台風15号通過に伴い、被災された皆様に謹んでお見舞い申しあげます。
電気や水、ガスなど、生活に必要なインフラ施設をライフライン(=命綱)と呼ぶことをつくづく痛感する台風と感じています。
記録的な暴風で電柱じたいが倒れたことに加え、倒木、飛来物により多数の電線が損傷するなどして大規模停電が長期化している状況があり、今回は復旧するとしても、温暖化などで同規模の台風は今後も起こりうるものでしょうから、やはり電線地中化は長期的に必要な施策なのでは無いかと、改めて感ずるところがあります。
国では2016年に「無電柱化促進法」を制定し、防災、景観向上のために国は無電柱化を促進しています。2020年までに全国の道路1400キロの整備計画も策定され、2018年9月に関西を直撃した台風による大規模停電発生を受けて、さらに1000キロが追加されています。
日本は無電柱化後進国です。ロンドンやパリの主要都市、アジアでも香港、シンガポールの主要都市では、ほぼ100%の整備率に対し、日本は東京23区でも8%、大坂でも6%ぐらいです。ソウルでは50%に迫る勢いで無電柱化が進められています。
過去にも幾度となく地中化の議論はあったものの、戦後、素早い復旧復興を考え、とりあえず電柱を立てていった所に、あまりの経済発展が進み、整備する間もなく、次々に立てられてしまったのが今の電柱であるそうです。都市計画が計画通りに進まない日本らしいといえば日本らしい理由なのですが、今後、人口減少の問題も踏まえると災害時に復旧に回る人員も減ってくるわけですから、災害の影響を受けないライフラインの構築は急務でしょう。
ネックとなっているのが費用と技術で、国交省などで検討が進められている方式は、①電線を直接埋める方法(=直接埋設方式)、②小型の箱や配管を埋めて、そこに電線を通す方法(=小型ボックス方式)で、費用の関係式は②>①です。概算ですが①直接埋設方式は②小型ボックス方式の半額以下で整備は可能ですが、①は電線の素材強度を上げないと通行する車両重量によって断線や漏電の可能性があります。漏電の場合、地中を電気が迷走し、他に埋設されている金属系の配管をダメにしてしまう(=簡単に言うと穴が空く)恐れもあります。
技術的な課題検証は国土交通省はじめ、各メーカーでも進んでおります。電気が止まって、水が止まり、携帯電話すら使えなくなる現代のインフラの弱さを台風15号の教訓として肝に銘じて行く必要があります。