トーキング・マイノリティ

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東北大学の至宝展

2007-12-06 21:22:14 | 展示会鑑賞
 今年で東北大学は創立一世紀を迎えた。創立百周年を記念し、仙台市博物館で「東北大学の至宝-史料が語る1世紀」展が開催される。パンフレットによると展示物には歴史、文学資料をはじめ、鎖国時代のチベットに2度に亘り入国した河口慧海による仏教を中心とする収集物、アンモナイトなどの古代生物の化石、土偶のような考古資料から医学標本、植物標本もある。東北大が収蔵する国宝・重要文化財も含む内外の貴重な資料の展覧会なのだ。

 東北大は大正2(1913)年、帝国大学はもとより官立大学としても初めて女子学生3人に対し、入学を許可している。この時の東京からの文書が展示されていた。あからさまな反対こそ表明しないが、女子の入学は「前例のないこと」であり「すこぶる大きなこと」なので、再考を促す文面だったのが面白い。この時代は欧米の由緒ある大学も女子に門戸を閉ざすところも珍しくなかったのだが、日本で女性の地位が高いとは思えない東北で、何故女学生が許可されたのだろう?東京の大学などに比べ伝統が浅いので、逆に進取の気風の学者が集まり易かったのか?

 歴史資料では江戸時代はもちろん室町時代の書も展示されていた。年代的に新しいためか、江戸時代の巻物や本は色鮮やかで、見ていただけで楽しい。巻物だったが江戸時代に描かれた貝の標本などは、現代の図鑑とほぼ同じ。また、絵に解説のある本は今の漫画か絵本の魁のようなものだ。字の読めぬ者を対象にした暦もあり、絵柄は今見ても見事だ。
 アインシュタインは戦前来日した際、土井晩翠と手紙を交わしており、その手紙も展示されていた。手紙に見るアインシュタインの字は下手ではないが、とにかく小さい!何故こうも小さな字で書くのか不可解だ。

 会場でアンモナイトの化石は多数あり、中には直径70cmはありそうな大きなモノまである。タコや烏賊の仲間らしいから、刺身にしたらどんな味だったのか、つい想像したくなる。展示物には外国産の収集物も数多くあり、明治以降の日本の知識人がいかに熱心に内外のモノを採集したのか知れる。展示品の目玉ドイツ産のジュラ紀魚竜化石は迫力があった。化石で発見されない限り、かつてこのような生き物が地球の海にいたこと自体、信じられない。約2億5千万年前に出現、9千万年前絶滅と言われても、気が遠くなる。

 上記の映像は展示されていた遮光器土偶。今回の催しで私が最も見たかった文化財であり、間近で見ると改めて、数ある土偶の中でもその特徴は実に異質だ。この型の土偶の出土は主に東北なのだが、ゴーグル(遮光器)をつけたような大きな目、冠なのか結い上げた頭髪かは不明だが、頭部の飾りも複雑である。この土偶は独自のデザインから一部で宇宙人を模ったものだと言われている。また、他の土偶に比べ高度な製法で作られているので、縄文時代、既に来ていた宇宙人が技術を伝えたと空想する人もあり、こうなれば殆ど雑誌ムーの世界だ。
 遮光器土偶以外に、猪を思わせる動物の身体に顔は人面という人面獣土偶もあった。他にも様々な縄文式土器があったが、後期だったためか文様は縄文より唐草文様だった。

 3年前のはじめ、仙台市博物館で「河口慧海チベット請来品」展があり、これも私は見ているが、今回の展示でも河口の収集品が何点もある。チベットの仏画は全般に赤が使われ、色鮮やか。男女神交接画などは日本ではまず見られないが、これもチベット仏教の特徴か。ただ、大腿骨らしき人骨で作られた笛やどくろ杯の展示は驚く。昔、職場の上司から特にチベットの高僧は鳥葬されると聞いたことがあるが、かつての僧侶の骨なのだろうか。上司の話では鳥が食べやすいようにさらに遺体を切り刻むそうだ。

 国外からも収集した多数の資料は、好奇心と収集への熱意に憑かれた近代日本の教養人の精神が浮かび上がる。展示物にイランの青銅製の短剣もあり、産地がギーラーンとあった。先日この地を統治こともあるズィヤール朝(927-1090年頃)のカイ・カーウースの書を読んだので、思わず目を見張った。日本はまだ縄文時代だったが、メソポタミアに近かったイランは既に見事な青銅器を作っていたのだ。

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