俺、天国って南の島のことだと思うんだ。この一文で始まる大好きな小説。南国再見。そうか、天国って南の島のことなのか。改めてしみじみする。眩しい太陽、青い海。生々しい位生命力のある植物逹。海が足りない。いわきの海しか知らないけれど最近海が足りない。南国に行きたい。そういや最初にこの小説を読んだ時は熱帯植物園に行きまくった。タトゥー入りのあたしが水着を買うのは地元の温泉施設の植物園に行きたいがためだけだった。勿論、温泉には入れない。小説の主人公は南国という天国に想いを馳せる。ギョエンへの片道切符を握りしめて。ぼんやりと南国に憧れはあったが本気で南国に行きたいと思った。でも、あたしは暑さに弱い、日光で肌が爛れる。高校の修学旅行で沖縄に行ったがのぼせて鼻血ばかり出していた。でも綺麗な海に月が登れば、道ができる。そこを辿っていけば月の真下に行けるかも知れない。汚く汚れたあたしの心も気持ちも美しい景色を見たら洗われるかも知れない。海に行きたい。天国に行きたい。天国に一番近い島っていう古い小説もあった。そうか、やっぱり天国って南の島のことなんだ。電気屋さんを辞めたらしがらみが減った。天国への片道切符。いつかあたしにも手に入るかな。今日突然弟が来た。詳しくはまた書くけど弟だけは家族だなあと思う。東京もいいな。どのみち、あたしには他の場所が必要だ。もう一度読み返す。俺、天国って南の島のことだと思うんだ。
今日で仕事を辞めた。もう電気屋さんに戻ることはないだろう。疲れてしまった。お客さんの過剰な値引き交渉。値段が全て。なんでかな?大学出たてで電気屋さんやったけどたころは楽しかった。若かったからかな?ボスのコネで入って結局辞めて、頑張ったのに八年働いたスポーツ用品店はくびかあ。あんなに頑張ったのに結局こんな結末かあ。自分で自分が情けない。あたしが落ちた血の沼はどこまで深いのだろう?電気屋さん辞めてほっとする反面、いい年してまたプーかあとがっかりする。いわきに帰りたいなあと思ったが帰る場所などないし、帰った所で見たくないもの、思い出したくないものが詰まっている。行き場所などない。そもそも自殺などしなくてもあたしは嘆きながら毎日息をするだけで、無駄に生きている。いつか必ず死ぬのに。死ぬ気で頑張ればいいのにね。血だまりに浸かっても浮上などしない。電気屋さんの帰り道、前にラズベリージュースをくれたおじさんがやはり何も言わず、今度はCCレモンをくれてなそのときは泣き出しそうだった。多分、世界は優しさで出来ているのにあたしは見えていないのだ。生きながら死んでいる。帰り道も見つからない。生き場所も見つからない。明日からまた母親の小言が1日降り注ぐのか。泣きたい。泣き場所が欲しい。だけど電気屋さんを辞めることでもう今までのしがらみは全てなくなった。すっかり携帯の電話帳もすかすかになった。酒を飲みながらCCレモンも飲んだら、やっぱり優しい甘さがして染みた。さようなら、誰ともなく何にでもなく呟いた。いつか必ずここを、出よう。出たい
今もきっと何処かで笑っている、泣いているあなたにこの歌が届きますように。
略
あたしは強いから彼女より強いからきっとあの人も離れて行った。
ふとした瞬間に思い出すこの曲はやはりお芝居で使ったものだ。海賊の物語だった。まだワンピースもそんなに流行ってはいなかった。一世を風靡した海賊の棟梁が一人になりたがる物語だ。海賊は考える。誰にも気がつかれず、大切な者を傷つけず一人になる方法はないかと。やがて一人になった海賊は海賊船ではなくちっぽけな船で海へ漕ぎだす。月の真下に行きたいと海賊は言った。月の真下から月を眺めてやろうと。海へ漕ぎ出すとき静かにこの歌が流れる。題名も歌手もわからない。この歌を持ってきたのは歳上の女の先輩だった。彼女も震災で亡くなった。まだ三十代後半から四十代前半だったろう?彼女も独身だった。どんな気持ちでこの歌を聞いていたのだろう?一人、息を閉じた病院の風景はどんな感じだったろう?海が近くて月は最後に見えただろうか?古くなったDVDを見ながらあたしは何度も彼女に問うが答えを知ることは永久にないのだろう。優しい人だった。世の中の悲しいことには全部泣いちゃうような優しい人だった。なんで彼女が死んであたしが生きているんだろう?親にまで疎まれているあたしが。海賊は進む。晴れている日ばかりじゃないから海は嵐になったり、大雨が降ったりする。手のひらが海水でしわしわになって血が滲む。初めは嬉しかった。これくらいしないと月の真下に、着いたとき達成感がないと。ただ、だんだん不安になる。真っ暗な海原で、でたらめに舵を漕いで何も見えなくて。海賊は言う、月の真下がこの世のものとは思えない位美しい所なら痛みなど吹き飛ぶだろう。だけど僕は知っている。月の真下はただの海だろう。だだの海だろう。じゃあなんで漕いでるんだ?あなたの好きだった手のひらをこんなにして泣いて、焦って、不安で。もうちょっと、もうちょっと、だと思うのだけどまだ月の真下にはたどり着いていない。と終わる。曲が大きくなる。涙がでる。あたしの逃げたいと思うのは月の真下を、目指すのと同じかも知れない。曲、最後まで聞きたい。わからない。もういない彼女の顔が浮かぶ、あたしの結末。月の真下にあたしもまだたどり着いてはいない。
