その①の続き
表向きは中立国のスウェーデンが、外国の戦争で儲けているのは何も第二次世界大戦以後ばかりではない。映画『ドラゴン・タトゥーの女』を見て記事を書いた時、検索してヒットした「ヒトラー時代の対スウェーデン外交」は実に興味深かったため、ここから一部引用する。
「大戦中ドイツは、スウェーデンからの鉄鉱石をほぼ独占することができました…1944年には、鉄鉱石のドイツへの輸出量は最大になっています。ハンガリーやルーマニアの石油と並んで、スウェーデンの鉄鉱石はドイツが戦争を継続するうえで必要不可欠なものでした」
「そもそもドイツとスウェーデンは歴史的に見て関係の深い国です…ヒトラーが登場する以前からドイツとスウェーデンは陰の部分でつながっていました。工業を振興させたいスウェーデンと対ソという利害が一致していたことも要因です」
まさにスウェーデンの繁栄は戦争のおかげだったのだ。石油こそ産出しないが上で引用したサイトにも、「大戦前のスウェーデン鉄鉱石産出量は、同時期の世界全体産出量の10%以上あり、しかも良質なもの」とあり、これだけでも日本から見れば羨ましい資源大国でもあった。
「武田龍夫『福祉国家の闘い』中公新書」という書評記事も読ませられる。「外交官として長年スウェーデンに住み、スウェーデン語に堪能な著者による本」であり、「重要な収入源として兵器輸出活動は古くから堅持し続けて全世界におよぶ」そうだ。
著者はスウェーデンを「成熟した民主主義が実現され、かなりの範囲で国民の要請に誠実に応えており、かなり良質の政治・社会を実現している」と評価しつつ、「一部「識者」が唱えるようなスウェーデンへの妄想にもとづくかのような全面的礼賛・賛美に対して強い警告をならしている」という。
近年スウェーデンが移民の激増により犯罪が深刻化、特に女性への性的暴行では欧州一であることを解説するサイトもある。性犯罪はデリケートな問題であり、果たしてスウェーデンがレイプ大国であるかは興味本位で書き立てる記事だけでは判断できない。的外れなので敢えてリンクしないが、ある女ブロガーがこんな一文を書いている。
「犯罪統計における一番の問題は統計の比較性の問題である。 具体的には国によって何を犯罪に含むかが異なり、また統計の取り方が異なる…強姦に関しては、日本と国際基準との隔たりは歴然としています…」
一方、欧米マスコミ事情に詳しいブロガー黒木頼景氏は、「狙われたスウェーデンの白い肉 / 移民による強姦の増加」(2015年01月25日付)でこの問題を取り上げている。タイトルの“白い肉”は煽情的だが、記事自体はポルノチックどころか極めて深刻なのはブログ主の次の一文だけで知れよう。
「残酷な強姦事件が頻発しているのに、北欧のメディアは有色移民やイスラム教徒による犯罪だと、事件の核心をぼかした報道を行う傾向が強い」
記事には惨たらしい強姦事件が紹介されており、犯罪者の刑は極めて軽く、国外追放にもならなかったことには絶句させられる。黒木氏は、「イスラム教徒からすれば、北欧女性は性倫理をもたない淫売で、しかも人前でビキニ姿を晒す「ふしだらな女」である。だからムスリム少年らは、スカーフを頭にかぶせず街を歩く女性を娼婦(ばいた)とみなす」と断言しているが、少なからぬムスリムが異教徒の女をこう見ていることを、イスラムへの知識がある者なら知っているはずだ。
北欧のみならず、ケルン大晦日集団性暴行事件が典型で他の欧州諸国も似たような状況らしい。この事件について、ケルン在住のイマーム(指導者)サミ・アブ・ユスフの表明した見解はこうだった。
「女性たちは半裸で香水をつけていたのであるから、女性たちには責任があり、男達が襲おうとすることは驚くべきことではなく、(女性たちの姿は)火に油を注ぐものである」
今のところ日本では移民による強姦はまず起きていないにせよ、隣国系による犯罪では事件の核心をぼかした報道を行ったり、事件そのものが「報道しない自由」扱いになる始末。性犯罪者が同じ日本人だったならば大きく報道するが、スウェーデンでも同国人や東欧出身の白人強姦犯であれば、事件の核心を報道していただろう。
ならば米国の報道は多少はマシかと思いきや、2018年02月18日付で黒木氏は「今回、異例の懲役刑を受けたラリー・ナサールがアラブ系アメリカ人であることを、どのメディアも伝えなかったのは実に奇妙である」と書いている。
高度な福祉が行き届き、平和で豊かな国、といったスウェーデンのイメージは過去のものになりつつあるのだろうか?それともこのイメージ自体、一部“識者”の全面的礼賛・賛美によって作り上げられたものだったのか。
今となってはスウェーデンを全面的礼賛・賛美していた“識者”が、心底スウェーデンを愛していた者ばかりとは思えない。外国の諸々を挙げて日本を貶すのが目的の者がいたのは明らかだし、その類がスウェーデンに永住するどころか、日本に居座っているだけでおかしさが知れよう。ネットのお蔭で、そんな“識者”の幻想説が揺らいできたのは大いに喜ばしい。
