へ自主判断を促してブロッキングができる」ということは、時の政権の考えによって、解釈の濫用が可能になってしまう可能性はゼロではないはずなんです。
別に著作権違反や児童ポルノを推奨する意図はありませんよ。
ありませんが「法」を考えた場合、避けられない議論になるかと思います。

漫画村のケースでは「漫画原作者の権利が侵害され、且つ、出版社の売り上げ減」が大義名分ですが、同様の事例はyoutubeやニコニコ動画でもあることです。こうなるとYoutubeですらブロッキング可能という理屈になります。

ブロッキングの是非については法令も無ければ(検討はされているが、憲法上の課題が解決しない上、憲法改正じたいの動きも進みそうで先行き不透明なのでフリーズしているような感じ)、司法による判例もありません。そんな中、表現の自由、知る自由、通信の秘密への制限が無く、且つ、時の政権による濫用が防がれるような形で、いわゆる「公共の福祉に抵触」するような場合にのみ、ブロッキングが合憲なものとして対処できるよう考えなければならないと思います。

これまでの議論としては、こうした表現の自由の問題が解決しない限り違憲であり、法制化が難しいという軸足を置く勢力と、出版社など権利者側の(アンダーグラウンドのサイトは)「海外サーバーに置かれるなどして、運営者の特定ができず(国内法では)対処できない」ことからブロッキングの法制化を目指している勢力に分かれています。

しかし、本日更新のBuzzFeed Newsでは、日本の弁護士(カルフォルニア修での弁護士資格をも持つ)が米国での訴訟手続きを通じ、データが置かれたクラウドフレア本社がある米国で民事訴訟を提訴。その上で、証拠開示手続き(ディスカバリー)を行い、クラウドフレア社から漫画村に対する課金関係の資料を取り寄せ、漫画村運営者の特定を試みた結果、特定に成功したと報じられていますので、そのことで対処が可能であれば、安易なブロッキングには賛同しかねます。

どうしても進めて行くのであれば、憲法21条を帝国憲法29条にあるような「法律の範囲内」と一言入れて改正をするか、公権力による濫用防止や当事者の手続き保障的な視点から、裁判所が求めによりブロッキングを行えるようにできるのが現実的な所かな…と思ってます。