失われたメディア-8cmCDシングルの世界-

50円とか100円で叩き売られている8cm CD singleを見るとついつい買ってあげたくなることはないか。私はある。

「異邦人」 久保田早紀 1979年

2014-02-08 | 
久保田早紀のデビューヒットと4thシングルのA面曲カップリング。

ブルボン「J'sポップスの巨人たち」シリーズの「フォーク/ニューミュージック黄金時代編」の一枚として2003年に発売された食玩8㎝。食玩では珍しい2曲入り。どうでもいいけど「J'sポップス」って何か新鮮。

同シリーズから南沙織「17才」と一風堂「すみれSeptember Love」を以前紹介した。


①異邦人
作詞・作曲:久保田早紀、編曲:萩田光雄
久保田早紀の名実ともに代表曲。現在も久米小百合として音楽活動を続けているが、一般的には久保田早紀=異邦人。当時私は11歳か。リアルタイムでTVで聴いたインパクトははっきり覚えている。オリエンタルとかシルクロードとかよくわからん小学生にも何となしに異国情緒を感じさせる、王道歌謡曲とは違うテイストをもったヒット曲だった。萩田光雄のアレンジも力が入っていて、まずあのガツンとくるイントロでもっていかれる。憂い漂うAメロが、久保田さんのやや硬めで影のあるヴォーカルと合っていて最高。ファド好きと聞いて、納得。「空と大地が~」のBパートで急に広がりを見せ、傷心女子ひとり旅の孤独とともに、異国で何者でもなくなったような開放感も表現される。Aメロのメランコリーとの対比が見事。CはAメロの変奏で、また憂欝にもどっていく。すべてがガッチリかみ合った、非の打ちどころのない3分44秒。こりゃヒットするわ。
ところでジャケットのタイトル右に小さな文字で「シルクロードのテーマ」と入っている。解説には「シルクロード・ブームにのって」なんて書いているけど、一般的にブームの火付け役とされる、喜多郎のテーマ曲でお馴染み「NHK特集シルクロード」は1980年からの放送なので「異邦人」のが先。ジュディ・オング「魅せられて」(1979)につづくプロデューサー酒井政利のエキゾチック路線だったようだ。細野晴臣「絹街道」(1975)の影響はなさそう。

②オレンジ・エアメール・スペシャル
作詞:山川啓介、作曲:久保田早紀、編曲:萩田光雄
さらなるヒットを期待されたが、結果としてデビュー作を超えるヒットは生まれなかった。この4枚目のシングルでは、大幅な路線変更を試みている。タイトルから想像されるとおり、カラフルなポップスを狙った曲。メロディはなかなかポップだと思うが、残念ながら久保田さんの声質に合ってない。

定価不明(300円くらい)、中古で105円。
2枚のシングルのジャケットを載せているのはもちろん、ライナーも充実。「楽曲情報」としてそれぞれのジャケの下に解説があり、その右には「あの時代」というミニコラムで時代背景、流行語などを紹介。さらに裏には田家秀樹による詳細な「アーティスト解説」、ディスコグラフィーと、過剰なほど丁寧な作りに今さらながら驚く。


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3 コメント

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Unknown (3rd=D)
2014-02-08 13:50:16
私も箱ごと所有していますが、定価は書いてなかったです。
一風堂もあった第2弾は税抜き330円だったそうです。
http://www.bourbon.co.jp/static/pdf/NR-86.pdf#search='j%27sポップスの巨人たち'
珍しく凝った内容だったなという印象ですが、歌詞カード面も再現して欲しかったかなという気もします。
Unknown (nakamura8cm)
2014-02-08 18:25:36
おーこれまたマニアックな文書のリンクありがとうございます。
第二弾、だいたい納得の選曲ですが、チェッカーズだけなんでコレ?と思いました。

ブルボン本社って柏崎市にあるんだ~
マルテンサイト千年 (グローバルサムライ)
2024-05-18 22:00:50
最近はChatGPTや生成AI等で人工知能の普及がアルゴリズム革命の衝撃といってブームとなっていますよね。ニュートンやアインシュタインの理論駆動型を打ち壊して、データ駆動型の世界を切り開いているという。当然ながらこのアルゴリズムにんげんの考えることを模擬するのだがら、当然哲学にも影響を与えるし、中国の文化大革命のようなイデオロギーにも影響を及ぼす。さらにはこの人工知能にはブラックボックス問題という数学的に分解してもなぜそうなったのか分からないという問題が存在している。そんな中、単純な問題であれば分解できるとした「材料物理数学再武装」というものが以前より脚光を浴びてきた。これは非線形関数の造形方法とはどういうことかという問題を大局的にとらえ、たとえば経済学で主張されている国富論の神の見えざる手というものが2つの関数の結合を行う行為で、関数接合論と呼ばれ、それの高次的状態がニューラルネットワークをはじめとするAI研究の最前線につながっているとするものだ。この関数接合論は経営学ではKPI競合モデルとも呼ばれ、様々な分野へその思想が波及してきている。この新たな哲学の胎動は「哲学」だけあってあらゆるものの根本を揺さぶり始めている。こういうのは従来の科学技術の一神教的観点でなく日本の独創とも呼べるような多神教的発想と考えられる。

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