略
あたしは強いから彼女より強いからきっとあの人も離れて行った。
ふとした瞬間に思い出すこの曲はやはりお芝居で使ったものだ。海賊の物語だった。まだワンピースもそんなに流行ってはいなかった。一世を風靡した海賊の棟梁が一人になりたがる物語だ。海賊は考える。誰にも気がつかれず、大切な者を傷つけず一人になる方法はないかと。やがて一人になった海賊は海賊船ではなくちっぽけな船で海へ漕ぎだす。月の真下に行きたいと海賊は言った。月の真下から月を眺めてやろうと。海へ漕ぎ出すとき静かにこの歌が流れる。題名も歌手もわからない。この歌を持ってきたのは歳上の女の先輩だった。彼女も震災で亡くなった。まだ三十代後半から四十代前半だったろう?彼女も独身だった。どんな気持ちでこの歌を聞いていたのだろう?一人、息を閉じた病院の風景はどんな感じだったろう?海が近くて月は最後に見えただろうか?古くなったDVDを見ながらあたしは何度も彼女に問うが答えを知ることは永久にないのだろう。優しい人だった。世の中の悲しいことには全部泣いちゃうような優しい人だった。なんで彼女が死んであたしが生きているんだろう?親にまで疎まれているあたしが。海賊は進む。晴れている日ばかりじゃないから海は嵐になったり、大雨が降ったりする。手のひらが海水でしわしわになって血が滲む。初めは嬉しかった。これくらいしないと月の真下に、着いたとき達成感がないと。ただ、だんだん不安になる。真っ暗な海原で、でたらめに舵を漕いで何も見えなくて。海賊は言う、月の真下がこの世のものとは思えない位美しい所なら痛みなど吹き飛ぶだろう。だけど僕は知っている。月の真下はただの海だろう。だだの海だろう。じゃあなんで漕いでるんだ?あなたの好きだった手のひらをこんなにして泣いて、焦って、不安で。もうちょっと、もうちょっと、だと思うのだけどまだ月の真下にはたどり着いていない。と終わる。曲が大きくなる。涙がでる。あたしの逃げたいと思うのは月の真下を、目指すのと同じかも知れない。曲、最後まで聞きたい。わからない。もういない彼女の顔が浮かぶ、あたしの結末。月の真下にあたしもまだたどり着いてはいない。
台風が直撃した。傘を持たずに外に出ると一瞬でばかみたいにずぶ濡れになった。こんな姿で帰宅したらまた小言言われるなあと思ったらポロポロ泣いていた。雨は味方だ。涙も隠す、体の痛みは鈍るのに心の痛みは慣れることを知らない、ヒリヒリする。苦しいなあ。このところ、危険思想に取り付かれている。母親を殺したい。勿論あたしも死ぬ。正当防衛、って言葉が過ったが、心の傷は目には見えないから正当防衛にはならないのだな、と思い、こんなことを考えるあたしはどのみち地獄行きだと思う。でも逃げられない。ドメスティックバイオレンスならまだ愛を感じるのかも知れないが肉親に無償の愛を感じるほどあたしは寛大ではない。危険思想と分かりながら母親が死んだら逃げ出せるのに、とばかり考えてしまう。死ねって言ったら自分が死ね、なのにね。ひとまずお金貯めて逃げようとも考えるが危険思想があたしを悩ませる。楽な方を選んだらだめだ。だけど楽って何?あたしはなんで羽ばたけない?疲れた。また薬を飲んでイタズラに傷口を抉る。こんなことに何の意味がある?あたしは生きながら死んでいる。逃げたい。逃げたい。助けて、助けて。呟いて一人笑う。助けなんて来ない。あたしの責任。何もかも
最近Facebookでは当たり障りのないことしか書いていない。本名だし知り合いだから心配かけないようにか、惨めなあたしを知られたくないプライドか。でもみりん、と仮名を名乗り本音を吐き出しているブログの方が生きているあたしだ。誰とでも繋がっているようで、誰とでも繋がっていない世界。なにが正しいのかほんとなのかはわからない。ただ生きているあたし。本名では生きていないあたし。変なの。新しいバイトを始めるまで10日くらい日が空く。まさに金はないのに暇はあるという恐ろしい状態に陥る。そんな道を選んでいる時点であたしが間違っているのだ。ごめんなさい、あたしが悪い。謝れ、お前が悪い。人に言われるのと自分で言うには重さが違う。あたしは自分を甘やかしている。最近、めっきり口数が減った。家では話さず部屋に籠れば、あとは眠ってしまえば不用意な攻撃を受けずに済む。ラリってぼーっとした頭なら何を言われても傷つかない、朝方灰皿をぶつけられた。ああ、ベランダに置いたままだったーと激しく後悔した。とっさにごめんなさいが口をついて、条件反射だ、とぼんやり思った。こんなにも感情のない謝罪も初めてだわと思った。灰を広い集めながらアルミ缶でよかったなあと、ガラスなら怪我するし割れてるわ、とも思った自分、あほだなあとしみじみ。頭の上では人んちでタバコ吸ってんじゃねーよ。と罵倒が飛んでいた。休み、どうしようかな。日雇いとかあればいいのにな。てか、どうしてあたしはここを出ていかないのだろう?あたしの家ではないらしいに。眠りすぎて首が痛い。どこかにいきたいな、ほんと。