MSX研究所長の日常

80年代を駆け抜けたオールドパソコンMSXの研究の日々を綴ります。

すがやさんがPC-8001を買わなかった訳

2005年02月01日 12時48分18秒 | PC全般
すがやみつるのネット人生(第2回)

MSXユーザー的には「漫画家」と言った方が手っとり早い、すがやみつるさんのblogにあった記事を見て多少懐かしく思いました。といってもMSX発売以前の話になりますが。

>ところが顔なじみになっていた店員の説明によると、発売されたての「PC-8001」にはバグがあり、画面の端の文字が欠けたりするという。さらにコードで接続したカセットテレコを使って、プログラムをセーブしたり、ロードしたりするのにもコツが必要で、初心者にはすすめられないという。

NECが1979年に発売したPC-8001のBASICの初期バージョンは右端が欠ける、これは非常に有名であったバグですが、インターネット上ではこのことに触れたテキストは探してもほとんど出てきません。貴重な証言と言えましょう。

さて具体的にはPC-8001に搭載(内蔵)されたN-BASICのver1.0にあったのがこのバグでして、BASICで枚行ごとにリターンキー(WindowsならEnterキー)を押して入力したプログラムを確定したつもりでも、再度読み込むと画面右端の文字がなくなっている…というものです。対処療法として知られていたのが、一度確定した後再度その行に戻ってもう一度リターンキーを押すという「二度押し」でありました。

後にこのバグの解消されたN-BASICver1.1になるのですが、当時は書き換え不能なROMチップに書き込まれていたために本体を開けてROMを交換しなくてはなりません。そのキットの価格は5000円でした(今なら1万円くらい)。昔はそんなもんだと思ってましたが、25年前はバグ修正版であっても金取って売ってたんですね。今でも実家に保管してありますが、ROMの入った紙箱と交換用のマニュアルがビニール袋に入っただけの簡素なものでした。

とここまで書きましたが、実はPC-8001を買ったのは父親なので右端が欠けたことやROM交換そのものに関する記憶は薄く、N-BASICの差し替えられた旧版のROMを珍しく眺めていたことのほうが思い出されます。

あと面白いのがここ。

>しかも、数字を書き写してプログラムを完了させると、スピーカーからはベートーベンの「歓びの歌」のメロディが流れ、画面には「ゼイムショ デノ ケントウ ヲ イノリマス!」というメッセージが、半角カナ文字で表示されるのだ。当時のパソコンでは、漢字の表示など夢のまた夢だった。

すがやさんは結局MZ-80Kを買いますが、どうやら初心者であっても音楽が鳴らせたようです(PLAY文かなあ)。対して、見逃したPC-8001はビープ音しか出ませんでした。BEEP命令で出る「ピー」という音です。この他に鳴りっぱなしにする「BEEP 1」と止める「BEEP 0」というのがあり、「BEEP1:BEEP0」とすることで「カッ」という音、また「カッ」をFOR~NEXT文でループさせることで「ビー」と鳴らすというPC-8001ローカルのテクニックがありました。さらなるテクニック?として、「FOR I=0 TO 100:BEEP 1::::::::::BEEP 0:NEXT I」のように、「:」を入れる数でウエイトを変化させてブザー音に変化をつけていた人もいました。高橋はるみさんがよくやってましたね。

ここまでセコいことをしても、PC-8001は音程を変えることはBASICからできませんでしたし、何より音量すら変えられない(音量固定、スピーカは本体に内蔵!)ので夜中などはウカツに鳴らせませんでした。当時のPC-8001のゲームには「イマハ ヨル デスカ(Y/N)?」という変な選択肢がよく冒頭で出てきましたが、これは「音を出なくする」という意味のものです。こういうのはエミュレータでいくら使っても理解の及ばない範囲なので、証言を集めておくのも意味があるのかも、と思っています。

ちなみに、「漢字の表示など夢のまた夢」とありますが、MZ-80KもPC-8001もカタカナしか出ませんでした。カナしか出ないことが当然だった当時は、ひらがなを出すのも夢だったのです。


PC-8001は日本初のパーソナルコンピュータと言われます。カタログ上のスペックはZ80の4MHz、とMSXと同等のように見えますが、BASICが非常に遅かった。それにグラフィックが非常に扱いづらかったのでMSXがうらやましかったですねえ。最初に手に入れたのはMSX2+ですが、高速なBASICと豊かな表現力に舌を巻いたものです。