熱中症で倒れて入院中の友人を見舞ってきた。
その友人は、離婚・職をよく変え、最後はマンションの管理で、年金プラス給料で
一人、アパートで暮らしていた。
毎日、酒を飲み、約束の時間も忘れ、
ときには約束の時間に十分間に合うのに
タクシーで1万円もかけてやって来ていた。
要は理解に苦しむ行動がいくつかあった。
話す内容や受け答えが気にかかっていた。
友人としての注意もしてきた。
そのたびに
「上から目線でいう!」
「おれをバカにしてるのか!」
という始末。
それでも
注意はしていた。
顔は酒で膨れ、顔相も変っていた。
トボトボとあるく姿が
悪いがホームレスやアル中患者の様だった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
彼の兄さんから連絡が入った。
「奇声を発するので、一般病室は無理なんです。」
何?やっぱりか!
アル中になってしまったと頭を過ぎった。
・・・・・・・・・
友人二人と様子を見に、病院へ。
看護婦が「いつもは○○号なんですが、暴れるので、こちらです」と案内してくれた。
病室はがら~んとしていて何にも置いていないと言ったほうが適切な状態だった。
隣のベッドに一人。
窓際に一人の計3人が「収容」されている。
本人を確認。
唖然として、言葉がでない。
両手にボクシンググローブのような手袋を。
身体に目をやると
ベッドに括りつけて身動きがままならない布製のベルトが。
この暑い夏なのに
「今、何月か分かる?」
【う~ん・・・・・・2月・・・・。寒いんだよな~】
「この人だあれ?」と友人を指すと
【・・・・・う~ん、名前が出てこないよ。名前を言ってよ。そうすれば分かるのに。】
かろうじて私の顔を見て名前を言った。
情けなかった。
誰だか見分けがつかない状態だ。
【おれは鉱山を持っているんだ。大変なんだよ。】
「すごいな、その鉱山は何処にあるの?家の裏山にあるの?」
【いいや、何処だっけな~、遠い所・・・・・】
「お兄さんは見舞いに来たの?」
実は電話で私たちが来る二日前に病院と今後の扱いについて相談し、
介護保険認定を受けることになっているのを知っていたが、
そのことを知っていながら訊いてみたのだ。
【いや・・・会ってない。きてないよ~。】
まったく記憶が定かでない状態だ。
単なる熱中症かと思っていたが、
熱中症が痴呆とアル中状態を顕在化したように思えた。
離婚・子供に遭わせてもらえない状態で日常を紛らわせている彼は酒で慰みをしてしまった。
今更、子供に合わす顔がないと思っているにちがいない。
元妻の実家へ連絡はとれるはずだが
それも拒否され続けている。
見舞った3人に
「ありがとう」も
「面目もない」
といった言葉もない。
いや、そんなことすら
意識の中にないような状態なのだ。
あっという間に
歯車がはずれると
こんなに変ってしまう人間の弱さ。
ああ無情だ。
壊れるのを見ているとつらいだろうな。