失われたメディア-8cmCDシングルの世界-

50円とか100円で叩き売られている8cm CD singleを見るとついつい買ってあげたくなることはないか。私はある。

「THE LOCOMOTION」 STEWART & GASKIN 1988年

2006-04-17 | 
カンタベリー系8cm。

プログレは極論すればヨーロッパ、特にイギリスのムーヴメントと言ってしまっても…いや、ドイツもイタリアも凄いのあるけど…まあ、いいでしょう。英国的(あるいはヨーロッパ的)な暗さはプログレを考える上で重要なファクターである。クリムゾン、YES、ELPといったビッグネームの間では、メンバーの人事異動、ゲスト参加、バンドの解体・再編が頻繁に行われ、マニアさんの間での、記憶力合戦の格好の舞台となっている。ピンク・フロイド、ジェネシスなんかは比較的独立したファミリー・トゥリーだが、歴史が長いのでやはりメンバーの出入りが混乱を招く。そのあたりのややこしさがプログレ界の敷居の高さの一因か。

プログレの中でも音楽的・地理的に独自の発展を見せた一群、人呼んで「カンタベリー派」。まあ、ロンドンとそう離れてないんだが。ソフト・マシーン、キャラバン(この2バンド、もとはといえば「ワイルド・フラワーズ」が分裂したもの)に続いて3番目に名前が上がるのは、ハットフィールド&ザ・ノース。

デイヴ・スチュワートはハットフィールド&ザ・ノース~ナショナル・ヘルスの中心メンバーとして活躍。同バンドにもコーラスで参加していた元スパイロジャイラのヴォーカリスト、バーバラ・ガスキンと、80年代にこのヒネリのないネーミングのユニットを結成した。一応確認しとくと、ユーリズミックスの人とは別人。

日本盤なのにタイトル、アーティスト名ともに英語表記のみ(切り取られたジャケット下半分には日本語表記があったのだろう)。DAVE STEWART & BARBARA GASKIN(デイヴ・スチュワート&バーバラ・ガスキン)が正式なアーティスト名だ。

①THE LOCOMOTION (extended version) (10:14)
Part I-The Great Train Disaster
Part II-The Aftermath
(Carol King/Gerry Goffin)
オリジナルはリトル・エヴァ(1962)、グアンドファンク・レイルロード(1974)、カイリー・ミノーグ(1988)のヒットでも有名なゴフィン/キングの名作をカヴァー。今気付いたが、カイリーと同じ年にひっそりとカヴァーしてたんだ。バーバラのクールな声が工業系の機関車リズム(汽笛も聞こえる)に乗る。間奏のキーボードの音色、組曲という時代錯誤な構成と全長10分超という大作主義にプログレ魂を見る。カンタベリーぽいかと言われれば、特別そんなことはないんだけど。尚、パート1が6分20秒、最後は衝突音で終わる(だからDisaster)。続いて何事もなかったように始まるパート2はヴォーカル少なめのヴァージョン。

②Make Me Promises (6:42)
実は①もだが、作者のクレジットなし。どうしてか。おそらくオリジナル。トレイシー・ソーンをさらにクールにしたような美声の持ち主、バーバラ・ガスキン。テクノ系サウンドとの相性が良すぎる。

定価不明。中古で100円。
ジャケはロシア構成主義?どっちかというと未来派か?
珍しくCD番号が気になった。「MDS-1」ってMIDI(のdear heartレーベル)からのCDシングル1枚目ってことだろうね。

プログレと言えば、先週のムーンライダーズ・バンド内ユニット特集のライブで白井良明の「サーフ・トリップ」というバンドを見た。ヴァイブを中心に据えたおよそロックバンドらしからぬ編成で、クリムゾンの「RED」をやったのにはひっくり返った。キワモノすれすれ、クリムゾン原理主義者が聴いたら怒るのかもしれないが、私は滅茶苦茶楽しめた。良明さんもしかして本当はこういうのやりたいのかも、と考えたけどやっぱりライダーズのが生き生きしてるわ、と翌週確認。ああ、今週末はライブないんだ…

なんとなくプログレ周辺の8cmを続けてみたが、そろそろネタ切れ。最後にこれも8センチャーズに教えてもらった、持ってないんだけどプログレ8cmの極めつけを紹介して終了。
高嶋政宏の「STARLESS」(サンプルあり)
クリムゾンの名盤「RED」のラストナンバーを大胆にもカヴァー、というよりコピーというよりモノマネ。あんたもスキねえ。
他にも西城秀樹の「エピタフ」など聞き逃せないサンプルも。



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5 コメント

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高嶋政宏! (Sugar)
2006-04-17 22:39:51
それカップリングなんですよね(笑)。私、一応持ってます。



あと、「フライトレコーダー」(JICC出版局)が中野のトリオにありました。

欲しい方は走れ(笑)!
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Unknown (yoiko)
2006-04-17 23:07:47
ん~ほんと勉強になりますね、フムフム。イタリアとドイツ(はジャーマン?)の再発CDなんかはたまに見かけます(見るだけ…)あ、そうそう!高嶋政宏のクリムゾン好きは聞いたことあります(笑)「RED」の中から選ぶってとこが本気ですね、それ。ヒデキは始めて知った~。
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Unknown (nakamura8cm)
2006-04-18 00:30:10
●Sugarさん

えーっ、いいな。まあ、持っててもあまり聞かなそうではありますが(笑)。今、個人的に軽くクリムゾン・ブームが来てるもので。

「フライトレコーダー」は持ってます。誰か走るかな?



●yoikoさん

ドイツはジャーマンでOKよ(笑)。

やっぱ、人気曲はStarlessかEpitaphでしょうね。Book of SaturdayあたりをシングルのB面でやったら渋いと思うけどね。逆に21st century~とか攻めてみるもよし。ヒデキなら不可能ではないか。
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あいざき進也!! ()
2006-05-14 02:33:28
ご無沙汰しております~(泣)。ネットできなかった時期がいかに長かったかとアチコチ回って実感しております。しかしこの記事は何ですか、師匠!!凄すぎです。というか師匠に苦手なジャンルなし!カンタベリー、プログレ…ホント、勉強になるなぁ。高嶋兄の登場とは恐るべき8cmの世界!しかしあいざき進也とは…(笑)。
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おお (nakamura8cm)
2006-05-14 11:57:45
改めまして、復帰おめでとうございます!

80年代洋楽モノ、やっぱり祥さんがいないとね。このシリーズではプログレ中心にいこうと思ったのですが、それほどネタがありませんでした(笑)

カンタベリはワイアットから入りましたね。大好きです。

あいざき進也!サンプルでは歓声にかき消されてヴォーカルがあんまり聞こえない…
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