天下御免のすっとこどっこい

自分が読み返して「楽しかった」と思えることを書き綴っています。

『祇園の姉妹』(1936年)

2014年09月16日 | その他(テレビ・映画)
先日(9/14)京都文化博物館3階のフィルムシアターで『祇園の姉妹』(1936年)を観てきました。

芸妓おもちゃ…山田五十鈴
姉芸妓梅吉…梅村蓉子
骨董屋聚楽堂…大倉文男
呉服屋の番頭木村保…深見泰三

監督・原作…溝口健二


祇園乙部で芸妓として働く姉妹の物語。
義理人情に厚い姉芸妓梅吉と男を手玉にとり要領よくお金を貢がせる妹のおもちゃ。
対照的な二人だが、二人とも結局男に捨てられてしまう。

当時(昭和11年)の現代劇なのですが、時代劇感覚で見てしまいました。

歌舞伎でも見たことのない煙管のしぐさ。特に男の人が女の人に煙管を渡して、女の人が煙草をつめて(口でくわえて)火をつけて男の人に渡す。
それから紙巻たばこも火鉢があれば直接炭につけて火をつけたり。
かなり新鮮でした。

新鮮といえば、山田五十鈴さんの登場シーン、シミーズ姿で歯磨き。そしてスカートをはいて、半そでブラウスを着る。
今でも着てみたいようなまっすぐなロングスカートに袖がふわっとした小さめの白い(たぶん)ブラウス。それに日傘。かわいい。
呉服屋の旦那さんとのどこかの百貨店?ホテル?の展望レストラン?デートのときのチェックのワンピースにまた小さめの白いベストがかわいい。

全編京都弁、早い早い。さすが大阪人の私でもところどころわかりにくいところがありました。「そんなテンゴ言いないな。」とか、「ジンケンの工場の支配人」がわかりませんでした。
後で調べてみると「テンゴ」とは「冗談」のことで、「ジンケン」は「人絹=レーヨン」のことでした。(人絹は普通の単語ですね。)
あと京都弁やなあと思ったのは「おぶも出さんですんません。おぶ替わりにビールでもどないどす?」(←ちょっと違うかも。)とか、お茶のことを「おぶ、おぶ」と言っていたところです。
懐かしかったのは、「行ってきます。」「早よお帰りやす。」とか八坂さんで知り合いに会って「こんにちは。」「ようお参りやす。」とかいう会話。
「早よお帰り。」は昔よく学校へ行くときに家族に言われてたなあと。

本当に山田五十鈴さんの妖艶なお色気にクラクラきました。
なじみの呉服屋の番頭をそそのかして、それを注意しに来た旦那を巧みな話術とお色気で旦那にしてしまうおもちゃ。
その件では場内笑いが出ていました。おもちゃの色っぽいしぐさ、目線、言葉ひとつひとつがものすごく、旦那もだんだん鼻の下が伸びていく様子も名演でした。

おしまいは結局だましてしまった呉服屋の元番頭に痛めつけられ病院に入院したおもちゃ、世話をしていた元なじみのおちぶれた呉服商に結局捨てられた姉、「どっちにしても芸妓は不幸な商売、のうなってしもたらええんや」というベットの上でのおもちゃの嘆きでスクリーンは「終」の一文字。

まったく救いようのない結末に客席がどよめきました。私にとってはこんなことめったにないことです。
私も「えーーーっ!」と言ってしまいました。

よく考えてみると、今でも義理に生きるか、打算的に要領よく生きていくか、どちらにしてもどうなんかなという場面があるかと思います。
ちょっと考えたくない現実を芸妓姉妹を通して描いたところがこの作品の良いところかと思います…。が、やっぱりあまりにも悲惨すぎます。うーーーん。

残念ながら30分ほどフィルムが紛失してしまっているそうです。
もしかして結末は違っていたのかなと、思っておこうと思います(いや変わらないかな)。

祇園の姉妹 [DVD]
溝口健二
松竹ホームビデオ

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