日常一般

日常生活にはびこる誤解、誤りを正す。

ハガイ書

2018年08月18日 | Weblog
  ハガイ書  第2神殿建設の意義と栄光 
 
 はじめに

 ハガイ書の特徴
 ハガイ書はおそらく聖書の中でも1,2を争う短い預言書であろう。2章38節から成っている(1章15節、2章23節)。短くとも、その意義は大きい。第2神殿建設の経緯が描かれ、再建の意義と、失われた第Ⅰ神殿の誉と栄光のより一層の回復が描かれている。それは同時にイスラエルの民の悔い改めと、神への立ち返りでもあった。
これよりエルサレムの民の神の国への出発が始まる。
 作 者:預言者ハガイ=祝祭の男の意
 ハガイの活躍した時代:バビロンの捕囚後、ペルシャのアケメネス王朝3代目の王ダリヨス1世の時代。ダリヨス王第2年目の6月1日(BC520年8月29日)よりダリヨス王第2年の9月24日(BC520年12月18日)まで4カ月弱の間。極めて短い。
 預言した場所:エルサレム(エズラ記5:1~2参照)
 
  慨 節
 第1章:預言者ハガイの使命は、背信のイスラエルの民の中にあって、彼らの霊的な昂揚を呼びさまし、その心を神殿建設に向かわせることにあった。人々の心を霊的に鼓舞した。
 第2章:主はハガイを通じて総督ゼルバベルと大祭司ヨシュヤとイスラエルの残りの者を聖別して、第2神殿建設を命じた。自分は常にあなたと共にあるから強くあれ、と励まし、力づけ、彼らを再建へと導いた。再建の暁にはその誉と栄光が第Ⅰ神殿以上に回復されるであろうと預言し、反ユダの圧迫のない平和な世界=自由な神の国エルサレムの到来を預言した。主は、ゼルバベルを神殿建設の推進者として見るだけでなく、それ以上に霊的存在として考えていたことが判る。
 しかしハガイ書の段階では建設は完成していない。礎(基礎部分)が築かれただけである。しかし、主はこれに完成と同等の価値を置いた。その裏には神殿完成の確信があったからである。

 内容構成  
 (1:1~2)
 第Ⅰ部:神殿建設を促す覚睡預言(1:1~3)
 第2部:神殿における聖別についての預言(2:10~19)
 結 び:主の僕(しもべ)ゼルバベルの選びについての預言(2:20~23)

><第2神殿建設までの経緯

 
 
ハガイ書の歴史的背景
 イスラエルの信仰の対象としてソロモン王によって建てられ礼拝されていた第Ⅰ神殿は、バビロンのセンケナブリ大王によって破壊され、民の主だった者は、捕囚としてバビロンに拉致された。破壊された神殿は、その後、修復されること無く荒れるにまかされていた。主はその再建を、バビロンを滅ぼしたペルシャの大王クロスに命じたのである(Ⅱ歴代誌36:22~23、エズラ記1:2)。クロスは捕囚の民の帰還を許し、更に破壊された神殿の再建を彼らに命じたのである。
 しかし、神殿の再建は直ちに行われたわけでは無かった。ハガイ書の冒頭に語られているように、ペルシャの3代目の王ダリヨス1世の時代まで待たねばならなかった。周辺諸国の反ユダの諸勢力が神殿再建の妨害を図ったからである。クロス王の再建命令がBC539年、神殿建設に取り掛かった年がBC520年であるから、神殿建設は19年近く中断していた事になる(前ページの表参照)。この間の事情は「エズラ記」を参照。外部では反ユダの勢力が妨害していたように、内部では民が「主の宮を建てる時はまだ来ない(1:2)」と自分の生活を優先していたのである。
 ハガイ書は次の言葉から始まる「ダリヨス王の第2年の第6の月の1日に、預言者を通してシェアルティエルの子、ユダの総督ゼルバベルとエホツァダクの子、大祭司ヨシュアとに、次のような言葉があった(1:1)」「山に上り、木を運んで来て、宮を建てよ--------(1:8)」と。主は破壊された神殿の再建をゼルバベルとヨシュアの2人に命じたのである。2人は、背信のイスラエルの民の中にあって、その霊的な影響力を発揮し民を神殿の再建へと導いていくのである。
 
  エズラ記とハガイ書、その異同
 ハガイ書を読むとき「エズラ記」を併読して欲しい。捕囚から解放されたイスラエルの民の第2神殿再建までの物語がより詳しく描かれているからである。
 この書には、ペルシャの大王クロス、ダリヨス王、預言者ハガイ、ゼルバベル、ヨシュアが登場する。クロス大王以外はハガイ書と同じである。しかし神殿建設に至る過程は異なっている。より歴史的である。エズラ記では、神殿再建を妨げ、遅らせていた者として、反ユダの諸勢力が登場する。ハガイ書では神殿再建を遅らせていた者はイスラエルの民自身の背信であった。更に違いは、ゼルバベルとヨシュアの身分である。ハガイ書ではゼルバベルは、ユダの総督であり、ヨシュアは大祭司である。しかし、エズラ記では共に捕囚の地からの帰還に際し、イスラエルの民を先導した人物(エズラ2:2)として描かれている。神殿再建に重要な働きを果たしたことは、同じである。
 このように神殿再建にはハガイ書には内部の背信が、エズラ記には外部からの妨害があり再建は中断した。この中断の原因は取り除かれねばならない。ハガイ書では、ハガイは背信の民の再建に向けての霊的な昂揚を呼び起こし再建工事に向かわせた。それに反して、エズラ記の民は神に従順であった。しかし、エズラ記には神殿再建を快よしとしない反ユダの諸勢力が存在しており、神殿再建を妨害した。これと立ち向かい打ち勝つ必要があった。いずれにしてもハガイは、内外の敵と戦わねばならなかった。
 エズラ記における反ユダの勢力は、再建工事を行うイスラエルのペルシャ王に対する過去の悪を暴き、誹謗中傷を行い、再建を武力を持って中断させた。しかしユダヤの長老たちは、クロス王のイスラエルに対する神殿再建の詔勅を明らかにし、それが認められ、神殿再建の工事が再開した。「こうして、この宮(神殿)は、ダリヨス王の治世の第6年、アダルの月の3日に完成した(エズラ6:15)」のである。エズラ記にはハガイ書に見られるような民の主に対する背きは描かれていない。民の背信は預言書の特徴である。
 いずれにしても、神殿再建の仕事は順調にはいかなかったのである。

