MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2030 日本のコロナ感染者が急減したわけ

2021年12月01日 | 科学技術


 韓国の新型コロナウイルスへの新規感染者数は、11月の最終週には過去最高の1日4116人を記録。11月初めにレストランやカフェの営業規制が緩和される前の2000人前後を、ここにきて大きく上回っているということです。

 韓国の権保健福祉相によると、ソウル首都圏だけでも少なくとも1200人が入院待ちの状況にあり、政府はいったん導入した行動規制緩和計画を停止し国民にPCR検査とワクチン追加接種を呼び掛けているとのことです。

 こうして韓国で新型コロナウイルスの感染者数が急増を見せる一方で、海を挟んだ日本では対照的に感染者数が激減し、ウイルス感染の拡大に歯止めがかかっているようにも見えます。11月25日、その理由について報じた韓国・中央日報の記事が話題になり、一時はニュース検索ワードの1位になったと報じられています。

 記事は、「韓国慶北医大教授『日本の感染者数急減、K防疫の致命的誤り見せる』」というもの。予防医学の専門家である慶北(キョンブク)大学医学部のイ・ドクヒ教授が自身のブログに投稿した(日本の防疫対策に関する)主張を紹介しています。

 日本は11月22日、感染者数としては今年に入って最も少ない50人を記録した。死亡者もやはり21日が0人、22日が2人とほとんど発生していない。このような日本の感染者急減に対しては世界中で多様な見解が示されているが、中でもイ教授は「日本の感染者数急減は自然感染を防がなかったおかげ」と主張し注目されていると記事はしています。

 イ教授によれば、韓国と似たワクチン接種率の日本が韓国と最も違う点は、最初から国が乗り出して防疫という名前で無症状あるいは軽症で終わる自然感染を止めなかったこと。日本の感染者急減はワクチン接種率が50%に満たない時期から始まっており、こうした状況は、強力で広範囲な免疫を提供する自然感染の経験を持つ人たちが存在してこそ可能になるというのがイ氏の指摘するところです。

 日本と韓国の防疫対策の違いは、日本では昨年の3~4月からPCR検査の対象を有症状者に限定し広域的なPCR検査を行わなかったことにある。そして、韓国人には国民をウイルスの前に「放置」するようにも見えた日本のこの態度が、現在の状況に大きく貢献している可能性があるというのが氏の見解です。

 もとより、パンデミック状況での「防疫」とはそれほどすごい役割を果たすものではない。日本の感染者数急減は、韓国防疫の大前提、すなわち「無症状であっても絶対にかかってはならない感染症」という仮定自体に致命的な誤りがあることを見せているのではないかというのがイ氏の指摘するところです。

 イ氏はこのブログで、「韓国ではこれまで学習されたウイルスに対する恐怖があり受け入れるのが容易でない人たちも多いだろう。K防疫の弊害は、新型コロナウイルスに対して国が先導して誇張された恐怖を助長し、これを防疫の成果として積極的に活用したという点だ」と述べているということです。

 韓国の防疫当局はこれまで、無条件でワクチン接種率さえ高めればすべての問題を解決できるかのように国民を誤って導いてきた。しかし、この難局から抜け出すには(韓国内でも)ブレイクスルー感染であれ何であれ、自然感染を経験する人が増えなければならないとイ氏は説明しているということです。

 こうした状況を受け、イ氏はこのブログに「今からでも遅くない。動線追跡する疫学調査と無症状者・軽症患者を対象にしたPCR検査を中止すべき」だと記しているとされています。

 さて、一昨年春に始まった新型コロナウイルスの感染拡大以来、ことあるごとに「PCR検査の数が少ない」「全員検査をなぜやらないのか」と指摘され、「無症状者を野放しにしている」と(メディアや野党を中心に)厳しく批判されてきた日本の防疫対策。しかし、もしかしたらイ氏の言うように、そうした(ある意味「ポイント」を押さえた)落ち着いた対応が、感染症との共存を促したと考えることもできるのかもしれません。

 検査をすれば「絶対に安全」というわけでもない状況下において、無症状者に対していたずらに(誤差の大きい)検査繰り返し、国民の恐怖心をあおることのほうが社会に有害だと考えた日本の専門家は(当時から)確かに多かったような気もします。

 イ教授の主張について真偽のほどは現時点では定かではありませんが、国民感情に流されるばかりでなく、合理的な対応をとることが(最終的には)最善の結果を生むと考える専門家がどこの国にもいるものだなと、記事を読んだ改めて感じるところです。



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