インドの貧困層女性が標的にされているのが代理母ビジネスだが、衛生健康面で彼女らにも貢献する事業を起こす者もいる。NHKの『発掘アジアドキュメンタリー』で、インドで生理用ナプキン製造機を作った男のことが取り上げられており、番組サイトでは次のように紹介されている。
―インドの農村部では外国の大手メーカーが製造・販売する生理用ナプキンは高価で手が届かないもの。インド全体で生理用品を使用する女性はわずか1割にすぎない。ほとんどの女性は布や新聞紙、植物などで代用するため、衛生状態が保てず、感染症や深刻な婦人科系の病気の原因になっているという。妻が生理用ナプキンを使っていないと知り、ショックを受けたアルナシャラム・ムルガナンサムは、低コストで衛生的な生理用ナプキンを作るために一念発起する。
しかし、古くから女性の生理を「けがれ」と捉える伝統が根強いインド社会では、生理の話をすることさえタブー。女性に協力を求め、安全で快適なナプキン開発のために試行錯誤するムルガナンサムは変人扱いされ、妻にも去られてしまう。
その後8年かけて独自の生理用ナプキン製造機を完成させた彼は、女性自らがナプキンの製造と販売を行うという事業を立ち上げた。貧困に苦しむ女性たちに新たな雇用と収入を生み出そうと考えたのだ。インドを生理用ナプキン使用率100%の国にすることを目標に奮闘する男の姿を、インド特有の生理にまつわるエピソードを交えてユーモラスに描く。
ムルガナンサム氏は南インドのコインバートル(タミル・ナードゥ州)に住み、そこを拠点に活動している。妻の生理に気付いたことが事業を始めたきっかけになったのだが、保守的なインド社会では女の生理については、家族の男にも話すことを憚れる空気だそうだ。生理用ナプキン使用率100%の国・日本も、女の生理を「けがれ」と捉える因襲があったし、現代でも異性の前ではオープンに話せる話題ではない。
インドでは生理中の女性を家の離れに隔離し、食事も決して手渡しでは渡さない習慣が続いている所もある。この習慣はインド特有のものではなく、イスラエルのサマリア人にもある。運転している車にマリア像とロザリオが飾られていたことから、ムルガナンサム氏はキリスト教徒かもしれないが、クリスチャンの家庭さえ生理を不浄視しているのだ。
ナプキンが普及していないため、枯葉やもみ殻、砂、灰で代用する女性もいるという。一番使われているのは布だが、ぼろきれ同然のそれも使われているというのは愕然とさせられた。ナプキンが当たり前に使われる国に住んでいると、それが他の世界でも普通だと思ってしまう。きちんときれいな水と洗剤で洗い、日干しした布なら結構だが、きれいな水や洗剤さえ確保されず使えない人が少なくない。
また生理を穢れとするインドでは、人目に触れぬよう暗い室内に干すことが殆どだという。このような不衛生な布が使用されていれば、不妊やガンにも繋がる。
ムルガナンサム氏は試作品ナプキンを妻や妹たちに試してもらうほか、チューブのついた小さな袋に羊の血を入れ、それを自ら腰に装着、ナプキンを付ける実験をする。「私は地球で初めて生理用ナプキンを付けた男でしょう」と、氏は自らの体験を笑いながら語っていた。
しかし先には先があり、日本の作家・筒井康隆はエッセイ『狂気の沙汰も金次第』(1973年出版)で、妻の生理用ナプキンを付けた体験を綴っていた。股間に湿疹ができ膿が出たたためだったそうだが、ムルガナンサム氏よりも30年ちかく早い。
ムルガナンサム氏の開発したナプキン製造機により、女性自らがナプキンの製造と販売を行うようになる。値段は8枚入りで50円ほど。氏の製造したナプキンの特徴は一切化学製品を使わず、全て素材は天然。このナプキンの製造と販売はインド国内はもとより周辺国にも広がってきているそうだ。
途上国では飲料可能な水が不足している地域も珍しくないし、まして安全で快適なナプキンは一般には行き渡らない有様なのだ。日本にいるとこのようなことも想像できないが、昭和一桁生まれの母から聞いた話では、日本で生理用ナプキンが普及したのは戦後以降であり、その前は脱脂綿を使っていたという。
