MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2290 ゾンビ企業のサバイバル

2022年11月08日 | 社会・経済

 中国メディアの証券時報が10月28日、「日本はどうして競争力を失ったのか」とする評論記事を掲載したと11月2日の中国情報サイト「Record China」が伝えています。

 記事は、2022年の日本の国民1人当たりGDPが3万4360ドルとなり、韓国(3万3590ドル)との差が770ドルまで縮まって、IMFが統計を取り始めた1995年以降で最小差となったことを紹介。バブル経済のピークにあった1995年には4万4210ドルと、米国の2万8700ドル、韓国の1万2570ドルを大きく引き離していた日本経済について、「現在では米国に大きく後れを取り、日韓両国の差もほぼなくなった」と断じています。

 さらに、日本が他国との競争における優位性を失い経済が低迷を続けている理由について、記事は「少子高齢化という人口構造上の問題を挙げる向きがあるが、韓国も同様の問題を抱えていることから日本だけが低迷する原因とは考えられない」と指摘。長期的な低金利、量的緩和を柱とする金融政策こそが、日本の競争力を殺した『主犯者』ではないか」と説明しているということです。

 記事の指摘はさらに続きます。1991年のバブル崩壊以降、低金利政策によって経済の活性化を期したものの効果が大して出なかった時に、日本政府は「金利がまだ高いからだ」と認識して金融緩和政策を継続した。しかし、この政策の最大のメリットは「全く競争力のない屍のような企業を長持ちさせること」であり、本来破産すべき企業が破産を免れ、重要なリソースが「死に体企業」にばかり流れて産業が硬直化。景気の波による周期的な危機がいつしか長期的な構造上の問題へと変化していったと解説しているとされています。

 記事は、「死に体」企業を生かし続ける金融緩和政策を長期間続けた日本は、中国や韓国といった経済新興国の大発展がもたらしたメリットを享受できなかったとしています。そこで、新興国の競争参入で自国産業がどんどん疲弊し世界のローエンド市場を失うとともに、産業のモデルチェンジができないことでハイエンド市場においても欧米諸国との競争に勝てなくなった。日本政府の金融緩和政策が結果として日本の産業構造を硬直化させ、経済も新陳代謝機能を失い衰えるに至ったと結論づけているということです。

 さて、今年7月の東京データバンクの発表(「全国企業倒産集計2022年7月報)によると、2020年度のデータで国内の「ゾンビ企業」の数は16.5万社。割合にして推計11.3%と、国内企業のおよそ10社に1社(以上)がゾンビ企業と化しているという驚きの結果を報告しています。

 なお、この調査でいうところの「ゾンビ企業」とは、国際決済銀行(BIS)の定義に則って、借入金などの利息の支払い能力がその企業にあるかどうかを測るための指標「インタレスト・カバレッジ・レシオ」が、3年以上にわたり1未満、かつ設立10年以上の企業を指しています。つまりこれは「利益で借入金の利子を払うことができない」企業だということ。(簡単に言ってしまえば)彼らは既に、政府の支援等がなければ立ち行かない状況に置かれていると指摘されています。

 これまで、コロナ融資などの金融支援策などで倒産件数が低く抑えられてきた日本経済ですが、その支援策もいよいよ終わり、返済が期限を迎えています。しかも、円安による原油や原材料の高騰、物価高による消費の低迷、人手不足の影響などの経営上の環境悪化も懸念されるところであり、倒産件数増加の可能性が高まっているのは間違いありません。

 これから先、コロナ融資の返済が始まると、はたして返済していけるかどうかが今後の倒産件数を大きく左右することになる。これまでの日銀による低金利政策や政府のコロナ対策、金融機関の返済猶予などの資金繰り支援策によって何とか倒産を免れていた「延命状態」にある企業群の、生き残りをかけたサバイバルが(間もなく)始まるということでしょう。

 



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