  各章ごとの説明
 序 章: ペルシャの王ダリヨスの時代に、主は預言者ハガイを通じてユダの総督ゼルバベル、大祭司ヨシュアに対し主の言葉(神殿建設)を告げる(1:1)。
 第1部: 神殿建設を促す覚睡預言:あなた方は現状を理解せよ。背信の民に対する主の警告と刑罰を通じて、主はいかにして背信の民を神殿建設へと奮い立たせたか、が描かれている(1:3~2:9)。
 
  神殿建設が遅れた理由
 第1部
 1、異教の神を信じていた(1:4)
 長年にわたる捕囚の生活、異教の国、異教の神、偶像崇拝(板張りの家1:4)
 2、帰還の民は貧しかった(1:6)
  「主の宮を建てるときはまだ来ない(1:2)」衣食足って礼節を知る。豊かになるまで待て。「自分の家のために走り回っていた(1:9参照)」
 3、世代交代が行われており、第Ⅰ神殿の栄光の輝きを知らぬ世代が多かった。「あなた方の目にはまるで無いに等しいのではないか(2:3参照)」神殿再建に意義を認めない若者の増大があった。
 このような背信の民の中にあって、主は言う「宮を建てよ、そうすれば、わたしはそれを喜び、わたしの栄光を現そう(1:8参照)」と。民は、その言葉に従わず主の怒りを買った。主は自然災害(日照り)を起こし、民は飢餓と渇きに苦しんだ(1:10~11参照)。これらの災害を前にしてゼルバベル、ヨシュアは、主と預言者ハガイの言葉に従い、民は主の前で恐れた。ハガイは民の霊的高揚を呼び覚まし、神殿再建へと向かわせた。
 第2部:長年にわたる捕囚期間は、捕囚の民の間に世代交代を引き起こし(2:3)、第Ⅰ神殿の栄光の輝きを知らない世代を生み出していた(2:3)。彼らは第Ⅰ部で述べたように他国の神=偶像崇拝に陥っていた。このように多くの神殿再建を押し止めようとする要素に囲まれ、神殿の再建は危機的状況に陥っていた。しかし、主は諦めることなく選びの民を力づけて言う。「ゼルバベルよ強くあれ、ヨシュアよ強くあれ、この国の全ての民よ強くあれ。(神殿建設)の仕事に取り掛かれ。わたしがあなたがたとともにいるからだ(2:4参照)」「あなたがたがエジプトから出て来たとき、あなた方と結んだ約束により、わたしの霊があなたがた間で働いている。恐れるな(2:5)」。と、子々孫々の増大繁栄の契約を保証する。「この宮のこれからの栄光は、先のものにまさろう。--------わたしはまた、この所に平和を与える(2:9)」と神殿再建の暁には、この宮はより一層の栄光で満され、平和が到来すると約束する。イスラエルの民はその言葉に励まされ、神殿再建の工事に取り組む。かくして、その基礎(礎)部分は完成する。ハガイ書には神殿完成の叙述は無い。しかし主は礎の据えられた日に対し神殿完成と同価値を与える。
 神殿の基礎部分の完成を境にして預言は先と後の2つの部分に分けられる。先は民の背信の時代であり、民も背き、祭司も背いた。その結果神の怒りに触れ、不作が続き、民は飢え渇き苦しんだ(2:16)。神殿の基礎部分の完成の後は、主は、それを主に対する信仰の回復と評価し、その罪から解放する。礎の構築は、民の悔い改めと神への立ち返りの証しだったのである。その結果、多くの実りが約束された(2:19)。
 結 び:主の選んだメシア(ゼルバベル)によって、神殿は完成する
 2章21~23節はユダの総督ゼルバベルに語られた預言である。主はゼルバベルに次のように語る。「わたしのしもべゼルバベルよ、わたしはあなたを選び取る------わたしはあなたを印形(いんぎょう)のようにする。わたしがあなたを選んだからだ(2:23参照)」。主がゼルバベルを選んだということは彼を通してメシアを遣わされる神のご計画があるからである。「もろもろの王座をくつがえし、異邦の民の王国の力を滅ぼし、戦車とそれに乗る者をくつがえす。馬と騎兵は彼ら仲間同士の剣によって倒れる(2:22)」。主のご計画を妨げる者は滅ぼされ、平和が訪れる。まさに、ゼルバベルによって第2神殿が再建されることは、主のこれからの後のご計画において印形(約束の保障の印)となるのである。
 このように、ハガイ書は、総督ゼルバベルを主のしもべとして立てるという終末論的メシア預言で終わっている。

平成30年7月10日 報告者 守武 戢 楽庵会
 


コメントを投稿