なかちゃんの断腸亭日常

史跡、城跡、神社仏閣、そして登山、鉄道など、思いつくまま、気の向くまま訪ね歩いています。

大座礼山の大ブナ(2015 5 10)

2015年05月31日 | 登山


 新緑のブナ林ほど美しいものはない。独特の木肌模様を見せる一本のブナも美しいが、やはり林立した景観こそがブナの美しさの神髄だ。
 森のなかをひとり歩いていると、まるで緑の海底にいるようで、日頃のストレスや疲れはどんどん身体から抜け出し、安らかで神聖な気持ちになってくる。外界の騒音は遮断され、聴こえてくるのは吹きわたる風の音と小鳥の鳴き声だけ。見上げると新緑の若葉が、陽の光を浴びてキラキラ輝き、そよ風という音楽に合わせて踊っている。
 ライトグリーンの若葉は、日光を浴びてせっせと光合成を始め、二酸化炭素を取り込んでは酸素を吐き出している。森はできたての酸素で充満し、思いっきり胸いっぱいに吸い込んでみると、全身の血液や細胞が浄化されていくようだ。
 だから山登りはやめられない。

  

 大座礼山(1587m)の大ブナ、初めて見たときはその大きさと樹形に圧倒された。太い幹から天高く張り出した枝は、四方八方に伸び、まるでタコが逆立ちをして足をバタバタさせているように見える。またSFに登場するモンスターのようにも見え、今にも動き出し襲いかかってきそうな迫力だ。
 でも樹齢は決して若くない。人の一生に青、壮、老があるように、この大ブナ達は明らかに老年期に入っている。幹の太さや無数の枝数こそ、他の山では見られないほどの大木だが、木の吐き出すエネルギーが今ひとつ感じられない。
 若々しいブナの木肌は、灰白色と暗白色のまだら模様を見せるが、この大座礼ブナは全体が黒ずんでいる。なかには長年の風雨に晒され倒木してしまったのか、すでに死に体となってその一生を終えているのもある。樹形こそ怪物のような立ち姿だが、樹勢の衰えは隠せない。
 調べてみると、ブナの樹齢は通常200~300年らしい。芽生えから50年で花を咲かせ、80年でやっと実を付け、100年で成長旺盛となる。だから人の3倍から4倍の年月をかけその一生を全うしている。
 そして成長段階では根から毒素を出していて、一定の距離内では元気なブナだけが生き残り、その過当競争に負けたブナは枯れていく。それが適度な間隔の立ち姿でブナ林を美しく見せている所以だ。乱立することなく一本一本が威厳と風格を主張できるのも、そんな生態系からきているようだ。

 

 そんなブナと我が身をどうしても照らし合わせてみたくなる。
 年ごとに体力の衰えを感じる昨今、朝は早く夜中はトイレが近い。山登りも途中から萎えてくる。それではダメだと自分に言い聞かせるが、踏んばりがきかない。気持ちはあっても身体がついてこない。そして冷蔵庫を開けても何を取ろうとしたのか忘れ、2階へ上がっても何をしようとしたのか思い出せない。新聞は見出ししか見えず、耳も時々犬の遠吠えさえ聞こえる。
 今の私の立ち位置は壮と老の狭間か?でもこの大ブナを見ていると、老年になり立ち枯れていようと、綺麗な空気を吸って毒素だけはずっと吐き続けたいと思った。

 




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4 コメント

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大座礼山のブナ (Nabe)
2015-06-02 17:01:46
なかちゃん、がんばれ~
と思わず書いてしまったが
なんや、自分の事でもある。
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ありがとう (なかちゃん)
2015-06-02 18:28:43
このブログを始めて約1年、コメント第1号はやっぱりなべちゃん、ありがとう。立ち枯れるまでお互い頑張ろうぜ
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そしたら (わるこ)
2015-06-02 19:44:59
私も書きましょう。さすが文学部。体利かなくなったら物書きも良いんじゃない?
何を隠そう私も鍛えが足らないのでガタがきつつあります。
がんばろ。
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おっ! (なかちゃん)
2015-06-03 02:37:22
わるこさん、コメント第2号。
さすが朝倉組のつっこみ、
いつもお見事です。
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