昨日の国会でこんなやり取りがありました。
玉木代表(希望)「東京オリンピックで選手村をはじめとする施設で国産の食材をどれだけ出せる見通しでしょうか?」
野次「都知事に聞いてこいよ!」
議場「www」
この様子は様々なまとめサイトが書いているので、割愛しますが、今日はこの話の背景について書いてみたいと思います。
東京五輪を巡る国産食材には懸念材料があって、調達基準に含まれているGAP(農業生産工程管理)の国内農家の認証取得が急務になっています。
GAPとは Good Agricultural Practice の略で、農産物の生産や出荷の過程で、病原性物質や有害物質が混入しないよう管理すべきポイントとなる基準がまとめられ、第3者機関からの認証を受けるものです。
↓基準の一部(JGAPでgoogle検索すると見られます)
我が国の農業は国内消費向けの作物がほとんどでしたが、神奈川16区選出だった故・亀井善之さんが農水相になった2003年ごろ、農作物を輸出に打って出る「攻めの農政」を打ち出して以降、輸出対応策としてGAPは着目されてきたというのが私の認識です。認証取得に際しては農薬保管庫に鍵をかける、或いは、農産物を保管管理する場所の蛍光灯にカバーをかけるなどの対策が求められるなど「現地の対策」にコストがかかるほか、ISOなどと同じで10万円~30万円程度の審査料(規模による)に、年間数千円の登録手数料がかかり、認証じたいの認知度が低いほか、価格に転嫁することもできないため農家としてのネックとなり認証が進んでこなかった経緯があります。
一方、我が国の農作物の輸出は2020年に1兆円規模にする事を目標に伸びてきており、2015年は7500億円市場になるなど、年々拡大が続いています。しかし、世界的にみると農業生産額では世界10位であるが、輸出は60位にとどまっています。国際認証のG GAP取得が進むとEU圏に輸出が拡大するため農水省は認証取得を推進しています。このほか認証にはメリットがあり、例えば、日本国内では福島の農作物はいまだに風評被害から逃れられまぜんが、認証取得により安心安全を立証することもできる手段となりえるものと考えられます。
さて、話題を戻して、東京五輪との問題なのですが、大会期間中に約1,500万食を提供する見込みとなっており、東京五輪・パラリンピック組織委員会は提供する飲食物に際して、その食材は安全衛生に配慮しながら我が国の食文化を発信する機械であると意気込んでいます。一方、五輪における食材の調達基準は大会ごとに組織委員会が定めており、2012年のロンドン五輪から安心安全面については重視されてきており、GAP、或いはGAP相当の認証が調達要件に組み込まれるようになってきました。
昨年12月、東京五輪組織委員会では以下の認証取得を食材の調達要件として発表を行いました。
1)国際基準である Global GAP
2)日本基準である J GAP
3)農水省ガイドラインに沿った 都道府県GAP
農水省の資料では1)と2)でも全国で4600の農場と全体の1%未満でしか取得できてないほか、3)についても5つの県にとどまっており、大会2年前に8割の取得が進んでいた2012年のロンドン五輪と単純比較しても出遅れ感は否めず、対応が急がれます。悪い書き方をすると、せっかくの東京五輪なのに、日本国内でのGAP認証が進まない為、日本食を輸入食材で提供するようなケースが増えてくることも想定されるはずなのです。
そういう背景が玉木さんの質問にはあるので、認識としては間違って無い一方、矛盾もあります。
そもそも、東京五輪の食材はGAPの考え方からすると、築地市場の様な外気にさらされる開放型の市場からの搬入は許されず、豊洲の様な閉鎖型市場でなければ対応できないはずであり、希望の党の小池知事が行っている豊洲への対応と明らかに矛盾が生じるように感じます。
「都知事に聞くべきだ」という議場のヤジですが、提供できる食材数と併せて、提供を支えるインフラがどのようになっているのかを併せて聞いてくるべき話なのでしょう。