「私の従軍記」 子供たちへ

平成元年父の誕生日に贈ってくれた本、応召されて帰還するまでの4年間の従軍記を今感謝を込めてブログに載せてみたいと思います

タケゴン 6

2006-07-11 19:31:30 | Weblog
 ある時、宮原隊長が各分隊を回り、タケゴンに到着する日時を知らせてきた。
その日は舎内の整頓、整理を早々に終わり、待てども待てどもやって来ない。夜になっても未だこない。
 「今日は来ないのだろう」と非番の者はベッドに入ってウトウトしていた。すると、遠くから
 「藤森軍曹、宮原が来たゾー!」
と、大声で怒鳴ってこちらに来る者がいる。
 「分隊長殿、中隊長殿が来られましたッ」
私は大急ぎで分隊長を起こした。全員起床、整列、ガタンと戸を開けて、中隊長が入ってきた。
 「わしが来ると分かっているのに、なぜ出迎えなかったかッ」
 「ハイッ」
と分隊長は敬礼をした。ほの暗い電灯の下で見ると、左手でモンキーを抱いて、妙な格好であった。
 宿舎では蚊帳を吊っていたが、俄かに2人増えたので私は蚊帳のギリギリのべッドに寝る羽目になった。