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興味深いサイトを紹介して頂き、有難うございました。月経血コントロール法で生理が3日程度で終わり、生理痛が軽減されるなら結構なことです。実は若い頃の私は生理が3日程度で終わり、あまり生理痛もなかったのですが、齢とともに酷くなってきました。これも老化現象があるのやら。
産婦人科医に聞いても、納得した答えは得られませんでした。未だに女特有の生理という現象には不明なことが多すぎます。三砂ちづる氏は『オニババ化する女たち 女性の身体性を取り戻す』という著書もあるそうですね。未読なので論評できませんが、低評価のレビューにあった一文は苦笑しました。
「人口増加の時には「何人も産む女はだらしない」で、人口減少になったら「たくさん産まない女はオニババ」とは」
http://www.amazon.co.jp/%E3%82%AA%E3%83%8B%E3%83%90%E3%83%90%E5%8C%96%E3%81%99%E3%82%8B%E5%A5%B3%E3%81%9F%E3%81%A1-%E5%A5%B3%E6%80%A7%E3%81%AE%E8%BA%AB%E4%BD%93%E6%80%A7%E3%82%92%E5%8F%96%E3%82%8A%E6%88%BB%E3%81%99-%E5%85%89%E6%96%87%E7%A4%BE%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E4%B8%89%E7%A0%82-%E3%81%A1%E3%81%A5%E3%82%8B/dp/4334032664/ref=pd_cp_b_1
こんばんは。拙ブログへのコメントを有難うございました。貴女は少し前、ここでブックマークしている『キリスト教の問題点について考える』さんでコメントされていましたよね。その時に貴女のブログにも軽く目を通しました。隣県の方だったので、憶えています。
確かに今回の記事のタイトルは刺激的ですし、インドでナプキン製造機を作った男性がいたのは驚きました。ムルガナンサム氏は他にも製品開発のため女子大生に協力を求め、彼女らから使用済みナプキンを集めて調べたそうです。男性がそれを並べて調べる光景を想像しただけで何とも…
布ナプキンのことは知っていますが、使用したことはありません。紙に比べ肌に優しいでしょうが、洗う手間を考えると、やはり敬遠してしまいますね。布に付いた血が落ちにくいものですから。
多分大元はこちら↓
http://www.amazon.co.jp/%E6%98%94%E3%81%AE%E5%A5%B3%E6%80%A7%E3%81%AF%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%9F-%E5%BF%98%E3%82%8C%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E5%A5%B3%E6%80%A7%E3%81%AE%E8%BA%AB%E4%BD%93%E3%81%AB%E5%9C%A8%E3%82%8B%E5%8A%9B-%E5%AE%9D%E5%B3%B6%E7%A4%BE%E6%96%87%E5%BA%AB-%E4%B8%89%E7%A0%82-%E3%81%A1%E3%81%A5%E3%82%8B/dp/4796667814/ref=la_B004L9OYFS_1_2?s=books&ie=UTF8&qid=1391709941&sr=1-2
あとは、後ほど。機会をいただけましたら。
同じgooブログで関連するかも?の表示が出たので、貴女様のブログにお邪魔致しました。
生理用ナプキンを作った男!と言う、ちょっとドッキリのタイトルに、書いてらっしゃる方は男性かしら?と、不安になりましたが、女性と書いておられるので、コメントさせて頂いたしだいです。
インドの女性はまだまだ月経では大変な思いをなさってるのですね。
私は昨年?いや一昨年でしょうか?布ナプキンを使い始めたら、ものすごく月経が楽になりました。しかし、家族構成と、ナプキン洗うのに億劫になって、今は紙ナプキンに戻ってしまいました。
なかなか難しいです。どれを一番に考えるかと思うと・・・。
でも、寄らせて頂いて良かったです。
ありがとうございました。