夜眠るための薬を減らして昼間飲む。頭がぼーっとして思考が半分になって夢みたい。他人だから、母親に何をされてもお客に理不尽な値切りをされても大丈夫な気がする。会社に変わり者扱いされているおじさんがいる。病気がちでよく会社休む。吃音とどもりがひどく、よくからかわれている。眠気を噛み殺して喫煙室にいると突然おじさんが喫煙室に入ってきた。おじさんはタバコを吸わない。おじさんはおもむろに、一言。痛いのはやだね、と言った。え?聞き返した。誰も何も言わなかったのに。おじさんはあたしにラズベリージュースを差し出した。ピンク色の可愛らしいペットボトル。珈琲とお茶しか飲まないあたしには新鮮だった。ありがとうございます、と言いたかったのにあたしは何故かすみません、としみじみ頭を下げた。世界はなんて難しいのだろう?普通って何だろう?人の数だけ思いがあってあたしは世界の在り方を考えた。帰りの車のなかでラズベリージュースを飲んだ。がしがしと睡眠薬をかみ砕きながら。空きっ腹にラズベリージュースは甘く、優しい味がした。ああ、あたしは優しい人に優しい言葉を貰った。おじさんだけじゃない。優しい人に優しい言葉を貰った。もうそれだけで満足しなくてはならない。死ぬかもな、ぼんやり思った。けして悲観的ではなくあきらめでもなく、何処にもいけないあたしの結末だと優しく思った。ああ、そういえばあたしの大好きな本に自分の死を優しく書いた物語があった。ああ眠たい。明日アップしよう。あたしはだめかもしれない。でも幸せな匂いがする。まるで甘い甘いラズベリージュースのように。