女王(じょおう)  連城 三紀彦 著

2015年01月31日 | 読書
まず最初に余談ですが、「女王」はじょおうと読むのが正当らしい。
エリザベスじょうおうなどと発音するので
てっきり「じょおう」は、この作者が特別にそう読ませているかと思いましたが、
読み終わってネット検索してみると、「女王」の読み方について延々と語っているブログに出会いました。
旧かなでは「ぢよわう」と書くそうで、言葉ひとつにも深いものがありますね。


それはさておき、ここでの女王は卑弥呼の事であり、
もう一つ、男を支配する強い女性<主人公の妻>の事も暗示しているというタイトルのようです。
妻・加奈子さんは古代史学者なのですが、主人公の祖父(荻葉祇介(おぎはぎすけ)古代史学者)、
祖父の弟子の学者有沢、小浜署の村木刑事の三人を魅了する女性なのですね。

物語は昭和54年、29歳の主人公(荻葉史郎)が自身の不可解な記憶の世界を
医師(瓜木)に相談するところから始まります。
史郎は祖父に溺愛されて育ちましたが、12歳以前の記憶が欠落している一方で、
逆に生まれる以前の東京大空襲の記憶があったりするので、自分が本当は何歳なのかと悩んでいます。

遡る事7年前の昭和47年の暮、祖父祇介のもとに一本の電話が入りました。
何故か狼狽した祇介は奈良県吉野に向かいますが、翌日福井県小浜で死体で発見されます。
捜査の結果は自殺と判定されましたが、謎は深く残ります。

この二つの謎が、長い物語の中で右往左往しながら少しずつ解き明かされていきます。
さわりを羅列すれば、
史郎の妻加奈子さんを結婚相手に選んでくれた祖父は、実は加奈子さんを流産させていた。
先祖で江戸時代生まれの荻葉春生(歴史学者)の残した2冊のノートに謎を解くカギがあり、
春生の記憶なのか妄想なのか、話は南北朝時代・南朝最後の後亀山天皇の時代へ、
さらに古代の卑弥呼の時代にさかのぼって展開します。
タイムトラベルSF小説ではないかと思えばやはりそうではなく、合理的な解明がされていきます。

一方、最初の相談時点から十数年後、46歳の史郎は瓜木医師から病気解明についての連絡を受け、
その後、史郎、加奈子、瓜木医師の三人で、吉野、小浜と事件の跡を辿ります。
邪馬台国の九州説、大和説の魏志倭人伝の文章の解釈問題を含めながら、史郎の記憶が徐々に戻り、
加奈子の告白、瓜木医師の解明、さらに有沢、村木刑事の真実など、簡単には要約しきれない、
これでもかこれでもかというような、心の闇と事件の闇の謎解きが展開して行きます。

謎解きの冗長さに少なからず飽きて投げ出しそうになる時がありながら、
ここまで読んだのだから読み遂げなければと気持を切り替え、
深夜に目覚めて読み直しを始めると、またすっかり引き込まれたりもしました。
ドロドロした話に聞こえるかもしれませんが、スッキリと静謐な感じで書かれているので、
じっくり読む人には謎解きの醍醐味が十二分に味わえる一冊かも知れません。
・・・途中で何度か挫折しそうになりましたが、読み終わった満足感に浸っています。・・・


2 コメント

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Unknown (きりぎりす)
2015-02-02 16:38:18
今日は。久々の書評ですね。貴兄にはいろいろな作家を紹介してもらいました。違うものですね、有川浩も面白く読ませてもらいました。連城三紀彦は読んだことがありません、一度試してみようかな。

友の読む小説で知る闇の謎
謎解きは夜のしばしのお楽しみ
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連城三紀彦 (gouza)
2015-02-02 23:01:33
連城三紀彦は1948年愛知県生まれで我々世代ですが、2013年10月に亡くなっています。「女王」は15年前以上に雑誌連載で書かれたのですが、作者が亡くなって一年後、ようやく単行本になったという本でした。朝日新聞の読書欄に紹介されていたのでトライした次第です。
ネットで調べていたら「小さな異邦人」という短編集が面白いと書いてあったので、早速図書館で借りてきました。3冊あった中で2冊は借り出されていたので結構人気があるようです。

春浅し日差しあれどもふるえけり
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