◆関連記事:「ドラゴン・タトゥーの女」
「ああ、おフランス症候群」
このような記事もあります。やはり日本のメディアがおかしいようですね。
https://news.yahoo.co.jp/byline/abumiasaki/20160130-00053973/
興味深いコラムの紹介を有難うございます。「北欧症候群」とは言い得て妙ですね。ノルウェー在住の女性ジャーナリストによる情報は成る程、と思う半面、「立場柄、筆者も時に、素敵でかわいい北欧ブランド製造に加担している一人だ」と居直り。
日本のメディアがおかしいのは確かですが、「各国の影の問題や別の見方もあることを一切伝えたがらない・知りたがらない全体的な傾向」は、読者にも責任があると言わんばかり。北欧幻想に加担したジャーナリストの自己弁護ですか。
「私たちが想像していた「幸せな北欧」の姿」も、失笑させられます。自分の想像を日本人全体に転化している。尤もノルウェーに限らず、中東関係者にも同じ手合いがいます。結局、人は自分の信じたいことを信じるのでしょう。
以前書いたことですが、北欧に関する日本人の奇妙な思い込みは、不思議です。
小生は、体質的には、寒い国は嫌いだから、そういう幻想は一切ないけど、単に軍事的側面から言っても、ナチスドイツとか、ソ連とか、困った近隣国に囲まれ苦労してきたことも、北欧の一側面として想起すれば、楽なはずがない。武器の輸出をして稼ぐ、とか、中立国なのに、鉄鉱石をドイツに売っていたとか…裏の顔があるのも当然でしょう。
他方で、そういう現実主義的な、合理主義の知恵も、総動員して生き抜くという国民の団結心もあるようです。ただし、近年は、ブルガリア、ルーマニアからのジプシーたちの移民に困惑したりもしているらしい。結局、ベリー収穫時期に、ブルガリアの業者らが大勢のジプシーを送り込んだけど、実際には細かい打ち合わせができておらず、ジプシー労働者たちは、目的地の農場まで行けず、都会で乞食して問題となった・・・とか、そういう記事もブルのネット紙で読みました。
小生がブルにいた、70年代でも、夏休みにフィンランド人観光客が黒海沿岸に避暑に来て、酒税が安い酒を飲みまくり、毎晩大騒ぎして問題となっていた。フィンランド大使館員は、夏休みも取れず、自国市民の問題処理に追われていた。
酒、タバコの税金が安いので、価格が安いから、自国でできない贅沢をしてしまうという。幸福な北欧と言う概念からは遠いですね。
そもそも、北欧の気候は寒い冬がやたらに長く、太陽も力が弱い。本当に快適な生活は望めない・・・でも、高税率でも、福祉が充実しているから満足・・・という世論調査結果となるらしいけど、日本人が住んで本当に満足できるものか怪しい。おいしい食材も少なく見えるし、小生ならごめんですね。デンマークを含め、のんびり、ゆったりした生活スタイル、と言うことで日本のTVで好イメージがばらまかれるけど、小生なら退屈するだけと思う。
私から見ても、北欧に奇妙な思い込みを抱く日本女性が多いのは不思議です。男女平等の国というだけで好印象があるのでしょうけど、兵役の面をどう見ているのでしょうね?私も軍事面には疎いのですが、北欧を賛美する日本女性に軍需産業のことを訊ねたいものです。兵役もきちんと男女平等にこなしたいなら話は別ですが、それに触れた「識者」などいたでしょうか?
それにしても、ブルやルーマニアからもロマの移民たちが押し寄せていたのですか。尤も彼らはムスリム移民に比べると日本では殆ど報じられなかったし、トラブルは目立たないような…
そしてフィンランド人観光客が黒海沿岸に来て、酒を飲んでバカ騒ぎしていたことは知りませんでした。東北人も総じて酒好きだし、もしかすると酒、タバコの安い国が近くにあったならば、同じことをしていたかもしれません。
私が北欧にあまり関心がないのは、東北人ということがあるのかもしれません。東北も冬が長く、やっと迎えた春はあっという間に終ります。東北の他の県庁所在地よりは温暖でも、仙台さえ冬は寒く、時に大雪になります。雪かきは楽ではないし、北欧よりも南国に魅かれますね。北欧料理よりも南欧料理の方が美味しそうだし。
ムスリムのゲットーができ警官が入れないとか。
しかし
「女性たちは半裸で香水をつけていたのであるから、女性たちには責任があり、男達が襲おうとすることは驚くべきことではなく、(女性たちの姿は)火に油を注ぐものである」・・・・たしかにムスリムなら当然の価値観ですがこう文章にされると慄然
たるものがあります。
ムスリム聖職者の言いぐさには、一異教徒の私には怒りを覚えます。ならば欧州で被り物をまとっているムスリムの女たちは、それをはがされても驚くべきことではない。現にインドではしばしばそのようなことが起きています。しかし、西欧諸国では即ヘイト扱い。
これでは「極右」が台頭するのは当然でしょう。