MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2281 ガソリン価格抑制策の効果

2022年10月19日 | 社会・経済

 政府が今年の1月27日から、一日当たりおよそ100億円という大きな国費を投入し続けているガソリン価格抑制策。具体的には、ガソリン1リットルあたり168円を超える分は国が上限35円まで負担し、また35円を超える分についても半額を補助することで小売価格の上昇を抑えようとするものです。

 しかし、(スタンドにガソリンを卸している)石油元売り各社への助成ということもあり、一消費者としてはあまり実感が沸かないのも事実です。

 資源エネルギー庁によれば、2022年10月3日時点でのレギュラーガソリンの店頭小売価格(消費税込)は、全国平均で1リットルあたり169.1円。5月以降のガソリン価格をみると、補助金がなければ実際はリッターあたりおよそ200円から215円で推移しているとされ、補助金の効果は(確かに)一定程度は認められるようです。

 とはいえ、昨年以降の原油価格の高騰により、大手輸入商社や元売り企業が大きな利益を出しているものまた事実。インフレの足音が大きくなる中、物価高騰がもたらす庶民への影響を避けるためとはいえ、この補助金の在り方について不透明な印象を持っているのは私だけではないはずです。

 既に1兆9000億円もの国費が使われていて、今後12月までの間にさらに1兆3000億円が必要とされるこの事業。「なぜガソリンだけ?」「癒着」「バラマキ」との声も根強く、早々の見直しを検討すべきとも思います。

 10月17日の時事通信が報じたところによれば、財務省は当該ガソリン価格激変緩和対策に関し、事業効果の検証のための調査を行ったとのこと。改めて3~7月にかけての支給額とガソリンの店頭価格の抑制額を比較したところ、そこには(少なくとも)約110億円の乖離が確認できたとのことです。

 この報道だけでは少し分かりにくいのですが、調査では全国のおよそ300のガソリンスタンドに対し、補助金で小売価格がどの程度抑制されているかについて聞いています。その結果、およそ45%の事業者が「補助金全額分が抑制されている」と回答した一方で、23%は「全額は抑制されていない」と答え、32%が「わからない」と回答したということです。

 また、補助金全額分を価格に転嫁できなかった(しなかった)理由については、近隣のガソリンスタンドの価格など「市況をみて判断したため」との回答がおよそ8割を占めたということです。この結果からは、ガソリンスタンドの半数以上が補助金による元売りからの調整金の全てをガソリン価格の抑制には回さず、(言い方は悪いですが)自らの懐に入れてしまっていることがわかります。

 実際、同調査によれば、全国の平均価格はある程度抑制されているものの、(調査対象の中にも)ガソリン価格が高止まりしたままのスタンドが少なくとも26か所あり、実態として「補助金が小売り事業者の経営改善に回っている」という現状も確認されているということです。

 こうした調査結果に対し、財務省の担当者は「共産主義国ではないので、価格統制はできない」とする一方で、「国民の税金を使って値下げをお願いしているので、全額転嫁を促すべきだ」と指摘しているとされています。

 はてさて、国会を通して予算さえ確保できれば、あとはどう使われようと「知ったこっちゃない」ということかもしれませんが、それはそれで無責任な話。まさに「お役所仕事」との誹りを免れぬものではありません。

 一度受け取ったお金を全額転嫁しなくても確かに違法ではないかもしれません。しかし、貴重な公金を支出する以上、公金の流れはしっかりと確認し期待した事業効果が上がるよう努力してもらいたいと、記事を読んで改めて感じた次第です。

 



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