MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2635 サヨクはなぜ若者に人気がないのか?

2024年09月11日 | 社会・経済

 お盆休みを迎えた8月14日、岸田文雄首相が9月の党総裁選に立候補しない意向を表明したことについて、与党自民党内では「潔い判断だ」(閣僚経験者)と評価する声が上がったと伝えられています。

 一方、野党の反応はと言えば、立憲民主党の泉健太代表は「誰が総裁であれ自民の(裏金)体質が変わるわけではない。党の生命維持のため、過去を忘れてもらう手法に国民が引っかかってはいけない」と反発したとのこと。また、共産党の小池書記局長は「国民の怒りに追い詰められた結果だ」と批判。国民民主党の玉木代表は「単なる自民党政権維持のためではなく、日本再生のための政治の刷新が必要だ」とコメントしたとされていますが、何となく冴えない感じが残るのは私だけではないでしょう。

 振り返れば、去る7月7日に行われた東京都知事選挙は、(56人もの候補者が乱立した結果)現職の小池百合子都知事の(危なげない)3選に終わりました。しかし、そこでむしろ話題をさらったのは、共産党と連携した立憲民主党の蓮舫候補の負けっぷりだったと言えるでしょう。

 無所属で立候補した(ダークホースの)前安芸高田市長、石丸伸二候補に37万票以上も差をつけられ、2位にも遠く及ばなかった蓮舫氏。共産党の表立った応援が有権者の忌避を誘ったと言われる中、背景にある若い世代の「革新離れ」が顕著に表れる結果となりました。

 思えば、欧米や中南米を中心に世界的な極右の台頭が懸念される中、日本のサヨク、革新勢力は一体どこに行こうとしているのか。そんなことを考えていた折、作家の橘玲(たちばな・あきら)氏が7月22日発売の『週刊プレイボーイ』誌のコラムに、『日本の”リベラル”は、自分たちが「保守」だと見られていることに、いつになったら気づくのか?』と題する一文を寄せていたので、参考までに概要を残しておきたいと思います。

 7月7日に行なわれた東京都知事選で注目されたのが、立憲民主党と共産党の支援を受けた蓮舫氏の得票(128万票)が、東京ではほぼ無名だった前安芸高田市長で石丸伸二氏(166万票)に40万票近い大差をつけられたこと。立憲民主党の幹部は選挙運動に予想以上の手ごたえを感じていて、開票結果が出るまでは「蓮舫は小池に勝てるのではないか」と思っていた…というくらいなので、その衝撃は察するに余りあると氏はコラムに記しています。

 しかし氏によれば、この大敗の理由は年齢別の投票動向を見るとわかるとのこと。NHKの出口調査によれば、石丸氏の得票率は10代・20代でもっとも高く、年齢が上がるほど下がっていって、70代以上で最低になる逆三角形。それに対し、一方の蓮舫氏は、60代と70代以上の得票率がもっとも高く、年齢が若くなるほど支持率が下がる三角形だということです。

 蓮舫氏の得票率は、10代・20代や30代でも小池氏を下回っている。つまり、自分たちを「革新」「リベラル」と自称する立憲民主党や共産党は、若い世代に全く人気がないということが改めて白日の下に晒されたと氏はここで指摘しています。

 一般には、若者ほどリベラルで、高齢になるほど政治思想は「保守に傾く」とされる。これについては、欧米の調査で年をとると「保守化」するのではなく、社会全体が「リベラル化」する中、若い頃の価値観を年をとっても持ちつづけるから…とわかっていると氏はしています。

 しかしそうなると、日本では「リベラル政党」ほど若者の支持率が低いことが説明できない。実際、安倍政権が若者から高い支持を得ているとの結果が出るたびに、メディアや識者は「日本の若者が右傾化している」と騒ぎ立てたというのが、この論考で氏の指摘するところです。

 一方、夫婦別姓から同性婚まで、政治的価値観の調査では、日本でも若者ほどリベラルで、高齢者ほど保守的であることが繰り返し示されているのもまた事実。「若者の保守化」論は破綻しているというのが氏の見解です。

 それでは、どうすればこの矛盾を説明できるのか? ポイントは、「日本では”リベラル政党”が保守化している」と考えること。これなら(自称)リベラルが若者から見捨てられ、高齢者から強く支持されている現状をすっきり理解できると氏は説明しています。

 日本のリベラルは、「平和憲法を守れ」「年金を守れ」「紙の保険証を守れ」と、これまでひたすらに現状維持を主張してきた。現役世代の負担がどれほど重くなってもかまわないとばかりに、高齢者の既得権を侵すような改革に強硬に反対してきたと氏は話しています。

 一方、その間政権を担ってきた自民党は、「アベノミクス」「地方創生」「こども未来戦略」などのキーワードを凝らし、また18歳成人や高校無償化、コロナ下における10万円の現金給付なども実現させて、若者にアピールしてきたということなのでしょう。

 かくして、(「自業自得」ともいうべきなのか)「若者の負担と不安を取り除く」とした蓮舫氏の主張は、当事者である若者たちに決して振り向かれることはなかった。

 他方、そう考えれば、蓮舫氏に投票したのがおじいさん、おばあさんばかりで、若者たちが「改革の夢」を見させてくれる(石丸)候補者に投票したのに何の不思議もないと話す橘氏の指摘を、私も興味深く受け止めたところです。



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